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2022/01/17 16:45
セゾン投信は1月16日、「セゾン投信が切り拓く新時代――セゾン共創日本ファンドの運用スタート!」と題したセミナーを東京・神田淡路町で開催した。1月21日から同社初めての日本株アクティブファンド「セゾン共創日本ファンド」の募集を開始する。セミナーはコロナ感染症対策を重視し、定員の半数以下となる60席とし、オンラインでの同時開催とした。オンラインでは900名以上の申し込みがあった。セゾン投信の代表取締役会長兼CEOの中野晴啓氏(写真:左)は「セゾン投信は営業開始から15周年を迎え、運用する2ファンドの残高合計が5000億円に迫り、次のステップに進むタイミングに来た」と新ファンド設定の意義を語った。また、新ファンドのポートフォリオマネージャーを務める山本潤氏(写真:右)は「なぜ、日本株ファンドなのかという問い合わせを多くいただくが、日本株には今、大きな可能性があると考えている」として、同ファンドの運用方針を紹介した。 セゾン投信は、インデックスファンドを組み合わせてグローバルに分散投資する「セソン・バンガード・グローバルバランスファンド」と国内外株式アクティブファンドのファンドオブファンズ「セゾン資産形成の達人ファンド」を2007年3月15日に設定して実質的な営業をスタートした。原則として直接投資家に販売する方法で残高を積み上げ、「セソン・バンガード・グローバルバランスファンド」は1月14日時点で約2986億円、「セゾン資産形成の達人ファンド」は約1874億円と合計で約4860億円に達した。同社を利用する顧客数も約16万人を数える。 ファンドの設定来、中野氏は「長期国際分散投資」の必要性を訴え、「定時定額の積立投資で国際分散投資ファンドで長期に行うことこそが、資産形成の王道」と伝えてきた。それだけに、国内株式の厳選投資アクティブファンドを新たに設定することに対しては、当初は社内の賛同も得られなかったという。ただ、中野氏自身は「10年以上前から、国内株式に投資するアクティブファンドを設定することは、『次の目標』として意識してきた」という。「創業当初に設定した2ファンドは、いわば『自分のための資産形成』をサポートする商品。その商品が育って、想定を超えるほどの成果を手にした今、その育った資金を使って『日本社会の将来のために役立てる』という投資行動に進んでも良いのではないか」(中野氏)と語った。 中野氏は、日本株式の主要インデックスが、東証上場全銘柄を対象とする「TOPIX(東証株価指数)」であることで、「日銀がETFを買っていることで、上場していれば全て等しく株価が上がって、資本市場の規律が働いていないのではないかという危惧がある」と感じていたという。そして、「昨年改正されたコーポレートガバナンスコード、スチュワードシップコードによって、企業と機関投資家には従前以上に厳しいガバナンスが求められるようになった。さらに、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)が重要視されるようになり、短期の業績ではなく長期的な企業価値の創造が評価されるように変わってきた。今こそ、日本株のアクティブファンドを立ち上げるタイミングだと感じた」という。 山本氏は、米国の年金運用機関クレイフィンレイで日本株のファンドマネージャーを務めたことを皮切りに、GCI投資顧問、英ニュースミス投資顧問、英マングループで日本株ファンドマネージャーを歴任し、2018年から独立してダイヤモンド社と投資助言を行うサービスを始めていた。この間、ファンドマネージャー職を続けながら、コロンビア大学院や中央大学博士課程(在籍中)など大学院で数学や工学を学び続けている。新ファンドは、国内企業20社以上に厳選投資し、エンゲージメント(対話)を通して企業価値の向上を図り、さらなる超過リターンの実現をめざす。その銘柄選択やエンゲージメントに、同氏の培ってきたユニークな視点を活かす。 たとえば、山本氏は投資判断で2つの考え方を重視しているという。1つは「『or』ではなく『and』の考え方」で、「たとえば、環境と経済成長はトレードオフの関係(orの関係)と考えられがちだが、環境を良くしながら成長もめざすという例外的な存在はある。簡単にできることではないが、それを実現することこそ、企業の成長や発展はある」という。そして、「細分化すること」。「高い理想を掲げて、難しい仕事をできるように分解し、できることから少しずつ進めることで、当初は不可能と考えられていたことでも達成が可能になる。このような高い理想を掲げて前進している企業こそが投資に値する」と語った。理想を掲げることについて山本氏は、「(3年〜5年程度の)中期経営計画などいらない。経営者には『最終的なゴールは何?』ということを問いたい。自分の代で実現できなくても、この企業は将来何を成し遂げるのかという志をしっかり持っていることが重要だ」という。 また、米国株価の上昇が世界市場をけん引している中、日本株式に投資する魅力について、「米株と日本株のROE(株主資本利益率)の格差を取り上げ、米国が20%に対し、日本は10%しかない。日本よりも米国の方が圧倒的に魅力的という見方がある。確かに、ROEで2倍の差があると、1株株主資本は6年間で米国は4倍に成長するところ日本は2倍にしかならないので、株価に大きな格差ができてしまう。しかし、ROEは投資家は株価を通してしか手に入れられない。現在、米国株のPBR(純資産倍率)の5倍に対し、日本株は1.3倍だ。米国株を割高と切り捨てるつもりはないが、日本株に対し株価は4倍ほど割高だが、ROEは2倍の優位性しかない。しかも、日本企業のROEはエンゲージメントによって一段と高くできる余地があるとすれば、日本株式には株価上昇の余地があるといえるのではないだろうか」と説明していた。 新ファンドは1月21日の募集開始を前に、専用のフリーダイヤルを設置して事前申し込み等を受け付けているが、問い合わせの半分はセゾン投信に口座を持っていない新規の投資家だという。ファンドは、2月1日に設定される。
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