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2022/08/16 17:39
年初来の資金流入額ランキング(7月末まで)をみると、ベスト10の上位は米国株式を主要な投資対象としたグローバル株式ファンドで占められるが、第10位に1つだけ国内資産を対象とした「ダイワ J−REITオープン(毎月分配型)」がランクインしている。「J−REIT」は国内の実物不動産(オフィスビルや商業施設、住宅など)を投資対象としたファンドで、不動産価格の値上がり益(キャピタルゲイン)を期待して投資する一方で、不動産から得られる安定した賃貸収入(インカムゲイン)を目当てに投資することもできる。不動産の賃貸収入による投資利回りは債券の利回りよりも高い場合が少なくないため、「J−REIT」への投資は、「インカムゲイン」が主たる目的になることもある。この「インカムゲイン」を狙ったファンドの人気は根強く、年初来の資金流入ランキングの上位50ファンドのうち、9ファンドが「インカム系」に該当している。 利息・配当収入(インカムゲイン)は、値上がり益(キャピタルゲイン)と同等に重要な投資収益源だ。「資産運用」や「投資」については、価格変動という不確定要素がつきまとう。「投資をすれば、損をするかもしれない」というのは真実であり、「損をするのが嫌で投資に踏み切れない」という人も少なくない。この「損をするかもしれない」というのは、価格変動の結果である「キャピタルゲイン」を狙った結果だ。しかし、「インカムゲイン」にはロス(損失)がない。資産を保有する限りにおいて、着実にプラスの効果がある。昔から資産家の資産運用は、インカムゲインをベースに組み立てられてきた。たとえば、日本では「財産3分法」という考えがあり、資産を「株式」と「債券」と「不動産」に分けて保有することが重要視されてきた。このうち、「債券」と「不動産」は「インカムゲイン」重視の資産だ。日本では伝統的に利息・配当収入を重視してきた歴史がみてとれる。 「J−REIT」は、実物では数百億円の価値があるような都心の一等地にある巨大なオフィスビルでも「ファンド」として投資をして、1口が10万円程度から購入できるようにした金融商品だ。東京証券取引所に上場し、時価で購入・売却ができる。現在、東証に上場しているJ−REITは1口あたりの価格が4万3850円から71万4000円までの価格で取引されている。「J−REITファンド」は、これら「J−REIT」を投資対象にした投資信託(ファンド)だ。「ダイワ J−REITオープン(毎月分配型)」は、東証に上場している「J−REIT」全体の動きを示す「東証REIT指数」に連動した値動きをめざすインデックスファンドだ。 「東証REIT指数」の予想配当利回りは22年7月末現在で3.6%だ。現在の10年国債利回りが0.17%台であることを考えると、非常に大きな利回りを得ることができる。東証に「東証REIT指数」の算出が始まった2003年3月末以来、10年国債利回りは2%を超えたことがなかったが、「東証REIT指数」の予想配当利回りは、毎3月末時点で最低が2007年の2.7%、最高は2009年の7.2%だった。常に、国債利回りを大きく上回る利回りを残してきたことがわかる。「インカムゲイン」を狙う投資家にとって「J−REITファンド」は魅力的な商品といえよう。また、「東証REIT指数」は「キャピタルゲイン」の面での魅力も兼ね備えている。2003年3月末に1000ポイントだった同指数(配当込み)は、22年7月末現在で4628.79ポイントに値上がりした。 この他に、「インカムゲイン」を狙う方法としては、株式の配当利回りに注目して銘柄を選定する方法がある。年初来の資金流入額ランキングで第11位につけている「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」は、その代表的なファンドだ。そして、債券の利回りに着目した「マニュライフ・円ハイブリッド債券インカム(年1回)」は、ランキングの第14位。第15位には米国REITを投資対象にした「フィデリティ・USリートB(H無)」がある。それぞれのファンドの利回りは、「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」で組入れ銘柄の予想平均配当利回りが3.1%(22年7月末現在)。「マニュライフ・円ハイブリッド債券インカム(年1回)」は、円建ての債券の中でも劣後債といわれるハイブリッド債券を投資対象としているために運用ポートフォリオの最終利回りは1.58%(7月末)を確保している。そして、「フィデリティ・USリートB(H無)」は22年6月末の実績配当利回りは3.32%だ。 「ダイワ J−REITオープン(毎月分配型)」をはじめとして、資金流入額が大きな「インカム系」のファンドは、どのような市場環境になっても一定水準の資金流入があり、投資家からの根強い支持がある。これは、ベテランの投資家も含めて、多くの投資家が資産運用における「インカムゲイン」の効果を評価していることの表れといえる。資産運用では、基準価額の値上がりが大きな「成長株」や「特定テーマ株」などの派手な動きに目を奪われることが少なくない。地味ながら、着実に資産を太らせる「インカムゲイン」を意識したファンドについても、常に注意を怠らないようにしたい。(グラフは代表的な「インカム」系ファンドの過去3年間のパフォーマンス推移)
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