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2022/09/30 10:27
英国・ロンドンに本拠を置くHSBCグループの資産運用部門であるHSBCアセットマネジメントは9月22日、「石炭火力発電、ならびに、一般炭採掘を行う企業への投資から段階的に撤退する」と発表した。アクティブファンドでは、EUとOECD諸国で2030年までに、世界全体では2040年までに投資対象から一般炭関連企業を除外する。このようなESGに関する資産運用会社の取り組みは、欧州で特に厳しい基準が設けられている他、米国や日本でも「責任ある投資家」として「脱炭素」への積極的な取り組みが求められている。HSBCアセットマネジメントが示した「撤退宣言」は、期限を区切ることによって「背水の陣」を敷いて社内の意識を高める効果も高そうだ。 HSBCグループは2020年に「融資先排出量(気候変動対策支援の融資先、および、投資先企業の炭素排出量)を2050年までにゼロとする」目標を設定している。今回のHSBCアセットマネジメントによる一般炭関連投資からの撤退は、グループ全体の取り組み目標を達成するための重要な一歩と位置付けられている。HSBCアセットマネジメントは今後、一般炭関連事業から脱却していく上での信頼性のある計画を提示しない企業に関しては支援を停止し、年次株主総会で取締役会の会長の再任に反対票を投じることや最終的に投資先から除外することを検討するとしている。 HSBCアセットマネジメントのCEOであるニコラ・モロー(Nicolas Moreau)氏は、「HSBCは既に新規、あるいは、既存の一般炭関連事業への直接投資を停止しました。私たちは2つの側面からこのような取り組みを行っています。一般炭関連事業から段階的に撤退することと併せて、新しい投資ソリューションを当社のオルタナティブ投資事業で開拓し、持続可能なインフラ投資、ならびに、非常に重要な気候変動対策の技術的ソリューションへのベンチャー投資を拡大していきます」と語っている。 HSBCアセットマネジメントの新しい方針の主要な点は以下の通り。 (1)売上高の10%超を一般炭関連事業から得ながら気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、あるいは、同等の報告様式に基づいた情報開示を行っていない発行体上場企業の取締役会の会長の再任に反対する。また、エンゲージメント後も脱炭素への移行計画が不適切な状態のままである企業の取締役会の会長にも反対票を投じる。 (2)脱炭素への移行計画がHSBCアセットマネジメントのネットゼロ目標と相容れないと考えられる企業への投資を徐々に引き揚げていくことも選択肢として検討。 (3)アクティブ運用のポートフォリオで、EU、OECD市場では2030年まで、世界では2040年までに売上高の2.5%超を一般炭関連事業から得ている上場株式発行体企業をHSBCアセットマメジメントが運用するポートフォリオの投資対象銘柄から除外する。 (4)HSBCアセットマネジメントがアクティブ運用を行うポートフォリオは、一般炭関連事業の拡大に関わっている発行体の新株発行(IPO)、あるいは、債券発行による資金調達に参加しない。 (5)パッシブ運用では、売上高の2.5%超を一般炭関連事業から得ている発行体を投資対象とする上場投資信託(ETF)、あるいは、インデックスファンドを新たに組成しない。 また、オルタナティブ投資やリクイディティといった他の投資戦略についても見直しを行い、2050年まで、あるいは、より早い段階でネットゼロを達成するための取り組みに沿って管理すべき資産については、炭素排出量削減の中間目標と進捗状況を公表する予定。そして、こうした方針を毎年再評価し、外的要因に応じた修正を行うことを検討するとしている。(イメージ写真提供:123RF)
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