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2022/11/15 16:30
岸田内閣が年末に取りまとめるとしている「資産所得倍増プラン」に関連する議論が活発化してきた。内閣官房に設けられた「資産所得倍増分科会」が10月14日に第1回の会合を開き、プラン策定に向けた議論を進めているが、11月14日には厚生労働省が管轄する社会保障審議会の企業年金・個人年金部会が開催され、iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改革についての議論が始まった。既に、金融審議会の「顧客本位タスクフォース」において、経済成長の成果の家計への還元促進を図る議論の中で、iDeCoを含めた公的・私的年金の有効活用を促すアドバイザーの役割や金融経済教育の在り方についての議論も進み、内閣のみならず、金融庁、厚労省も巻き込んでの3つ巴の議論となっている。年末までの限られた期間の中でのあわただしい動きだが、iDeCoやNISA(少額投資非課税制度)、つみたてNISAなど、資産形成の重要な制度が揃って関わる制度変更が議論されているだけに、目を離せない動きといえる。 企業年金・個人年金部会は、2018年の制度改正から5年目を迎える2023年を控えて、改めて年金制度全体が抱える課題について、「私的年金」に分類される企業年金や個人年金の分野で制度を見直すことを目的としているが、当面は「年末まで」という期限が迫っているiDeCoの制度改革が優先して議論される。その焦点となるのは、「iDeCoの加入年齢」、そして、「特別法人税」の取り扱いだ。 iDeCoについては、現在は「国民年金被保険者であること」を加入要件としており、国民年金第1号被保険者(自営業等)、第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)は60歳まで、第2号被保険者は原則65歳まで(厚生年金被保険者である期間、65歳以上で老齢・退職を支給事由とする年金給付の受給権を有しないものは70歳まで)加入可能となっている。また、第1号被保険者で国民年金任意加入被保険者は65歳まで(任意加入の期間が上限)加入が可能になっている。 これに対し、「資産所得倍増プラン」の基本方針では、「就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていることに留意し、iDeCo制度の改革やその子供世代が資産形成を行いやすい環境整備等を図る」とされている。現行の制度では、自営業者やフリーランスは60歳以降の加入が難しく、会社員等である第2号被保険者と比較して加入期間が短く規定されていることになる。公的年金を補完する役割が期待されるiDeCoは、多くの国民が等しく利用する機会が確保される必要があり、働き方の違いによって利用機会が異なることはあってはならないというのが、企業年金・個人年金部会の大勢を占める考え方だ。働き方による制度利用の仕方については、iDeCoの掛金(拠出額)が、働き方や働いている企業の企業年金制度の仕組みによって異なるという点もあるが、この点は年金の加入状況を「企業年金プラットフォーム」で情報を共有化することで少しずつ格差を縮小する手当が進んでいる。 今回、iDeCoの加入可能年齢について、現在のように「国民年金被保険者であること」という条件をなくして、たとえば、「国民年金に何年以上加入した実績があること」などの条件を付けて加入可能年齢を引き上げる仕組みはどうかという提案が厚労省から出された。また、iDeCo等の確定拠出年金や確定給付企業年金(DB)の運用時に積立金に対し1.173%の特別法人税が課税されることについては、時限的に課税凍結が繰り返されてきているが、この特別法人税は撤廃を求める声が強い。この特別法人税の取り扱いについても早急に結論を得る方針だ。 「資産所得倍増プラン」は、「NISAの抜本的な拡充」と「iDeCo制度の改革」を通じて「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせる」ことをめざしている。その投資へのシフトで重要な役割を担うのが投資信託(投信、ファンド)だ。投信の組成や運用、そして、販売に携わる関係者は、真の意味で(目先の手数料収入を得んがためではない)制度の利用促進につながる活動を行い、投信の利用促進、普及に努めていくことが求められている。(イメージ写真提供:123RF)
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