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2022/10/20 17:24
9月の月間リターンランキングは、「NASDAQ100 3倍ベア」をトップに、「株式ベア型」でレバレッジ(テコの原理)を使ったファンドが上位を席巻した。このような「ブルベア型」のファンドは、主としてタイミングを見計らって投資する手段として使われ、長期の資産形成には不向きだとみなされていた。しかし、積立投資の普及に伴って、ブル型ファンドを使った積立投資を行う投資家も増えてきた。中でも、投資家の支持を集めたのは、米国の先端企業が多く上場するNASDAQ市場の代表銘柄で構成された株価指数「NASDAQ100」を使ったレバレッジ運用だ。通称で「レバナス」という言葉が使われるほど、一部の投資家に愛用されるようになった。ただ、9月のように、「ベア型」でプラスのパフォーマンスが出る時には、「ブル型」は大きなマイナスパフォーマンスになっている。「レバナス」の積立投資の現状を検証してみた。 「NASDAQ100」は、米国の新興企業向けの株式市場「NASDAQ」に上場する時価総額上位100銘柄(金融を除く)の時価総額加重平均で算出される株価指数だ。構成銘柄は、GAFAM(グーグル<持ち株会社アルファベット>、アマゾン、フェイスブック<現メタ・プラットフォームズ>、アップル、マイクロソフト)をはじめ、テスラ、エヌビディア、アドビ、ネットフリックスなど、米国を代表するテクノロジー企業を幅広くカバーしている。ここ数年、「NASDAQ100」や「NASDAQ100」のレバレッジ型ファンドが注目を集めたのは、2020年3月の「コロナ・ショック」以降に、GAFAMを中心とした米国のテクノロジー企業の株価が大きく値上がりしたためと考えられる。 「NASDAQ100」に連動するインデックスファンドとして運用期間も長く、残高も大きなファンドとして2018年8月設定の「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」がある。そして、レバレッジ2倍の「iFreeレバレッジNASDAQ100」は、2018年10月設定で、いわゆる「レバナス」の代表銘柄の1つだ。これらファンドの2020年3月から2021年12月までの値上がりはすさまじく、「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」は月末比較でプラス121%(約2.2倍)、「iFreeレバレッジNASDAQ100」はプラス296%(約3.9倍)になっている。 これらファンドを「iFreeレバレッジNASDAQ100」が設定された2018年10月から、毎月末に1万円ずつの積立投資を実行していたら、2021年12月末時点で投資元本39万円に対し、「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」の積立投資の評価額は70万1312円、「iFreeレバレッジNASDAQ100」では105万6121円に膨れ上がったことになる。「レバナス」を使った積立投資は、積立開始から3年3カ月で投資元本の2.7倍に増えたことになる。「レバナス」での積立投資に投資家が熱狂したのは、至極当然のことといえよう。 しかし、急速に値上がりしたファンドの基準価額は、下落する場合のスピードも速い。ともに、2021年12月をピークに2ファンドとも下げ足を速めた。「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」の基準価額は21年12月末が2万2450円だったが、22年6月末には1万8879円に下落。6カ月間で約16%の下落率となった。「iFreeレバレッジNASDAQ100」は、21年12月末の4万2484円が22年9月末には1万7735円だ。9カ月間で58%以上の下落率になった。半値以下に落ち込んだことになる。この大きな価格の落ち込みは、積立投資の評価額にも直接的な影響を与え、22年9月末現在には「iFreeレバレッジNASDAQ100」の積立投資の評価額は50万5967円となり、積立元本の48万円とほぼ同じ額になってしまった。一時期は元本の2.7倍に膨れ上がった評価益を吐き出したかっこうだ。 レバレッジ型ファンドの価格変動の大きさは、この4年間の「iFreeレバレッジNASDAQ100」の動きだけを見ても良くわかる。積立投資は、投資タイミングを分散することによって価格変動リスクを抑制する効果があるといわれるが、さすがに、1年足らずで半値以下になってしまうような急落は吸収できず、資産価値の大幅な目減りになってしまった。積立投資は、投資対象が下落し続けている局面では、資産価値を保全できない。積立投資で成功するには最終的には価格が上がっていく局面が必要になる。今のところは、「NASDAQ100」が下げ止まったというわけではなく、来年以降に米国の景気後退が懸念されていることから、一段と下落することもあり得るという状況だ。 このため、「レバナス」積立を行っている投資家は、ここから数カ月、もしくは、1〜2年、または、それ以上の期間は厳しい環境が続くと覚悟しなけらばならないだろう。「NASDAQ100」の復活をひたすら待ち続ける覚悟が必要になる。レバレッジ型のファンドを使った積立投資は、上昇時の見返りも大きいことと同時に、下落時の辛抱もきついものになる。 ただ、下落時の積立口数は着実に積み上がっている。たとえば、「iFreeレバレッジNASDAQ100」の基準価額がピークを付けた21年12月末に1万円を基準価額で割ると約0.24だったが、21年9月末には約0.56と約2倍になっている。今後、基準価額が下落すれば、同じ1万円で購入可能な口数が増えることになる。耐えて貯えた口数は、将来「NASDAQ100」が復調した時に大きなメリットをもたらす。価格のピークから10カ月を経過しても未だに底入れとは言えず、積立投資による含み益をほぼ吐き出した現状は、積立投資家にとって正念場といえるだろう。(グラフは、「NASDAQ100」「レバレッジNASDAQ100」のパフォーマンスと積立投資評価額の推移)
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