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2022/10/12 16:42
DC専用ファンドの2022年9月の純資金流出入額は約887億円の流入超過になり、資金流入超過は2020年12月以降22カ月連続になった。流入額のトップは先進国株式で、流入額は約291億円。次いで、前月トップだったバランスが約209億円だった。また、ターゲットイヤーが約149億円の資金流入となった。ターゲットイヤーに100億円以上の資金流入があるのは初めて。米国では企業型DC運用の定番商品として利用されているターゲットイヤー型/ターゲットデート型ァンドについて、日本でのニーズも高まりつつあるようだ。 DC専用ファンド全体の純資産総額は約8兆9117億円と前月から約2739億円減少した。純資産総額がマイナス成長になったのは5カ月ぶりのこと。世界的な株安の影響で、ファンドの評価額が下がった。残高の内訳は、株式ファンド46%、債券ファンド16%、バランスファンド35%という割合で、前月と比較すると株式ファンドの比率が1%ポイント低下した。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない) ■資金流入額ランキングのトップは「野村 外国株式インデックスF」 DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングのトップは、前月は3位に後退していた「野村 外国株式インデックスF(確定拠出年金)」になった。同ファンドがトップになるのは、2022年5月以来4カ月ぶり。先進国株式インデックスファンドがトップになったのは、6月に「野村 DC外国株式インデックスF・MSCI」がトップになって以来、3カ月ぶりになる。 今月は、資金流入額トップ10のうち6ファンドが先進国株式インデックスファンドになった。7月、8月と2カ月連続でバランス型がトップになり、世界的に株式市場が低迷し、先行きが不透明となる中で、リスク分散を志向する傾向が強まったようにみえたが、株価が6月同様に年初来安値近辺に下落すると「押し目買い」の機運が高まったようだ。 先進国株式インデックスファンドは、2020年3月に「コロナ・ショック」で株価が暴落した後に、急速に切り返して大幅な上昇を演じたイメージが鮮明に残っているため、株価の大きな下落局面では切り返しを狙った買いが入りやすいようだ。ただ、世界経済は「リセッション(景気後退)懸念」が高まっている。株式市場にとっては大きな逆風となる環境であるだけに、株式インデックス投資を進めていくには、3年、5年にわたる長期のスタンスで臨む心構えが求められよう。 一方、先進国株式インデックスファンド以外は、「三菱UFJ ターゲット・イヤーF(DC)」の「2030」(第2位)、「2035」(第8位)、「2040」(第9位)、「2045」(第10位)だった。ターゲット・イヤー型は、運用期限(ターゲット・イヤー)に向かって、ファンドのリスク水準を計画的に徐々に落としていく運用を行うファンドだ。ターゲット・イヤーまでの期間が20年、30年と十分に長い間は、株式など価格変動リスクのある資産を多く組み入れて運用による資産の価値増大を目指すが、ターゲット・イヤーに到達した後は、国内債券や短期金融資産だけで運用し、価格変動リスクを取らない運用に切り替える。自分自身の退職年に対応したファンドを選ぶだけでポートフォリオ理論に則った運用が可能になるため、米国ではDC運用の定番商品として広く利用されている。 今回、「三菱UFJ ターゲット・イヤーF(DC)」の4ファンドで合計98億円超の大きな資金が流入しており、大きな資産を持つDC制度がターゲット・イヤー型をデフォルト商品(運用指図がなかった場合に買い付ける商品)に指定した可能性がある。現在、企業型DC制度は、加入者の運用商品が元本確保型商品(定期預金や保険商品など)に偏り、元本確保型商品の利回りがゼロ%台であるために結果的に資産の運用効率が悪いという課題を抱えている。デフォルト商品は、DCの運用に興味がない加入者を強制的にリスクのある投資信託を利用させるきっかけになり得る。その際に、ターゲット・イヤー型ファンドであれば過度なリスクを取ってしまうリスクが避けられるメリットがある。 ■トータルリターンのトップは5カ月連続でピクテの「グロイン」 個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングトップは、前月トップの「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドDC」が5カ月連続でトップを維持した。第2位は前月4位の「ブラックロック・ヘルスサイエンス・DCファンド」がランクアップした。このため、前月2位の「野村 世界好配当株投信(確定拠出年金)」、第3位に「野村DC・PIMCO・世界インカム戦略(H無)」は1つずつ順位を落とした。 トータルリターントップ10のうち、トップから4ファンドを除くと、トータルリターン1年が1ケタの成績になってしまう。前月まではトップ10の全てが2ケタリターンだったことと比較すると、現在の運用環境が厳しいことを象徴している。(グラフは、過去3カ月間の資産別DC専用ファンドの月次資金流出入の推移)
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