前のページに戻る
2022/12/05 15:15
大手ネット証券3社の投信積立契約件数ランキング(月次、22年11月)のトップ3は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」で、前月と同じ結果だった。前月にトップ10圏外から第10位にランクインした「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」が第6位にジャンプアップ。前月第8位に入った「イーストスプリング・インド・コア株式ファンド(愛称:+αインド)」も第10位とトップ10内にとどまった。一方、トップ10の常連だった「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」が同率での第10位とトップ10から外れてしまいそうな位置にまで後退した。 ランキングは、定期的に月次の投信積立契約件数トップ10を公表しているSBI証券、楽天証券、マネックス証券の公開情報を使用。各社ランキング1位に10点、以下、順位が落ちるたびに1点を減点し、第10位を1点として、3社のランキング10位までのファンドの点数を集計した。 ランクをあげている「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」は、「S&P500指数」構成銘柄のうち、過去25年間連続して毎年増配している優良大型株のパフォーマンスを測定する指数「S&P500配当貴族指数」に連動する運用成果をめざすファンド。「S&P500配当貴族指数」は、「S&P500指数」と比較すると、ディフェンシブ性が強い株価指数になっている。 指数構成銘柄をみても「S&P500指数」が、『アップル』、『マイクロソフト』、『アマゾン』、『テスラ』、『アルファベット』(グーグルの持ち株会社)など、大手ハイテク株が組み入れ上位に並んでいるところ、「S&P500配当貴族指数」では、素材の『アルベマール』、ヘルスケアの『カーディナルヘルス』、生活必需品の『アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド』などが上位を占め、構成銘柄の業種分散などが大きく異なる。業種別構成比は、「S&P500指数」が『情報技術』を筆頭に、『ヘルスケア』、『一般消費財・サービス』の3業種で50%超を占めるに対し、「S&P配当貴族指数」では、『生活必需品』、『資本財・サービス』、『素材』の3業種で50%超を占める。「S&P500配当貴族指数」は、生活に密着したブランド企業が多く、爆発的な成長は期待しづらいものの、景気の状態にかかわらず安定した収益をあげられる企業が中心だ。 2021年12月末までの「デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進化」に着目した米国大手ハイテク株への集中投資が、積立投資分野での「S&P500指数」人気を支えてきた。2022年になって米国が利上げに転じるとともに、米ハイテク成長株偏重の投資に対する反省が生まれている。「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」が、積立投資の設定件数で人気を集めているのは、このような投資家のハイテク成長株離れという気分を映したものと考えられる。 これと同様のことが、今回ベスト10の第8位にジャンプアップした「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」と、第10位にまで順位を下げた「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の関係に表れている。「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」は、文字通り、「全世界株式インデックス(オール・カントリー)」から日本を除いた指数に連動するインデックスファンドだ。アメリカの国別構成比は65.0%だ。これに対し、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」のアメリカへの投資比率は74.6%を占める。組み入れ上位銘柄は両ファンドともに、『アップル』、『マイクロソフト』、『アマゾン』、『テスラ』、『アルファベット』という米ハイテク大手株であることは変わらない。アメリカへの投資比率が低いファンドの方が好まれるようになっている(比率等は2022年10月末現在)。 このようなアメリカのハイテク株への投資偏重を見直す動きは、第10位に残った「イーストスプリング・インド・コア株式ファンド」にも見て取れるし、ベスト10の次点となった「SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド」、「eMAXIS Slim 国内債券インデックス」などからもうかがえる。今後の変化に注目していきたい。
ファンドニュース一覧はこちら>>