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2022/08/12 13:57
コロナ禍の世界市場をけん引してきた米国の株価が足踏みを続けている。米国の代表的な株価指数である「S&P500」は年初に付けた高値から6月までに20%強も下落して「弱気相場」に入ったといわれる。1946年以来、過去に13回あった「弱気相場」の下では、株価が底を打つまで平均で1年余り、下落率は約33%に達し、以前の高値を回復するまでには底値から約2年が必要というデータがある。株価に上昇が期待できないのであれば、ここは投資を一休みした方が良いという考えになるかもしれないが、このような株価低迷期にこそ資産形成のチャンスがある。次の高値が2〜3年後にやってくるのであれば、その「弱気相場」こそが、10年〜20年投資には格好の仕入れ場になるのではないだろうか? 「S&P500」は、月末ベースでみると2020年3月末の2584.59ポイントから、22年12月末の4766.18ポイントまで、3年弱の期間に84%以上も値上がりした。非常に短い期間に大きく値上がりしたため、ここ数年の間に投資を始めた人は、「こんなに簡単に儲けられるのか!」という気分になったことだろう。20年3月から22年12月までは、ほぼ一本調子で「S&P500」は上昇したため、資産が増えていくのが毎月実感できた。しかし、今年に入ると状況は一変した。経済ニュースでは、米国株価が下落したというニュースが増え、しかも、2月にはロシアがウクライナに侵攻し、原油価格や穀物価格の高騰から米国の中央銀行であるFRBは3月を皮切りに金融政策決定会合が開催されるたびに金利の引き上げを断行し、金利が上がるたびに株価が下押すという展開が続いている。「S&P500」は6月末には、3785.38ポイントに下落し、21年12月末からの下落率は約21%になってしまった。 ただ、ニュースで見聞きする米国株価の下落は、日本の投資家にはニュースが騒ぐほどには大きな影響になっていない。それは、米国株安と同時に進んだ「円安・ドル高」のためだ。たとえば、「S&P500」に連動するインデックスファンドで最大の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価額の動きは、21年12月末のピーク1万9204円に対し、安値を付けたのは22年2月末の1万7684円で、下落率は約8%だ。そして、翌3月末には1万9683円と21年12月末水準を超えた。「S&P500」が落ち込んだ6月末の基準価額は1万8301円で、安値から3.5%上昇した水準にある。そして、7月末には1万9236円になり、21年12月末を超えた水準をキープしている。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に投資していると、今年は「横ばい」が続いている状況だ。 「米国株価は今年20%以上下落し、弱気相場に入った」といわれているほど、日本から米国株式に投資している投資家の資産は傷んでいないのが現実だ。もっとも、急速に進んだ円安が、このまま定着するとは限らない。為替相場が逆転して円高に振れれば、当然ながら、米国株式に投資している投資家には逆風になる。為替変動による評価損益は、その時の運のようなものだ。大切なことは、投資先資産である米国の株価が、将来的に値上がりするかどうかということに尽きる。その点では、米国企業のEPS(1株当たり利益)は、今後も力強く成長する見通しにあり、過去の弱気相場の際に2〜3年先には以前の高値を更新する動きになったことが、今後も期待できるということが安心材料になる。 一方、積立投資で資産形成を行っている人にとって重要なのは、「投資先の下落局面こそが、仕込みのチャンス」ということだ。たとえば、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が設定された2018年7月から、毎月末に1万円ずつの積立投資をしてきたとする。22年7月末までに元本は49万円になっているが、積立投資の評価額は74万円になっている。この間、「S&P500」は約47%上昇し、ファンドの基準価額は約86%上昇している。この価格の上昇分が積立投資の評価額を引き上げた結果だ。しかし、過去の積立投資の評価損益の推移をよく見ると、2020年3月にコロナショックで株価が大きく落ち込むまでは、投資元本と積立投資評価額の間の差異は、ほとんどなかったことがわかる。20年2月末現在で投資元本は20万円で、積立投資評価額は21万円だった。この間、ファンドの基準価額は、投資スタートの18年7月末に対し7%値上がりしていた。 積立投資評価額と投資元本の差異が大きくなるのは、20年3月を越えた後のことだ。大きな下落から1年が経過した21年3月末には、投資元本33万円に対し、評価額は44万円。22年3月末には元本45万円に対し、評価額が71万円になる。時間が経過するほどに、元本と評価額の差異が大きくなっている。このような積立投資評価額の成長には、投資先の価格下落時に積立を継続し、同じ投資金額でも、より多くの口数を購入した積立効果がある。その点では、現在、米国現地の株価が下落する局面で、ファンドの基準価額が円安のために低下しないというのは、積立投資を行っている投資家には不都合なことともいえる。 当面の米国株価の動きを考えると、歴史的に高いインフレ率によってFRBの利上げが継続し、ロシアや中国との関係から貿易摩擦が大きくなる懸念もあるなど、不安定要素にことかかない。そのような不安が大きくなった時には、いずれ米国株価が上昇した時に、積立投資の成果が大きな収益につながると信じて投資を継続することが重要だ。(グラフは、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を使った積立投資効果)
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