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2022/07/28 20:57
政府は6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(以下、実行計画)において、「貯蓄から投資のための『資産所得倍増プラン』の策定」を掲げ、NISAの抜本的な拡充やiDeCo制度の改革などを含めたプランを本年末にも策定する方針を示したほか、個人の金融知識向上に関しても言及した。投資信託協会も先日公表した「新しい資本主義の実現に向けた資産運用業界からの提言」において、政府に期待する施策として、「NISA、つみたてNISAの抜本的拡充」、「DC、iDeCoの改革」と並んで、「実践的な金融経済教育の推進(官民の取組体制の法制化)」を挙げた。個人の金融リテラシー(お金の知識・判断力)の向上は、「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、これまでも、NISAやiDeCoなどの制度面の整備と並んで求められてきたが、年末にかけて議論が深まるか注目したい。 実行計画では、金融教育について、「高校生や一般の方に対し、金融リテラシー向上に資する授業やセミナーの実施等による情報発信を行う」としている。投信協会の提言では、「子供から社会人に至るまで、全世代への金融経済教育の実施」を掲げ、政府に対して、「全世代に亘る金融リテラシーの向上を『国民の安定的な生活に必須のスキル』として位置づけ、マネープラン作成の必要性、少額からの『長期・分散・積立』投資の有効性、投資と未来社会の繋がりなど、金融経済教育を職場・国・地方自治体・金融機関が一体となり推進するための、根拠となる法制度の整備」を求めている。 金融広報中央委員会が今月公表した「金融リテラシー調査2022年」においても、金融教育の必要性が改めて確認された。同調査は、我が国における個人の金融リテラシーの現状把握を目的とするもので、2016年から3年おきに実施され、今回は3回目となる。18〜79歳の個人30,000人を対象としたインターネットによるアンケート調査で、「金融知識・判断力」に関する正誤問題と「行動特性・考え方等」といった金融リテラシーにかかる53の設問からなる。 調査結果を見ると、全体としては、金融リテラシーの正誤問題(25問)の正答率は全体で55.7%と前回(2019年)の56.6%、前々回(2016年)の55.6%と比べて概ね横ばいとなった。正答率は、前回と同様、年齢層が高いほど、また金融・経済情報を見る頻度が高いほど高くなる傾向が見られた。 金融教育の効果については、「在籍した学校、大学、勤務先において生活設計や家計管理などの『金融教育』を受けた」と認識している人の割合は7.1%(前回7.2%、前々回6.6%)と依然として低水準に留まり、「金融教育を行うべき」という声は71.8%にも達した。金融教育の効果を職業・年齢階層別に見ると、金融教育を受けた人の方が正答率が高く、望ましい金融行動をとる人の割合も高かった。また、正答率が高い人には金融トラブルの経験の割合が低いという傾向も見られた。 米国との比較では、「金融教育を受けたことがある」と認識している人の割合が米国の20%に対して日本は7%に、「金融知識に自信がある」の割合も米国の71%に対して日本は12%に留まった。 これらのことから、同調査では「引き続き金融教育にはプラスの効果があること、また、世の中の金融教育に対するニーズが強いことが確認された」と判断している。「金融教育を行うべき」との意見が7割超であることは、個人の金融知識習得に対する関心の高さを示している。対米比較を見るとその必要性は高く、喫緊の課題であるとも言えよう。「貯蓄から投資へ」という声が聞かれるようになって久しく、社会の感応度が低下していると言えなくもない。岸田政権の掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて改めてその必要性が唱えられる中で、NISA、iDeCoの拡充・改革など制度面の整備と合わせて、金融教育の進展も期待される。
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