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2022/09/26 18:06
鎌倉投信は9月25日、「No Technology No Life」をテーマに、第13回の「結い2101」受益者総会をオンラインで開催した。同社が運用する日本株ファンド「結い2101」の3つの評価テーマ「人」「共生」「匠」の中から、「匠」に焦点をあて、高い技術力をもつ投資先企業を紹介した。あいさつに立った鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸氏は、「日本の企業に投資をしても成長が期待できないという声があるが、技術力の高い企業は、グローバルに展開し高い成長が期待できる。投資や消費は、投票行動だと思う。どういう社会にしたいか表現する手段といえ、お金に意思を込めることによって、一人ひとりに力がある」と受益者に語り掛け、人や取引先を大切にし、社会を良くしていこうと努力している企業への投資が、結果的に日本を豊かにし、投資家の豊かな生活にもつながると説いていた。 総会の冒頭で、「結い2101」の現状の運用報告があった。同ファンドは、目標リターンを年率4%程度、目標リスクを年率10%以下(日本株市場の平均の約半分)という運用目標を設定して運用している。これに対し、過去10年間の年率リターンは6.9%だったが、過去5年間は同2.3%と運用成績がふるわず、第13期(2022年7月期)は、TOPIX(東証株価指数)がマイナス0.2%だったところ、ファンドはマイナス6.5%となり、TOPIXを下回る運用成績になってしまった。この背景には、「『結い2101』は、中小型成長株の構成比率が高く、『TOPIX100』など大型株が過去1年間でプラス1.7%としっかりしていたが、中小型株指数がマイナス3%超になるなど全般的に中小型株のパフォーマンスが悪かったこと。また、スタイル別にみても第13期の期間中は『TOPIXグロース』がマイナス3.3%で『TOPIXバリュー』がプラス6.8%になるなど成長株に厳しい市場環境だった」(資産運用部長ファンドマネージャーの五十嵐和人氏)と振り返っていた。 一方で、同社が重視している「企業業績の成長率(投資している企業全体の会計上の純資産と配当金額を合わせた額の増加率)」を振り返ると、ファンドを設定した2010年3月からの累積で、年率5%上昇のラインを大きく上回る結果になっている。市場環境が落ち着いてくれば、中長期的にはファンドの目標リターンである「年率4%程度」の運用成績に戻ってくる期待があるとした。 また、この6月に運用チームに加わったファンドマネージャーの野田圭祐氏は、今総会のテーマである「匠な技術を持つ投資先企業」を評価するポイントについて、「商品・サービスの優位性・独自性」、「市場性/収益性」、「変化への対応/革新性」という観点で企業を見極めていると解説した。そして、「匠」をテーマにした組み入れ銘柄数の地域別売上高構成比を調べると、「日本」は44%で、欧州、中国、アジア、北米など海外での売上高比率が過半を占め、グローバルな需要に対応している企業群になっていると語っていた。同社では、「結い2101」の運用報告会を10月下旬に予定している。 続いて、第2部として「技術の継承」をテーマに、ファンドマネージャーの長田陽平氏を司会役に、投資先企業であるツムラの生産本部CMC開発研究所漢方品質研究部の野村洸司氏と、浜松ホトニクスの中央研究所の鈴木真澄氏がパネルディスカッションを行った。ツムラの野村氏は、「生薬は生産地や季節などによって1つ1つの材料の状態が異なっている。その中で残留農薬など不純物を検知する研究を続けているが、国の定める品質基準や業界が定めている基準よりも、より厳しい社内基準を設けて漢方薬の品質管理を徹底している」という漢方品質研究部の日ごろの取り組みについて紹介。浜松ホトニクスの鈴木氏は、「光を使った乳がんの早期発見につながる光マンモグラフィーの開発を進めているが、光の可能性は未知な部分が大きく、様々な可能性に満ちている。光技術の応用で病気のメカニズムの解明や薬の効果的な服用につながる技術を開発したい」と、自らの研究に大きな可能性を感じていると話していた。 第3部は、企業展示として、投資先企業4社が15分程度のプレゼンを時間内に3回行い、参加者は興味のある企業を選んでプレゼン内容を視聴した。参加した企業は、エフピコ、デジタルハーツホールディングス、モリタホールディングス、リオンの4社だった。 第4部は「経営者のパネルディスカッション」として鎌倉投信社長の鎌田氏が司会を務め、第一稀元素化学工業の代表取締役社長執行役員の國部洋氏と、ユーシン精機の代表取締役社長の小谷高代氏が登壇した。 第一稀元素の國部氏は、ジルコニウム化合物の製造で世界トップの同社が、尖閣諸島問題の先鋭化で中国からレアアースの供給がストップしてしまった「レアアースショック」の折に、資材調達の責任者としてレアアースを高値で購入し、その後、価格が急落したことで当時の利益の2年分に相当する損失を出してしまった失敗談を語った。「腹をくくって、判断が甘かったことを反省しつつも、次の展開に備えてあらゆる努力を重ねた」と振り返り、社員をリストラ等で減らすことなく、史上最高益を更新するまで社業を立て直したことが、現在のポジションでも役立っていると語っていた。 プラスチックの射出成型品の取り出しロボットで世界トップのユーシン精機の小谷氏は、研究開発部の研究者から社長に就任し、「研究開発部では技術的に優れたことを優先していたが、社長になって事業という意味で技術の価値を判断するようになった」とし、「技術は手段。技術が目的になってはいけない。お客様が喜んでいただける、社会に役に立つという視点で技術を評価することが大事だ」と語っていた。「プラスチックは、大量に同品質の製品を作るうえでは非常に優れた素材であり、世界的に廃棄プラスチックの問題がクローズアップされているが、当社の取り出しロボットが使われている分野には、使い捨ての製品がほとんどない。むしろ、安価に均一な製品を大量に提供し、社会の生活水準を底上げにつながっている製品が多い」とSDGsの観点で社会に貢献できているとした。(写真は、第13回受益者総会での鎌倉投信社長の鎌田恭幸氏。写真提供:鎌倉投信)
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