前のページに戻る
2022/11/22 15:39
米国の急速な利上げによって2023年の米国経済は減速し、マイナス成長の景気後退に陥るのではないかという懸念が強まっている。このような景気の先行きが不透明な時にでも株式投資で着実な投資収益を稼いでいける方法として注目されるのが「割安株(バリュー株)投資」だ。景気が良くて市場全体に上昇の勢いがある場合は、企業の成長性に着目した「成長株(グロース株)投資」の高い収益率に目を奪われるが、成長株の上昇勢いが衰えた時に割安株投資の魅力が浮き彫りになってくる。米国を代表する割安株投資のファンド「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンダー)」の人気が盛り上がってきたのは、来年以降の低成長を見据えた動きなのかもしれない。同ファンドは2020年3月の設定以来、2022年10月まで32カ月連続で月次ベースの資金流入が継続している。 「テンバガー・ハンター」は、市場が気づいていない成長機会を持つ割安な銘柄である「割安成長株」を世界の市場から発掘することを目指している。愛称の「テンバガー・ハンター」の「テンバガー」は株価が10倍になるような「大化け株」のことを指す。優れた経営者、強固な財務基盤、独自の商品・サービスによる強い競争力など、企業としてのクオリティ(品質)が高い企業について、割安な株価水準で投資する。したがって、2020年の「コロナ・ショック」の後にあった「デジタル・トランスフォーメーション」を切り口としたIT成長株の大きな上昇波のような市場環境は、同ファンドは苦手とする環境といえるが、その中にあってもしっかりと着実な収益を重ねてきた。そして、いよいよ米国が利上げに転換する姿勢を明確にして2022年に入ってから大幅に値上がりしていたIT銘柄の株価の下落が始まったが、その下落に連れて基準価額の水準を落とすことなく、しっかり踏みとどまってパフォーマンスを維持することができている。 同ファンドのポートフォリオでは、世界株式(MSCIワールド・インデックス)と比較してIT(情報技術)の銘柄への投資比率が低く、地域別にはアメリカへの配分比率は低く、日本への配分が多くなっている。「デジタル・トランスフォーメーション」への期待で何年も先の利益まで株価が織り込んでしまって割高になったIT銘柄を買わずに、万年割安といわれている日本株の中に投資機会を見出している。この将来の成長期待が強い銘柄を探し出すには、フィデリティが世界の運用拠点で続けている地道なリサーチ活動の成果を使っている。フィデリティの他のファンドと異なる特徴は、「割高な銘柄には一切手を出さない」という姿勢の徹底だ。 同ファンド(Bコース、為替ヘッジなし)の過去1年間のトータルリターンは2022年10月末現在で12.58%。日本を含むグローバル株式(為替ヘッジなし)というカテゴリーの平均がマイナス3.83%になる中で、際立った運用成績になった。ちなみに、この1年間のトータルリターンは米国の「S&P500(配当込み、円ベース)」は大幅な円安の影響等もあって12.44%になったが、その水準をも上回っている。そして、設定来のトータルリターンは10月末現在で137.40%と、当初1万円の基準価額が2年7カ月で2万3740円と2.37倍になっている。 さらに、同ファンドと同じ運用を行う米国籍ファンドの過去20年余りの運用実績を振り返ると、米国が利上げを実施している局面でもしっかりした運用成績を残していることがわかる。たとえば、「ITバブル」といわれた2000年の好況期に1999年5月から2000年12月まで米政策金利が4.75%から6.50%に引き上げられた時、同運用戦略は21.8%の上昇になった。また、ITバブル崩壊を克服し「リーマン・ショック」の大幅下落になるまでの2004年5月から2007年8月までに米政策金利は1.00%から5.25%に引き上げられたが、この間も56.3%上昇した。さらに、前回の利上げ時の2015年11月から2019年7月まで0.25%から2.50%に引き上げられた時にも28.9%のプラス成長を実現している。現在、2022年3月のゼロ%金利から始まった利上げは11月までに4%の水準にまで引き上げられ、2023年3月ごろまでは利上げが続くと見通されている。この急速な利上げが米国経済の腰を折ると懸念されているが、同ファンドのパフォーマンスを見る限りは、利上げが実施されている局面においては、堅調なパフォーマンスが期待できる。 過去の米国経済は、大幅に政策金利を引き上げた後で、リセッション(景気後退)を経験しなかったことがない。要は、その景気後退の落ち込み度合いがどうなるかだ。「リーマン・ショック」のように回復まで数年を要する深い落ち込みになるか、軽微な落ち込みで次の成長ステージにすすめるのか。それはその時を迎えてみないとわからない。ただ、景気が落ち込むことになるのであれば、「テンバガー・ハンター」のように割安な水準で投資するファンドに安心感がある。景気後退期の落ち込みが小さければ、その後の景気回復で得られるリターンもしっかり取り込めるというものだ。(グラフは「テンバガー・ハンター」の設定来のパフォーマンス推移)
ファンドニュース一覧はこちら>>