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2022/08/22 17:33
2015年9月に国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」は、2030年までに実現をめざす17のゴールがある。世界の国々が一致してめざす方向であるため、投資先としても魅力的なテーマといえる。しかし、日本国内において、「SDGs投資」、または、「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」は、なかなか広がりをみない。中長期の資産形成をめざして20代、30代を中心に「投信の積立投資」が支持を集めていることに対し、「SDGs投資」や「ESG投資」への関心が高まらないのは、投資家の納得を得られる魅力的な商品が不足しているのかもしれない。そこで、低コスト、かつ、ファンドからSDGs活動に寄付ができる仕組みを備えた「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」に注目したい。 「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」は、日本を含む世界の株式に投資し、「MSCI ACWI ESG Leaders指数(円ベース)」に連動する運用をめざすインデックス・ファンドだ。同ファンドの運用コスト(信託報酬)は年0.209%と極めて低い。しかも、同ファンドを設定・運用する大和アセットマネジメントは、同ファンドを積立設定した件数に応じて持続可能な社会の実現に向けて活動するプロジェクトに対して寄付をする「つみたて投資・サステナブル」プロジェクトを実施している。このファンドに投資することによって、SDGsプロジェクトを直接支援することもできるESG投資ファンドだ。 2020年5月10日設定され、設定から3カ月を経過したものの、残高はわずかに1億41百万円でしかない。「つみたて投資・サステナブル」プロジェクトの活動支援までの積立口座件数も7月末現在で277件にとどまっており、第1号の活動支援案件である「貧困をなくそう=ガーナのカカオ農家300軒に農業トレーニングの実施」まで23件が不足している。「投資の目的は、第一に収益であり、社会貢献が目的ではない」ということは、投資家の心情として理解できる。世の中に役に立つことをして、その結果、藤堂力や資金などのコストを負担するのは「ボランティア」だ。「ボランティア」は、その行為自体は尊いことだが、「投資は経済合理性に基づいて、クレバーに取り組みたい」ということは、当たり前のことといえる。 ただ、同ファンドが連動をめざす「MSCI ACWI ESG Leaders指数」は、「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」と比較して優位なパフォーマンスを残している。「MSCI ACWI ESG Leaders指数」と「MSCI ACWI」をドル建てで比較すると、2007年9月末を100として、2022年7月末時点で「MSCI ACWI ESG Leaders指数」は168,「MSCI ACWI」は155になる。一貫して「MSCI ACWI ESG Leaders指数」が「MSCI ACWI」を上回る成績を残してきた。 「MSCI ACWI ESG Leaders指数」は。「MSCI ACWI」の構成銘柄の中から、ESG評価の高い企業を抽出して時価総額加重平均で算出した指数になっている。MSCI ESGレーティングと、MSCI ESG Controversies Scoresの適格性基準に満たない企業や、アルコール、ギャンブル、たばこ、兵器などに関与している企業を除外し、「MSCI ACWI」の地域別指数の各セクターおよび地域について時価総額の50%をカバーする企業で構成している。このため、指数構成銘柄数は約2000銘柄であり、「MSCI ACWI」の約3000銘柄よりも少ない。「MSCI ACWI」に使用された銘柄の中から、ESGに優れた企業をピックアップしてできた指数といえる。世界的にESG投資が普及する中で、従来型の「MSCI ACWI」を上回るパフォーマンスになるのは、時代の反映といえるだろう。 このように、パフォーマンス面では優位であるにもかかわらず、たとえば、「MSCI ACWI」に連動する運用成績をめざす「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の運用資産残高は6685億円に達していることと比較して「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」の残高は極めて小さい。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は設定が2018年10月で、この間に販売会社も増えて広く利用されるようになったという歴史があるため単純に比較はできないが、それでも格差の大きさには驚いてしまう。今後、「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」が「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の残高にどこまで迫れるのか注目したい。 一方、「つみたて投資・サステナブル」プロジェクトは、同ファンドの販売会社の協力を得て、各月末時点での積立口座件数に応じて、SDGs活動を支援する仕組みだ。現在、同ファンドを取り扱っているのはSBI証券、楽天証券などだ。積立口座件数が300件を超えると「カカオ農家への農業トレーニング」事業に寄付をするが、次の段階は積立口座件数600件で「飢餓をゼロに=カンボジアの子供30名に1カ月間の意入院職を提供」、口座数が1000件になると「すべての人に健康と福祉を=カンボジアの子供の治療(5件〜10件)」、1500件では「質の高い教育をみんなに=ガーナの子供60人に学用品の支給」、2500件で「ジェンダー平等を実現しよう=カンボジアの看護師1人を半年間雇用し、医療従事者として育成」など、SDGsの17の目標に対応した活動に支援金を提供することになっている。積立投資の件数に応じて寄付をするスキームは、同ファンドが長期積立投資の対象としてふさわしいというメッセージでもある。 中長期の資産形成には、株式に投資するファンドを使った積立投資が望ましいと考えられる。株式に投資する場合、特定の国に集中するより、新興国も含めた広く世界全体にまんべんなく投資した方が失敗が少なくなる。さらに、今後、ますます重要視されるESGに配慮した企業に選別投資することによって、中長期的に持続的な成長も期待できるといえるだろう。このような長期の積立投資の対象の1つとして「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」を検討したい。(グラフは、「MSCI ACWI ESG Leaders指数」と「MSCI ACWI」のパフォーマンス推移・米ドル建て)
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