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2022/01/04 17:45
国民年金基金連合会が1月4日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、11月の新規加入者数は3万7010人で加入者総数は224万1186人になった。月間の新規加入者は、2021年3月の5.27万人、同年6月の5.11万人という1カ月間に5万人超の加入者をピークにして徐々に退潮傾向にある。11月の3.7万人台は、20年12月末以来の低水準だ。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は3695事業所、対象従業員数は2万3348人になった。 11月の新規加入者の内訳は、第2号加入者は2万9536人(前月3万4189人)、第3号加入者は2212人(前月2174人)となった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が1万8291人(前月2万1095人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は6560人(前月8081人)となった。 11月の新規加入者数は全体では前年同期比12.5%増で、前月に引き続き前年同月比2ケタの伸び率になった。第1号が31.9%増、および、第3号加入者は41%増と依然として前年同月比で高い成長を続けている。 iDeCoの新規加入者数は、昨年11月に前年同月比15%増と2ケタの伸び率を記録してから、1年以上にわたって高い伸び率で増加している。この増加の背景には、2019年に話題になった「年金2000万円不足問題」の影響による潜在的な資産運用ニーズの顕在化があり、かつ、2019年以降の世界的な株高の継続によって資産運用での成功体験の広がりがあったと考えられる。さらに、2020年の年初から広がり始めた新型コロナウイルスの世界的なパンデミックによって、想定外の失職などの事態が起こりうることを実感させられたことなどが、人々のお尻を「資産運用の実施」に向けて押したという側面がありそうだ。特に、2019年から3年間で株価指数(S&P500)が2倍以上に値上がりした米国株式の値上がり効果は大きかった。株高効果によって資産運用だけで1億円以上の資産を築く「億り人」の出現も現実化している。 この3年間続いた株高効果は、iDeCoの資産運用の中身を確実に進化させている。たとえば、2018年3月末時点でiDeCoの資産残高1兆6225億円のうち、投信等の価格変動商品での運用は40%だった。預貯金が37%、生損保商品で23%で、元本確保型商品での運用比率が60%を占めていた。それが、2021年3月末現在では加入者の数も大きく増えたこともあって残高総額が2兆9705億円に拡大し、うち、投信等の価格変動商品での運用割合は55.3%と過半数を超えている。これは、iDeCoの資産内訳が公表された2015年3月末以来、年度末ベースで初めてのことだ。 なお、この確定拠出年金(DC)資産を投信等で運用する比率の高まりは、iDeCoの5.5倍超の資産残高(21年3月末時点で約16兆3800億円)がある企業型DCでも同様の傾向がある。21年3月末時点では、投信等での運用比率が54.8%と、こちらも初めて過半数を超えてきた。2005年3月末時点では投信等の比率が31%で、預貯金が49%という比率であったが、21年3月末には預貯金は31.7%にまで低下しており、投信等と立場が逆転している。 今後は、このようなDC資産の積極的な運用による資産拡大効果が実体験としてiDeCoの未加入者へもしみ出すように広がっていくものと考えられる。21年3月末時点で米国のS&P500を投資対象として積立投資を実行した場合、12月末までに投資資金(毎月1万円で合計10万円)が13.2%超プラス成長(約11.32万円)した計算になる。また、18年3月末から毎月1万円をS&P500に連動するインデックス投信で積立投資をしていたら、積立元本が46万円のところ、積立投資評価額は約74.8万円になっている。投資元本が約62.6%増えた計算だ。iDeCoで外国株投信を投資対象にしている割合は21年3月末時点で18%程度だ。2018年3月末は8.2%だったため、こちらの比率も大きく膨らんでいる。 iDeCoで積立投資をして、実際に資産が増えたという実感が共有化された時、iDeCoの新規加入は一段と加速していくものと考えられる。現在、iDeCoの加入者総数は224万人余りに過ぎない。21年11月末の就業者数6650万人の3.4%にも届かないのだから。(グラフは、2017年1月以来のiDeCoの新規加入者数の推移)
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