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2022/04/28 16:06
ブラックロック・ジャパンの取締役チーフ・インベストメント・オフィサー兼マネージング・ディレクターの福島毅氏(写真)は4月28日、オンラインでメディア向けの説明会を開催し、昨年12月に発表した市場見通しをアップデートした。今年に入ってから、米FRBの金融引き締め姿勢が強化され、また、2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻、中国の主要都市でのロックダウンなど、新しく出来した事態を踏まえた修正を語った。福島氏は、「市場では米国の景気がリセッション(不況)に落ち込むのではないかという懸念が出ているが、米国が金融政策によってリセッションに落ち込むようなことはない。引き続き、米国株式は魅力的で先進国株式には強気の姿勢を変えない」と語った。一方で、「日本株式のオーバーウエイトは継続するものの、中国株式については、オーバーウエイトをいったん取り下げて再検討が必要。ロックダウンの長期化によって今年の5.5%成長は難しい」とした。 2022年の年初から4月27日まで、世界株式と債券はともにマイナス成長になっているが、「当社では、2021年に続いて、22年も株式がプラス、債券がマイナスという結果になると予想する」(福島氏)と昨年12月時点での予想を継続すると語った。その理由として、企業業績が増益を続ける中で株価が下落したことでバリュエーション(企業価値評価)の調整が進んだことをあげた。そして、米国で利上げが始まったが、実質的な金利は低水準にとどまっており、長期投資家が株式に追加資金を投入する機会があるとみている。ただ、地域別には、ウクライナ紛争が長期化していることで欧州圏は期待できず、米国と日本をオーバーウエイトにするとした。また、「ネットゼロ(脱炭素)」の世界的な取り組みの影響で、新興国よりも先進国を選好するという。 日本株式について強気の見方をしている理由は、「コロナからの経済再開がようやく動き始め、景気刺激のための財政刺激策が期待されること。また、米欧で金融引き締めの動きが出ている中で日銀は依然として緩和的な姿勢を堅持しているため、他の市場と比較すると日本の株式には追い風が強い」と語った。日本はロシア・ウクライナ紛争から受ける影響も限定的であり、日本株のバリュエーションが低いことも魅力だとした。そして、「TOPIX(東証株価指数)とS&P500のEPS(1株当たり利益)成長率がTOPIX優位に逆転していることも、外国人投資家を日本株式に向かわせる呼び水になる可能性がある」とした。そして、日本株式の中では、「原材料価格等の上昇を製品値上げによって吸収できるような企業群が評価できる。同じ価格に据え置いて商品の量を減らすような"ステルス値上げ”を志向するような製品力に自信のない企業は評価できない」と日本企業の中でも株価格差が出てくるだろうと見通した。 一方、ロシア・ウクライナ紛争については、「(帰趨は)わからない」と語った。「戦争が長引く可能性が高いという前提で、見通しをたてるしかない」という立場だ。ただし、「原油価格は高値圏で落ち着いてきている」とみており、例えば、エネルギー関連企業の株価が大きく値上がりしたようなことは、今後は起こりにくいとした。また、農産物価格の上昇は「どこまで上がるかわからない」とし、「農産物価格の上昇でメリットを受ける企業とデメリットを受ける企業の株価の格差が明確になっていくだろう」とした。そして、穀物価格の上昇へのリスクヘッジとして「ソフトコモディティ(農産物や畜産物など)への投資も一つの方法」と語っていた。 最後に、上海でのロックダウンが1カ月ほどにおよび影響が広がっている中国は、「ロックダウンに伴う企業業績の下方修正など、経済へのマイナスの影響は避けられない。秋の共産党大会に向けて、中国は景気を浮揚させたいと考えているはずで、5月以降にどのような政策メッセージが出てくるのかを見極めたい」と語っていた。
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