前のページに戻る
2022/08/15 17:06
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが設定・運用している「netWIN GSテクノロジー株式ファンド(Bコース=為替ヘッジなし)」が22年7月末時点でファンドレーティングの5ツ星に返り咲いた。同ファンドは1999年11月の設定で運用実績が長く、かつ、純資産総額も約7580億円と大型で、代表的な「米国ハイテク株式ファンド」になっている。米国が政策金利を急速に引き上げ、米国株価が今年の年初をピークに大きく下落する中、コロナショック後の市場をけん引してきた米国ハイテク株相場は「終焉」を迎えたとの見方が一部にはある。「netWIN GSテクノロジー株式ファンド(Bコース)」の復調は今後も続くのだろうか。 「netWIN GSテクノロジー株式ファンド(Bコース)」の組み入れ上位銘柄は、第1位が「マイクロソフト」(組入れ比率=9.6%)、第2位が「アマゾン・ドット・コム」(7.9%)、第3位が「アルファベット(グーグルなどを傘下に持つ持ち株会社)」(5.4%)、第4位が「アップル」(5.3%)になっている(22年6月末現在)。「GAFAM」と言われる米国のハイテク・ジャイアントが上位を独占し、その組入れ比率は合計で28.2%にも達している。米国ハイテク株投資の「王道」といえるポートフォリオ構成といえるだろう。ちなみに、「GAFAM」の一角であるFacebook(メタ・プラットフォームズ)は、2022年5月までに持ち株(前期末に約107万N株)を全部売却(売却額:約402億円)し、現在は保有していない。 「GAFAM」については、米国経済をけん引する企業群として、その動向については一般投資家の関心も高い。今年7月下旬に発表された2022年4‐6月期の四半期決算は、メタ・プラットフォームズを除く4社が増収を確保した。中でも、「アマゾン」は市場の事前予想を上回る前年同期比7%増収となり、7−9月記の予想売上高も4‐6月期を上回る増収予想を発表した。コロナ禍にあっても衰えることのないネット購買、そして、近年の稼ぎ頭であるクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の成長が支え。また、「アップル」も事前予想を上回る決算になった。4‐6月期の売上高は前年同期比2%増の830億ドルで四半期ベースとしては過去最高を更新、1株利益は1.20ドルで市場予想の1.16ドルを上回った。iPhoneやiPadの売り上げが予想を上回った。 一方、「マイクロソフト」は、売上高が前年同期比12%増、純利益が同2%増と増収増益決算だったものの、事前の市場予想を下回った。主力のクラウドサービス「Azure」の成長は続いているものの、増収率が市場予想を下回った。さらに、この間に進んだドル高が海外収益を目減りさせることになった。「アルファベット」も前年同期比13%増収、純利益が同14%減益という決算だったが、売上、利益ともに市場予想を下回った。企業が広告費を見直す姿勢を強めており、Youtube広告の成長が鈍化するなど収益環境は厳しくなっているようだ。 なお、「メタ・プラットフォームズ」の決算は、売上高が前年同期比1%減収で、株式公開以来で初の減収になった。純利益も同36%減益になった。減収要因は、主力の広告事業の低迷。新たな収益の柱に期待し投資を加速しているメタバース事業は28億ドル超の損失を計上し、なお、今後の投資負担も続くことを公言していることから、事業全体の収益性の改善には時間がかかりそうだ。 このように、「GAFAM」の足元の決算は、5社5様になっている。各社の株価は、市場予想を下回った場合には、一時的に下落することもあったが、「マイクロソフト」や「アルファベット」などでは2ケタ増収の決算を実現できており、「ハイテク株は、巣ごもり需要の一巡で、需要を先食いしたツケを払わされるため当面の成長は期待しづらい」という見方には、一定の反証材料になったとみられている。企業の戦略の巧拙によって、業績の出方には差異があるものの、ハイテク成長株の中にも、依然として高い成長が期待される企業はあるということだ。 「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」は、「よりよい投資収益は、長期にわたって成長性の高い事業へ投資することにより獲得される」との投資哲学のもとで、個別銘柄の分析を重視したボトムアップ手法により銘柄選択を行っている。7月14日に発表した「運用報告書」では、「運用チームでは引き続き、強いブランドと価格交渉力を備えた企業は、独自製品の市場成長やシェア拡大によって安定した製品価格と利益率を維持できるとみています」と見通し、長期的な視点に立った銘柄選定を行うことによって、市場の変動に負けない運用成績が獲得できるとしている。同ファンドにおいては、個々の企業分析に基づいて投資対象を選別し、組入れ比率の調整を行っていることがみてとれる。また、7月27日に公表した「2022年4‐6月期の運用状況と今後の見通し」では、「netWINの運用チームは、不透明なマクロ環境見通しからバリュエーションの高い銘柄が厳しい局面に陥るとの見方をもとに、昨年末から革新的なビジネスを行う企業の割合を減らし、持続的な成長が期待される企業の割合を増やして、安定的なポートフォリオに移行してきました」と現状のポートフォリオを解説している。 「Bコース(為替ヘッジなし)」は、傾向的なドル高・円安によって運用成績が円安の分だけ有利になっている部分がある。同ファンドの「Bコース」は、22年7月末現在で過去1カ月間のトータルリターンが6.44%と、カテゴリー(国際株式・北米・為替ヘッジなし)平均の5.96%を1.38%上回っている。「Aコース(為替ヘッジあり)」は、1カ月トータルリターンが7.71%でカテゴリー(国際株式・北米・為替ヘッジあり)」平均の6.64%を1.07%上回っている。同ファンドのトータルリターンは為替ヘッジのあるなしにかかわらず、過去1カ月ではプラスのリターンを獲得し、類似ファンドを上回る成績になっている。 米国のハイテク業界は、コロナ禍で明らかになったサプライチェーンの問題(国際間の物流網が寸断されてしまう可能性)、また、ロシアのウクライナ侵攻によって実施されたロシア向けの経済制裁の影響など、依然として不透明な要素が多い。それぞれの経営力によって、この難局を切り拓いていこうとしている。投資先企業の分析と、経営陣との対話によって、より優れた対応をしている企業を見極めていくことが重要だ。同ファンドなど、アクティブファンドの腕の見せ所といえる。(グラフは、「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」過去3年間のパフォーマンス推移)
ファンドニュース一覧はこちら>>