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2022/11/11 18:45
ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した投資や投資判断は、もはや資産運用会社に標準的に求められる行動規範となっている。現在はエジプトでCOP27(第27回国連気候変動会議)が開催されている(11月18日まで)こともあって、「E」に関係する取り組みの発表が多いが、「S」「G」も含めて各社の取り組みは加速している。特に、業界リーダーとして大手運用会社の取り組みが積極的だ。各社の直近のリリースには、日本のESG投資の現状が良く表れている。 野村アセットマネジメントは11月11日、「ネットゼロ目標の達成に向けて新組織『ネットゼロ戦略室』を設立」と発表した。新組織は12月1日付で発足し、「2050年ネットゼロ目標と2030年中間目標の達成に向けて、社内外の経営資源の戦略的な活用によりネットゼロに関する情報や専門知識を集約し、実効的なアクションプランを策定・推進する」としている。具体的には、(1)運用ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量の計測・開示対象を上場株式・社債以外の資産クラスに拡張、(2)炭素指標やシナリオ分析、移行・物理的リスク分析、気候関連機会指標等のモニタリングを拡大し、気候関連リスク・機会に対する管理を強化、(3)脱炭素社会の実現に向けた資金提供等を加速するための適切な気候関連リスク・機会の評価手法を開発し、気候関連のESGインテグレーションを高度化――などとしている。 大和アセットマネジメントは11月2日、同社の「ESGファンド」の定義を発表した。(1)ポートフォリオ構築プロセスにおいて意図的にESGリスク・機会をコントロールするとともに、それに関する具体的な開示(定量・定性)が可能なファンド、(2)経済的リターン並びに社会的リターンの獲得を商品性格上の主たる特色とし、社会的リターンについての具体的な開示が可能であるファンド(インパクトファンド)――という基準を示した。そのうえでESGファンドとして、「脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称:カーボンZERO)」、「クリーンテック株式&グリーンボンド・ファンド(愛称:みらいEarth)」、「iFree 全世界株式ESGリーダーズ・インデックス」など公募投信11本(ETF含む)を指定し、これらファンドについて今後ESGに関する情報開示を拡充するとした。 アセットマネジメントOneは11月11日、同社の常務執行役員である青木信隆氏がCOP27のサイドイベントとである「World Climate Summit 2022」のセッション「2030 Transition Ready Portfolios」(11月14日開催)にパネリストの1人として登壇し、パリ協定を達成するためのベストプラクティスの選択肢について議論すると発表した。「World Climate Summit 2022」は、「The Investment COP(投資家のCOP)」とも呼ばれているイベントだ。 そして、三菱UFJ国際投信は10月31日、三菱UFJ信託銀行、エム・ユー投資顧問、Mitsubishi UFJ Asset Management(UK)Ltd.と共同で、運用資産のGHG(温室効果ガス)排出量にかかる2030年の中間目標を設定したと発表した。2021年11月にグローバルなイニシアティブ「Net Zero Asset Managers initiative(NZAM)」に参画し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネット・ゼロに取り組むことを表明。中間目標の設定によって、取り組みを加速する。具体的には、GHG排出量の多い投資先企業に優先的にトランジション戦略の実現を後押しするためのエンゲージメントを行う、アセットオーナー等との協業、ネット・ゼロに資する商品の開発などに取り組む。 現在、世界的にESG投資への関心が高まり、「ESGファンド」への資金流入が活発化している。そして、ESG投資が通常のインデックス(指数)を株式でも債券でも上回るパフォーマンスをあげていることが近年顕著になってきたことで、運用会社各社は競って「ESGファンド」を設定した。ところが、乱造された「ESGファンド」の中には、単純に兵器やタバコの製造・販売に関わっている企業には投資しないなどの除外要件を加えるだけで実際の運用判断にESG要素を特段組み込んでいないものも含めて「ESGファンド」を名乗る例が多く発生してしまった。「ESGウォッシング(まがいもののESG)」が世界中で問題になった。国内の運用会社の取り組みは、大和アセットの「ESGファンドの定義」が直接的な取り組みだが、各社それぞれに、ESGについて真剣に向き合っていることが伝わってくる。今後もこのような取り組みが広がり、定着することが期待される。(イメージ写真提供:123RF)
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