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2022/05/06 16:09
大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次、22年4月)では、トップ3は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」で変化はなく、同点3位に「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」が浮上した。一方、前月に7位だった「ひふみプラス」がトップ10を陥落し、トップ10に入っている銘柄は、全て外国株式のインデックスファンドになった。なお、「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」が前月のトップ10圏外からランクインし、「SBI・V」シリーズがトップ10に3本食い込んだ。これは、トップ10に4本を送り込む「eMAXIS Slim」シリーズを追う2番手のインデックスファンド・シリーズに「SBI・V」シリーズが明確に位置付けられた兆候といえる。 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。 インデックスファンド・シリーズは、多くの運用会社が提供し、特に、ネット販売チャネル向けの「ノーロード(販売手数料無料)」、かつ、「低信託報酬(低い運用コスト)」のインデックスファンドは、長期・積立投資のツールとして、近年、各社が競って商品性の拡充(対象インデックスの採用範囲の拡大と信託報酬率の低廉化)を進めてきた。その「ノーロード・低コスト」のインデックスファンド・シリーズの筆頭格が、既に1兆円ファンドを排出している三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム)」シリーズだ。シリーズ発足当初から「業界最低水準の手数料率をめざす」と宣言し、同業他社で同一インデックスに連動するファンドで「eMAXIS Slim」シリーズ採用ファンドよりも低い信託報酬のファンドが現れると、速やかに同水準か、それを下回る信託報酬率に引き下げてきた。 そして、歴史があるのは、ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」、大和アセットマネジメントの「iFree(アイフリー)」などのシリーズだ。さらに、新興運用会社でも楽天投信投資顧問の「楽天」、SBIアセットマネジメントの「SBI・V」、PayPay投信の「PayPay投信」などのシリーズがある。 このような多様なインデックスファンド・シリーズの中で、大手ネット証券3社の投信積立契約で主に利用されてきたのは「eMAXIS Slim」シリーズだ。特に、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、2021年1月以来、16カ月連続で積立契約件数ランキングの第1位と第2位を継続している絶対的なエースだ。この2本に次いでトップ10の常連になっているのは、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」。そして、「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」、「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等)」などが、トップ10に入ってくる。 「eMAXIS Slim」シリーズと比較すると、「<購入・換金手数料なし>」では「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」のみが、「iFree」では「iFreeレバレッジNASDAQ100」のみがトップ10に入ってくる程度で、シリーズとして存在感が強いわけではない。また、新興運用会社では、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」と「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」がトップ10の常連だったが、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の人気化に連れて、「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド」、「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」が急浮上し、「SBI・V」シリーズが、「eMAXIS Slim」シリーズの対抗になってきた。 「eMAXIS Slim」と「SBI・V」の違いは、「eMAXIS Slim」がインデックスファンドとして、運用会社がポートフォリオを構築し対象とするインデックスに連動するインデックスファンドを運用していることに対し、「SBI・V」は、インデックスに連動するバンガード社のETF(米ドル建て)を、そのまま投信の器に入れて円建てで提供する形をとっている。したがって、「SBI・V」シリーズの運用品質は、世界最大級のインデックスファンド運用会社であるバンガード社の品質そのものといえる。また、インデックスファンドとしての実質的な運用コスト(組み入れているETFの運用コストを含む)は、同一のインデックスに連動するファンド同士の比較で「eMAXIS Slim」よりも「SBI・V」の方がやや低い水準になっている。新興である「SBI・V」シリーズは、コスト面での優位性を武器に、王者である「eMAXIS Slim」シリーズに対抗している。 なお、今回のランキングで「ひふみプラス」がトップ10から姿を消したこともあって、ネット証券の投信積立契約件数ランキングは、インデックスファンドの争いになってきた。しかも、「レバレッジ型」や「テーマ型インデックス」も姿を消し、いわゆる伝統的な外国株式インデックスを対象としたインデックスファンドばかりになっている。 折しも、米国では金融政策決定会合で2回連続して政策金利が引き上げられ、米国株式インデックスが軟調な展開になってきている。今後も米国の利上げは継続される見通しであり、米国株価の先行きに弱気な見方も出てき始めた。この市場の気迷い感が、「オーソドックスなインデックスファンドによる積立」を選好させる結果になっているという見方もできるだろう。「eMAXIS Slim」や「SBI・V」などインデックスファンド・シリーズがシリーズとして目立つのもオーソドックスなインデックスファンドの人気が高まっているためだ。投資環境の転換点を迎え、投信積立のトレンドがどのように変わっていくのか注目していきたい。
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