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2022/01/06 17:15
大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次、21年12月)では、トップ3は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の順で前月と変動はなかった。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は2020年2月にトップに立ってから、23カ月連続でトップに居座り続けている。また、3位の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」、4位の「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、6位の「iFreeレバレッジ NASDAQ100」、8位の「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」と、トップ10のうち5本を単独で米国株式に投資するインデックスファンドが占めた。投信の積立契約における米国株式選好の傾向が強まっている。 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。 「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国の代表的な株価指数である「S&P500」に連動することをめざすインデックスファンドだ。業界最低水準の信託報酬率をめざす「eMAXIS Slim」シリーズを代表するファンドであり、残高は1月5日現在で約9614億円となり、20年12月末の2289億円から1年間で4倍以上に残高を拡大した。同ファンドの基準価額は21年12月末まで1年間でプラス44.52%と大幅な上昇を記録した。21年に70回も史上最高値更新を記録した「S&P500」指数の上昇と、1年間に進んだ円安ドル高(20年12月末に1ドル=103円が21年12月末は1ドル=115円に)の効果がダブルで効いた。 このS&P500の高パフォーマンスは、NASDAQ上場の時価総額上位100銘柄で構成される「NASDAQ100」指数の日々の変動に2倍の動きをする「iFreeレバレッジNASDAQ100」や米国上場の約4000銘柄に投資する「CRSP USトータル・マーケット・インデックス(円換算ベース)」に連動する「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」の人気にもつながっている。 過去1年間の変化を見ると、20年12月末にはトップ10の5銘柄を「eMAXIS Slim」シリーズが占めていた。同シリーズが業界最低水準の手数料率をめざして競合ファンドで信託報酬が低いファンドが現れると、信託報酬率を引き下げて業界最低水準をキープする動きが明確に意識されるようになり、「インデックスファンドといえばeMAXIS Slim」といえるような状況ができていた。その後、業界最低水準の手数料率をめざすという路線で頭角を現してきたのが「SBI・V」シリーズだ。20年12月当時は「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」がランクインするくらいだったが、21年12月には「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」もランクインしてトップ10に2本を送り込んだ。 また、21年12月のトップ10には、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」が入っている。オーソドックスなインデックスファンドが上位を占める投信積立契約ランキングにあって、株価指数の値動きの2倍の比率で値動きするようにレバレッジ(テコの原理)を効かせた運用を行うリスクの高いファンドだ。「NASDAQ100」の過去の値動きが長期にわたって大きく成長したことを頼りに、積立投資で長期に高いリターンを狙おうという投資家の支持を集めている。 一方、過去1年間の間にトップ10から姿を消したのは「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」、「マネックス資産設計ファンド<育成型>」、「世界経済インデックスファンド」、「eMAXIS Neo 自動運転」の4ファンドになる。このうち、「世界経済インデックスファンド」と「eMAXIS Neo 自動運転」は証券3社のそれぞれのトップ10からも姿を消している。積立投資は1年程度の短い期間ではなく、10年、20年と継続して長く続けることによって、その効果が発揮される運用方法といえる。わずか1年間程度の成績の優劣等によって、投資対象から外されてしまうのは非常に残念な結果といえる。 「世界経済インデックスファンド」は、世界各国の株式市場をGDPの比率に応じて分散投資する仕組みで世界全体の成長に投資するという明確な指針があるファンドだが、信託報酬率が年0.55%(税込)であり、年0.2%を下回るファンドが主流となっているインデックスファンド群の中ではやや割高感が感じられるのかもしれない。また、「eMAXIS Neo 自動運転」は、文字通り自動運転関連企業に投資するテーマ型のインデックスファンドだ。自動運転関連産業の成長は、現在進行形の成長テーマではあるものの、現在のパフォーマンスでは「eMAXIS Neo バーチャルリアリティ」には劣るなど、常に高い運用成績を維持し続けることはできないという弱点がある。長期の積立投資は「オーソドックスなインデックスファンドで」という点を改めて考えさせられるようなランキングの変化が見て取れる。(表は、投信積立契約件数ランキング・トップ10の1年間の変化)
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