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2022/10/25 17:33
中国はどこに向かおうとしているのだろうか? 23日に第20期中央委員会第1回全体会議で習近平国家主席をトップとする最高指導部が発足したことを受けた24日の中国株式市場は、上海総合指数が2.02%安、香港ハンセン指数は6.36%安と大幅に下落した。いわゆる「ご祝儀相場」とは真逆の反応を株式市場は示した。習氏に次ぐナンバー2に、ロックダウン(都市封鎖)によって上海を混乱に招いた李強氏が就くなど、全体的に株式市場に精通したメンバーがいないことなどが、将来の見通しを悲観的なものにした結果の株安だという。とりわけ、香港ハンセン指数は、2009年4月29日以来およそ13年6カ月ぶりの安値を記録するなど、厳しい反応になった。いずれは、米国を抜いて世界一の経済大国になるといわれる中国株式に投資するファンドの現状をみた。 ウエルスアドバイザーのカテゴリーで「国際株式・中国」に分類されるファンドは46本。すべてが「為替ヘッジなし」のタイプだが、パフォーマンス(3年・年率リターン)と運用の効率性も加味したファンドレーティングから優れた運用実績のあるファンドを選ぶと、明らかに中国本土市場(上海、深セン、北京)に上場する人民元建ての「A株」を主たる投資対象にした銘柄になる。ファンドレーティングで最高位の5ツ星(★★★★★)銘柄で、かつ、3年リターンが高い順にランキングすると、最も高いリターン20.02%を残しているのは、「チャイナ・イノベーター・ファンド」。第2位(19.14%)は「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」、第3位(15.62%)は「三井住友・中国A株・香港株オープン」だった。いずれも、主たるビジネスの大部分を中國で行っている「A株」を主要な投資対象にしている。 このように「A株」を主要な投資対象とした中国株ファンドは、過去3年間のパフォーマンスを振り返ると、米国株式(S&P500)を上回るようなパフォーマンスを残している。足元では、共産党大会を前にした政策の停滞感、また、人民元安などから米国株式にやや劣る成績になってしまっているが、「コロナ・ショック(2020年3月)」からの立ち上がりスピードと、上昇力は、依然として「新興国」を感じさせる足の軽さだ。 一方、香港市場を代表する株価指数である「ハンセン指数」の値動きは悪い。香港市場は、中国における海外への窓口としての役割が期待され、香港に上場している銘柄の中で「H株」に分類される銘柄群は、香港ドル建てであることを除けば、「A株」と同様に中国国内をビジネスの中心に据えている企業だ。ただ、香港市場の投資家は海外投資家の比率が高く、米中貿易摩擦や中ロ関係などの影響に敏感に反応している。現在までのパフォーマンス推移は、外国人投資家の香港離れが強まっている状況といえる。米中覇権争いも習近平氏の3期目の政権運営も、ともにマイナスの評価をしているようだ。そして、米中覇権争いも、習近平政権も当面は続く見通しにあるため、香港市場の苦境も簡単には終わらないと考えた方が良いといえる。 ただ、香港市場の低迷を横目に、「A株」を主たる投資対象としたファンドのパフォーマンスは優れていたように、外国資本や外国人投資家に頼らずとも十分に企業成長が可能になる市場が国内にはある。もちろん、全ての中国「A株」が高成長を遂げるわけではないだろう。中国国内の政策の行方、米国企業との取引関係、また、その他の国々の企業との取引関係など、個々の企業の内容を調査・分析し、成長企業を見極めて投資することが重要になるだろう。中国株式への投資は、銘柄選別能力のある優れた運用者によるアクティブ運用が重要なポイントになってきそうだ。 国内の運用会社も、隣国である中国には、運用拠点を築き、また、現地の運用会社と提携するなど、中国株式での運用体制を整えてきている。今回取り上げたパフォーマンス上位のアクティブファンド3本は、全て国内運用会社が自社の運用拠点で運用を担うファンドでもある。しっかりとした運用実績に裏付けされた中国A株ファンドに注目したい。(グラフは、運用成績の良い中国株ファンドと米「S&P500」、香港「ハンセン指数」の推移)
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