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2022/02/14 18:18
米国でインフレ懸念を抑えるための早期利上げの見方が強まり、かつ、ウクライナを巡る軍事衝突の危機が切迫しているという見方から、米国の成長株を中心に下落する銘柄が目立ってきた。世界の株式市場をけん引する格好で大きく値上がりしていた「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」も21年11月の高値から徐々に上値を切り下げ、1月以降に下げ幅を大きくした。先行きに対する不安も台頭する中、三井住友トラスト・アセットマネジメントは2月10日にオンラインで「5Gフォーラム」を開催した。「THE 5G」を取り扱っている販売会社向けに年1回開催されている同フォーラムは、今回が4回目。第一部に日本共創プラットフォーム代表取締役社長の冨山和彦氏が「破壊的イノベーションのメインステージは“リアル”へ」と題して講演し、第2部で三井住友トラスト・アセットマネジメントの執行役員の大野宏央氏がファンドの運用状況等について解説した。 フォーラムの冒頭であいさつに立った三井住友トラスト・アセットマネジメント代表取締役社長の菱田賀夫氏は、「コロナ禍によってリモートワークの定着や巣ごもり需要など生活様式が変化している。産業構造も劇的な変化を遂げつつあり、世界的な課題として意識される『脱炭素』も5Gとは深く結びついたテーマになっている。まさに、5Gはこれからの発展が期待され、『さあ、面白くなってきた!』といえる」と語り、5G関連技術は、デジタル化の進展と脱炭素社会の実現のために不可欠な技術であると強調した。 冨山氏は、内閣府の「新しい資本主義実現会議」や金融庁の「スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」など政府の行う様々な諮問会議に委員の1人として参加している経験から、「5GやDX(デジタルトランスフォーメーション)が、いよいよイノベーションの中心となり、リアルな世界に移ってきていることを感じる」と語り、企業経営者や企業をサポートする立場の金融機関は、「革命的な変化であるデジタル化がもたらすゲームチェンジへの対応が、大きな課題になっている」と指摘した。過去30年間にわたって日本経済が低迷してきた背景に、「モノづくり大国」として世界に君臨することができた日本企業が、グローバル化の急速な進展という変化に対応しきれなかったと総括した。 冨山氏は、革命的な変化の有り様を「世界に通用するようになったプロ野球のチームが、明日からサッカーの試合に臨むようなもの」と例えた。「野球選手の中から足が速いなどサッカーに向いている選手を集めてチームを作っても、サッカーチームにサッカーの試合では勝てない。野球とサッカーでは、選手を育てるプロセスから全てが違う。日本企業は、ガラケーがスマートフォンに代わる変化で瞬殺されてしまったが、今、同じような変化が、自動車や重工業、金融などにも起こってきている。DXに加え、GX(グリーントランスフォーメーション)などを考えると、変化は全ての企業に訪れている」とした。そして、Eコマースが宅配というリアルな従来業務を取り込んでいるように、既存企業もイノベーションの果実を積極的に取り入れる必要があるとし、「まじめで集団オペレーションに優れた日本企業の特質は競争力の重要な要素になり得るが、今のままでは通用しない。DXなど新しい技術を取り入れる努力を怠ってはならない」と語っていた。 第2部でファンド「THE 5G」の運用状況を中心に講演した大野氏は、「想定以上のインフレ率がアメリカで出ていることから、利上げの加速懸念が高まり、株式市場はボラタイル(価格変動率が大きい)な状況になっているものの、ファンドはEPS成長率などを手掛かりにアクティブファンドとしてしっかりリスクを取った運用をしている」と現状を説明し、今後も続く5G関連産業の成長への見通しは変わらないと強調した。そして、フォーラムにビデオメッセージを寄せた実質的な運用責任者の1人であるニューバーガー・バーマン・インベストメント・アドバイザーズのYan Taw Boon氏は、「現在、5G関連の3つの側面に注目している。1つには需要が好調な『半導体産業』、そして、本格的な成長を迎えようとしている『メタバース』、さらに、脱炭素関連としても注目される『パワーデバイス』だ。市場の変化を調べると、5G関連企業の中には、大きな成長を秘めた企業が少なくない」と語った。 また、大野氏は、脱炭素が大きな社会課題として意識される中で2021年5月に新規設定した「脱炭素関連 世界株式戦略ファンド(資産成長型/予想分配金提示型)」を取り上げ、脱炭素関連産業も「脱炭素エネルギー」、「脱炭素ユーザー」、「脱炭素マネジメント」と複層構造になり、2050年までの長期にわたる成長が見込まれる大きなテーマであることともに、「THE 5G」とは投資対象銘柄の重なりが少なく、「『THE 5G』と『脱炭素関連』は、両ファンドを併せ持ちにすることの相性が良い」と紹介した。たとえば、「THE 5G」の主要投資銘柄は、北米の大型ハイテク銘柄が多く組み入れられていることに対し、「脱炭素関連」は欧州の株式が多く、また、中小型株が多いという特徴があり、銘柄がかぶらない。さらに、アジアの次世代通信関連に投資する「THE ASIA 5G」はアジア地域の銘柄に投資するため、この3ファンドを一緒に投資することで地域分散の効果が高いと提案していた。 最後に、「次世代通信関連として、これからの技術になる『6G』については、省エネによって脱炭素にも貢献できる技術として注目度が高まっている。技術革新は止まることなく続いていて、その中から業績に裏付けのある銘柄群に厳選投資している『THE 5G』、『THE ASIA 5G』、そして、『脱炭素関連 世界株式戦略ファンド』を、中長期の資産形成にお役立ていただきたい」と語っていた。(グラフは、「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)」の設定来のパフォーマンス推移)
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