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2022/10/13 14:21
米国の「S&P500」や英国「FTSE100」、ドイツ「DAX」など主要国の株価指数が10月12日まで6営業日連続で下落するなど、世界的に株価の下落基調が続いている。国際通貨基金(IMF)が11日に発表した世界経済見通しで、2023年の経済成長率を0.2%下方修正し、米国と欧州、中国については経済が「失速」すると見通したように、世界的な景気減速が株価の先行きを暗くしている。オーストラリアの複数の年金基金を株主とし、退職資金の長期運用を目的に27年前に設立されたIFMインベスターズのチーフエコノミストであるアレックス・ジョイナー氏(写真)が10月12日にメディア向けに説明会を開催し、オーストラリアのメルボルンから、今後の経済見通しについて語った。 ジョイナー氏は世界経済の現状を「景気後退のリスクが高まり、スタグフレーション(景気後退下の物価上昇)が起きる可能性もある岐路に立たされている」とする。米FRBがインフレへの対応で後手を踏み、急速な利上げを続けていることが景気後退を引き起こすことにつながりかねないと懸念している。「通常であれば、中央銀行は一定水準の利上げを行った後、一旦は利上げ効果を確認する期間を設けて次の対策に進む。しかし、そのような小休止もなく一本調子に利上げが進み、その米国の動きに応じて欧州その他の国でも急速な利上げが進んでいる」と指摘し、このような動きが世界経済に何らかのひずみを生じさせるのではないかと懸念していた。 また、コロナ・パンデミックなど公衆衛生上の危機については、先進国を中心に外出制限などの規制レベルを2020年〜21年のピーク時から徐々に引き下げ、既に2019年当時のレベルに下げているものの、中国は依然として高い水準の規制を続けており、これが中国の景気の低迷や輸出の減退、そして、グローバル企業のサプライチェーンの停滞につながり、世界経済を押し下げる要因になっているとした。加えて、ロシアとウクライナの紛争がエネルギーや食糧の価格上昇によるインフレ悪化をもたらし、世界経済にダメージを与えている。「ロシアにエネルギーを依存する欧州ではリセッション(景気後退)がコンセンサスになっている」(ジョイナー氏)と、今後の経済成長の阻害要因が重なって存在すると語った。 そのうえで、「株式の異常な高騰は反転し、世界の株式の値上がり期待は大きく縮小している。また、アナリストの企業利益予想も経済の実態や見通しに照らすと予想利益水準が高すぎるようだ」と、株価の下ブレ懸念が強いとした。特に、世界の株式市場に与える影響が大きい米国経済の見通しについては、「逆イールド(長短金利の逆転現象)」などリセッションの予兆が出ていることに加え、エコノミストの50%が来年のリセッションを予測しているなど市場の見方も弱気だ。ジョイナー氏は、「2023年は米経済にリセッションの懸念が強く、低成長と失業率の上昇を予想する」とした。 一方、世界の市場は「(主要国の)急速な金融引き締めのために、株式や債券がこれまでになかった相関関係となり、ボラティリティ(価格変動率)が上がっている」と、資産運用には非常に難しい局面にあると現状を解説した。たとえば、2022年第2四半期末までに「国際株式(為替ヘッジなし)」はマイナス15.7%、「国際債券」はマイナス9.4%など上場証券の市場が大きなマイナスに落ち込んでいる。このような中で、「非上場不動産」はプラス4.7%、「非上場インフラストラクチャー」はプラス4.2%と上場株式や債券とは異なる値動きをしていることを紹介した。IFMインベスターズが非上場インフラを主たる対象に運用する「インフラストラクチャー・コンポジット」もプラス4.6%だった。 「非上場不動産」や「非上場インフラストラクチャー」は、金利上昇やインフレに対してリターンを守るための条項が付与されているものが多く、インフレや金利上昇の影響を受けにくいメリットがあるという。「オーストラリアの年金は、プライベート(非上場)資産の組み入れ比率が相対的に高く、現在の下落相場の中でリターンを支える要因になっている。ただ、現在のように組み入れている株式や債券の価格が大きく下落している中で、損失を確定した上で、新たな資産を組み入れることは難しい決断になる。中長期的な目線で資産を分散することが重要であり、従来の株式と債券への分散投資に加え、上場市場の資産で構築してあるポートフォリオに非上場市場の資産を加えることも1つの方法といえる」と伝えた。 ちなみに、同社が運用する「インフラストラクチャー・コンポジット」の年間リターンは、2014年のプラス3.3%から、2021年まで各年で13.7%、19.5%、15.1%、19.0%、16.4%、マイナス1.8%、15.1%と、2020年を除いて安定的に高いプラスリターンを上げ続けている。ジョイナー氏は、同社の運用について「タイミングで投資するのではなく、常に長期に安定したリターンを確保することをめざしている」と語っていた。
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