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2022/03/29 17:24
ネット証券で急速に拡大する投信販売額に刺激を受け、従来は対面販売に注力してきた地方銀行などの地域金融機関もオンライン取引(インターネット販売)に注力し始めた。福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行というふくおかフィナンシャルグループ(FFG)3行は3月28日、公式ホームページにある投信情報サイトの内容を刷新した。同グループ3行では、3月14日から「ウクライナ情勢の影響に伴う投資信託に関するご相談について」本支店で積極的に相談に応じる一方、オンラインで投信を使った資産づくりについて相談を受け付けるなど、オンライン取引環境の充実も進めている。 ネット証券の投信販売額は、既に既存の大手証券を凌駕するほどに巨大化している。たとえば、楽天証券の投信販売額は2021年10月−12月の3カ月間で7340億円となり、野村證券、大和証券、SMBC日興証券という3大証券の同時期の販売額を大きく上回った(ネット証券トップのSBI証券は同期の販売額非開示)。楽天証券の決算説明資料によると、同証券の四半期販売額が大手証券を上回り始めたのは2021年1月−3月期に大和証券の販売額を上回ってからで、その後、7月−9月期にSMBC日興証券と野村證券を抜き、10月−12月期には販売額の差を一段と拡大した。 全国の主要都市に支店を配し、富裕層を中心に大口の注文を獲得している大手証券に対抗してネット証券が販売額で上回れるのは、投信の積立購入の広がりのためだ。たとえば、楽天証券の投信保有者数は21年12月末に274.7万人で、前年同月比87.3%増となったが、このうち77%に相当する211万人が積立を設定している。投信積立による購入額は月額761億円に達し、この定期的な購入額をベースに2021年は年間で2兆3000億円も投信を販売した。この結果、楽天証券の投信残高(ETF、外貨MMF含む)は21年12月末現在で4兆760億円(前年同月末比2.16倍)になっている。SBI証券も投信残高は21年12月末に5兆1680億円と前年12月末比65%も残高を伸ばしているが、これも投信積立口座97.2万口座による投信積立がベースになっていると考えられる。 このようなネット証券で見られた2021年の投信販売の急拡大は、投信を取り扱う金融機関を大いに刺激している。ネット証券で投信積立契約が大きく伸びている背景は、2018年1月に始まった「つみたてNISA」の存在が大きく、それに呼応するように投信会社が提供したノーロード(販売手数料無料)・低信託報酬のインデックスファンド・シリーズの品揃え拡充もあった。投信への資金流出入の状況を調べると、つみたてNISAが始まった2018年以来、インデックスファンドは4年連続の資金流入が続き、2021年の資金流入額は年間で3.39兆円になり、過去10年で最大規模だった。 FFGグループ3行では、インターネットで投信を購入する場合は販売手数料を10%割り引くサービスをしている。ノーロード型インデックスファンドの品揃えも充実している。さらに、「つみたて投資」については、「FFG積立プラン(3コース)」、「つみたてNISAプラン(3コース)」など、具体的な積立投資に適した投信を組み合わせたプランをホームページ上で紹介するなど、わかりやすく、具体的に行動に移しやすい情報提供に努めている。 3月28日に刷新した「投資信託検索」の新サイトは、「ファンド一覧」、「お気に入りファンド」、「マーケット情報」の3つの基本コンテンツの他、ランキング情報を充実させてファンドを選ぶ際のサポートに注力したサイトになっている。また、個別ファンドの情報では、投信の基本情報の他に「積み立てチャート」や「ウエルスアドバイザーリスクメジャー」、そして、ファンド比較機能など、ユーザーが投信を選択する際に比較検討したい情報がコンパクトにまとまっている。投信の情報提供としては、ネット証券と変わらないほどの情報といえる。 このようなネットを通じた投信関連情報の拡充は、ふくおかフィナンシャルグループだけにとどまらない。従来は対面によるコンサルティングに注力していた銀行や証券会社が従来に増して、ネット販売を意識し始めた。この取り組みは、投信市場の拡大を一段と促そう。各社の取り組みに注目したい。(グラフは、アクティブファンドとインデックスファンドの年間資金流出入の推移)
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