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2022/11/28 16:09
「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」が堅調なパフォーマンスを刻んでいる。2022年10月末現在で3年(年率)トータルリターンが15.28%となり、複数の新興国に投資する株式ファンド152本中で第4位にランクされている。1年トータルリターンも6.41%と、カテゴリー平均がマイナス10.15%に沈む中で堅調な運用成績になった。10月末時点で設定から3年間が経過し、初めてファンドレーティングの対象ファンドになったが、スタート時点での格付けは5ツ星と好成績になった。同ファンドは、10月末現在で投資銘柄は330銘柄と幅広い銘柄に分散投資している。新興国にあってこれから成長を遂げていきそうな小型株に広く投資するアクティブファンドとして注目したい。 同ファンドは、ファンド名に「ビッグデータ」と入っていることから、ビッグデータ関連のハイテク株に主として投資するファンドという印象を持ってしまうが、この「ビッグデータ」は銘柄発掘の手段としてビッグデータを活用することを意味している。新興国市場を幅広くカバーしてアナリストを配置して調査することは現実的ではないため、世界各地の様々なデータをビッグデータとして収集・分析することで、有望銘柄を発掘することに役立てる。ビッグデータを活用した計量モデル運用に強みを持つアクサ・インベストメント・マネージャーズが実質的な運用を行っている。 同ファンドでは、銘柄ごとに数百項目に上るデータを収集し、蓄積している。業績や資産などの各種財務データ、ESGスコアなどの「企業ファンダメンタルズ・データ」、また、アナリスト見通しやニュースなどの企業関連情報などの「市場センチメント情報」、そして、リスク属性や売買、ベンチマークなどの「各種市場データ」などを収集する。そのうえで、事業分析や競合比較、財務評価などによる「ファンダメンタルズ評価」を行い、独自の収益予測モデルを基づいて企業価値を算出し、適正株価と時価を比較して投資魅力度をランキングする。そして、同社が適正株価と考える株価よりも、市場で割安に過小評価されている銘柄に投資するという運用プロセスを取っている。この「割安株」の判断には、銘柄選択用クオンツモデル(定量分析)等によって、個別銘柄の割安度に着目し、個別企業を詳細に分析・評価するボトムアップ・アプローチによる判断を基本としている。 22年10月末現在のポートフォリオの国別配分比率は、トップの「インド」が23.1%、次いで、「台湾」が19.3%、「韓国」が13.4%、「香港」が8.7%、「南アフリカ」が5.9%などとなっている。この比率は、「MSCI エマージング・マーケッツ・インデックス(MSCI EM)」の同時期の国別比率である「中国」26.89%、「インド」16.21%、「台湾」13.52%、「韓国」11.91%、「ブラジル」6.45%とは大きく異なる。組み入れ銘柄の上位も、同ファンドではトップにブラジルの「シエロ」を1.1%、第2位にインドの「タタ・ケミカルズ」を1.1%、第3位に韓国の「GSホールディングス」を1.0%のところ、「MSCI EM」の場合は、トップが「台湾セミコンダクター」の5.36%、2位が韓国の「サムスン電子」で3.58%、第3位に中国の「テンセント」2.94%などとなっている。 「MSCI EM」が時価総額の大きな銘柄で構成されていることに対し、「ビッグデータ新興国小型株ファンド」は小型株を中心にしているため銘柄が異なり、かつ、上位銘柄への集中度も小さくなっている。「MSCI EM」の指数構成銘柄は1386銘柄と非常に多くの銘柄に分散しているが、上位10銘柄だけで全体の20.96%を占める。一方、「ビッグデータ新興国小型株ファンド」の投資している銘柄は330銘柄だが、上位10銘柄の投資ウエイトは9.5%程度になっている。 世界の株式市場は今、2023年の世界経済の減速を懸念して調整色を強めている。景気が低迷すれば、企業収益は伸びにくく、したがって、株価の上昇力も限定的なものになるだろうという見方が強い。そのような環境になると、経済力の弱い新興国はマイナス成長の圧力を受けやすく、まして、小型企業は大波に揺れる小舟のように不安定となり、転覆の可能性も出てくる懸念が高まる。ただ、現在のインド経済が内需を中心に経済が安定し、海外展開をしていない小型企業は世界景気の減速の影響を受けにくいという点が評価されている国もある。各国各様の経済環境の中で、世界景気が減速しようとも成長が可能な企業を選び出せる目があれば良いということになる。 また、「ビッグデータ新興国小型株ファンド」は、運用スタイルとしてバリュー株投資のスタイルを取っていることも、現在の不安定な市場環境の中でリスク水準を抑える効果が期待できる。同ファンドは、毎月の月報で繰り返し、「長期的なリターンの向上をめざす」としている。新興国市場のこれからの成長をしっかり捉えたいという一貫した意思で運用されていることも心強い。世界的に株式市場が不安定な折であるが、広く分散したポートフォリオで次の展開を見据えてしたたかに運用している同ファンドに注目したい。(グラフは、「ビッグデータ新興国小型株ファンド」の過去3年間のパフォーマンス推移)
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