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2022/09/13 16:36
米国の10年国債利回りは9月12日に一時3.375%程度まで上昇した。6月に一時3.4965%という2011年4月以来の高水準となって以来の高さだ。それでも米株式市場は堅調で、NYダウ、S&P500、NASDAQ総合という主要株価指数は前週から4営業日連続で上昇した。2020年12月までは1.0%を下回っていた米10年債利回りが3%半ば近辺まで上昇すると、「利回りで収益を確保する」という戦略も検討可能だろう。実際に、この8月に限定追加型として募集された「JPMグローバル高利回りCBファンド」には為替ヘッジあり・なし2コース合計で500億円を超える資金が集まった。「利回り」を軸に、現在の運用環境を見直してみたい。 「JPMグローバル高利回りCBファンド」は、先進国のCB(転換社債)の中で、魅力的な最終利回りを持つCBに投資することで、株価上昇が限定的な場合でも収益の見込めるポートフォリオの構築をめざす。2020年6月に同じく限定追加型で「JPMグローバル高利回りCBファンド(限定追加型)2020−06」を設定している。その20年6月設定のファンドの直近の月報(22年7月末基準)によると、ポートフォリオの最終利回り(為替ヘッジ前)は5.9%になっている。6%近い利回りが得られるのであれば、先行きが不透明な株式に投資するよりも「利回りで資産を増やす」選択肢として検討することも可能だろう。 同じようにCBを主要投資対象とする「野村アジアCB投信(毎月分配型)」は、22年7月末基準でポートフォリオの平均最終利回り(米ドル為替取引後ベース)が7.7%になっている。ポートフォリオの61.5%を占める中国市場が軟調に推移し、アジアのCB市場は弱い状態が続いている。たとえば、「トムソン・ロイター転換社債インデックスアジア(除く日本)(米ドルベース)」は、2021年7月末を100とすると、22年7月末は85近辺にあり、過去1年間はほぼ一直線に右肩下がりの相場だった。アジアではCBの価格が下落していることによって、CBの利回りは押し上げられている。 また、CBと同様に株式との連動が期待でき、かつ、利回り面で魅力的な資産である「ハイ・イールド債券」の利回りを確認すると、最大級の残高がある「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」の運用ポートフォリオの最終利回りは7月末基準で7.3%、直接利回り6.5%だった。同ファンドの6月末時点の最終利回りは8.4%、直接利回り6.7%だったので、その後、7月、8月と基準価額が上昇し続けているところだ。このため、8月末の最終利回りは、一段と低くなっている可能性があるが、それでも利回り水準として7%近辺にあることは、利回り面だけで評価すれば魅力的な水準といえよう。たとえば、毎年7%の利回りで資産が増えれば、約10年で資産価値は2倍に増えることになる。株式に投資しても資産を2倍にすることは簡単ではない。 一方、利回りの期待が持てるカテゴリーとして「REIT(不動産投信)」があるが、こちらは、あまり高い利回りになっていない。たとえば、「ダイワ US−REITオープン」の配当利回りは、7月末基準で3.2%でしかない。この水準は、国内REITの配当利回りを下回っている。たとえば、「J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」の予想配当利回りは8月末基準で3.7%だ。このように、「配当利回り」という基準で測ると、米国よりも日本の方が魅力的に見える。たとえば、「MHAM米国好配当株式ファンド(毎月決算型)」は、7月末基準の実績配当利回りが2.3%だが、「日本好配当株オープン」の8月末基準の予想配当利回りは3.5%になっている。投資先をグローバルに広げた「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配型)」の8月末基準の予想平均配当利回りが3.0%であるため、日本株式はそれをも上回っている。 株式やREITに投資し、利回りを重視すれば3.0%〜3.5%の利回りを獲得することが可能になっている。また、CBやハイ・イールド債券で利回りを重視すれば6%台の利回りの獲得が可能だ。もちろん、利回りを重視すれば、その利回りを得るために抱えるリスクはある。たとえば、ハイ・イールド債の場合は、高い利回りを得る分、信用リスク(破綻リスク)を取る。「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」の平均格付けは「B」になっている。投資適格債とされる「BBB」から2段階低い水準だ。それでも「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」では、銘柄を選択することによって、倒産リスクを低く抑えることに成功している。また、配当利回りを重視した「好利回り株式」は、いわゆる「成長株」と比較すると株価の上昇力は弱い傾向がある。反対に、利回りの水準が高いため、下落時の下値抵抗力は強い。 このように、株式やハイ・イールド債券など、比較的価格変動が大きな投資対象を使って利回りを追求すると、利回りと引き換えに、何らかのデメリットを抱えることにはなる。ただ、そのデメリットを考慮しても、3.5%の配当利回りや6%台の最終利回りという水準は、魅力的な利回り水準と感じられる人は少なくないと考えられる。株式への投資は、価格変動のリスクを低減する目的で長期に投資するが、これら利回り水準が高い価格変動商品は、その利回りを内部で膨らませるという観点から中長期で保有することが望ましい。株価の上下動に一喜一憂する投資とは異なる「利回り」に着目した投資も、ポートフォリオの一環として検討してみたい。(グラフは、「利回り」で注目されるファンドの過去3年間のトータルリターンの推移)
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