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2022/01/20 17:42
2021年の国内ファンドの資金フローは大幅な純資金流入となったが、コスト水準に基づいて見ると、パッシブファンドで低コスト志向が鮮明であったのに対して、アクティブファンドでは、先進国を中心とした世界株高を背景に、多少コストが高くとも、それ以上のリターンを追求する動きが見られた。 ウエルスアドバイザーでは17年8月から「フィーレベル」を公表している。フィーレベルは、アクティブファンドはアクティブファンド、パッシブファンドはパッシブファンドの中におけるコストの相対的な水準を示すものである。投資先資産とアクティブ・パッシブ別から設定したカテゴリーにファンドを分類し、ファンドのコストが所属するカテゴリー内でどの水準にあるのかを、コスト水準の低い順に「安い」、「平均より安い」、「平均的」、「平均より高い」、「高い」の5段階で示す。 2021年は、「安い」から「高い」までの5段階すべてで純資金流入となった。純資金流入額は、「安い」が2兆7724億円、「平均より安い」が2兆7593億円、「平均的」が4164億円、「平均より高い」が1兆1563億円、「高い」が2648億円となった。前年との比較では、「安い」が前年比約3.9倍、「平均より安い」は同約3.2倍に拡大した一方で「平均的」は同49.1%減となり、「平均より高い」と「高い」は前年の純資金流出から流入に転換した。 最もコスト水準の低い「安い」のけん引役はパッシブファンド。「安い」に属するパッシブファンドは2兆644億円の純資金流入となり、アクティブも含めた「安い」全体の純資金流入額(2兆7724億円)の74.5%を占めた。パッシブ合計の純資金流入額2兆5714億円に対しても「安い」は80.3%を占めており、パッシブにおける低コスト志向が表れている。個別ファンドで見ても、アクティブも含めた「安い」に属する全ファンドにおける純資金流入額の上位4位までを、トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」から順に「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」(愛称:SBI・V・S&P500)、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式))とパッシブファンドが独占。4ファンド合計の純資金流入額は1兆2652億円とアクティブも含めた「安い」全体(2兆7724億円)の45.6%となった。 「平均より安い」ではアクティブファンドがけん引役となった。「平均より安い」に属するアクティブの純資金流入額は2兆5211億円となり、パッシブも含めた全体(2兆7593億円)に占める割合は91.4%に達した。中でも「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」シリーズへの流入が際立っており、パッシブも含めた「平均より安い」に属する全ファンド内で純資金流入額トップとなった「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、及び上位となった「Cコース毎月決算型(為替ヘッジあり)予想分配金提示型」、「Bコース(為替ヘッジなし)」を合計した純資金流入額は1兆4227億円とパッシブも含めた全体(2兆7593億円)の51.6%となった。同シリーズは米国株高の中で資金が集まったが、相対的なコストの低さも支援材料となった。 「平均より高い」をけん引したのもアクティブファンドだ。「平均より高い」に属するアクティブの純資金流入額は1兆1202億円となり、パッシブも含めた全体(1兆1563億円)の96.9%を占めた。パッシブも含めた「平均より高い」に属する全ファンドにおける純資金流入額トップは「グローバルAIファンド(予想分配金提示型)」、第2位は「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド」となった。米国を中心とした先進国株高を背景に、「AI」や「カーボンニュートラル」など人気テーマのファンドの一角に、相対的なコストが多少高くともリターンを追求する資金が向かった。 「高い」においても、「高い」に属する全個別ファンドの純資金流入額上位に「ベイリー・ギフォード世界成長企業戦略/SMT.LN外国投資証券ファンド」(愛称:クロスオーバー・グロース)、「GS 米国成長株集中投資ファンド毎月決算コース」などが入っており、コスト以上のリターンを求める資金が向かったと見られる。一方で、トップは「投資のソムリエ」、第2位は「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド」(クアトロ)と、分散投資による「負けない運用」を掲げるバランス型2ファンドとなった。終息の兆しを見せない新型コロナウイルスや米金融政策正常化の動きに世界経済が揺れる中、安定運用を志向する投資家のニーズを集めたと見られる。
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