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2022/12/08 14:51
世界最大級の資産運用会社の1つであるナティクシス・インベストメント・マネージャーズ(運用総資産額=1.1兆ドル)が12月8日に発表した最新の機関投資家調査によると、世界の機関投資家は、2023年に金利、インフレ率、ボラティリティが一段と上昇すると予想している。この調査結果について、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ日本法人の代表取締役社長の井上真司氏は、「経済的な強い逆風にもかかわらず、機関投資家はほとんどの資産クラスに対して極めて強気の姿勢をとっており、市場の混乱が続く中、アクティブ・マネージャーが好機を捉えて成長できると見ています。低金利に後押しされ株価が高騰した10年を経て、2023年は市場がバリュエーションの重要性を再認識し、伝統的な債券の魅力が高まる年になるでしょう」と語っている。 ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの「グローバル機関投資家調査」は、北米、中南米、英国、欧州、アジア、中東の29カ国・地域において、公的・私的年金、保険会社、財団、基金、政府系ファンドの500人の機関投資家を対象としている。調査対象の機関投資家の運用資産は、総額20兆1000億ドルに達する。同調査は、2022年10月〜11月に調査会社CoreData Researchにより実施された。 機関投資家のポートフォリオ・リスクに対する懸念は、「インフレ」と「金利」が上位2位を占める一方で、57%が世界経済の最大の脅威として「戦争」を挙げており、この傾向は欧州(68%)で最も強く確認されている。「米中関係の悪化」も最大の脅威とみなされており、アジアの機関投資家の47%、そして、米中間選挙後の米国の機関投資家の53%(選挙前は25%)が懸念を示している。また、世界の機関投資家の65%が、中国の地政学的な野心により、世界経済は中国と米国が最大の影響圏を持つ2つの世界秩序に二分されると考えている。 ◆「債券」と「ESG」に強気の見通し マクロ経済見通しが、アロケーション戦略の全面的な変更にはつながらないと思われるものの、今回の調査では、世界有数の最も洗練された投資家の53%が、より高い利回り、または、安定したリターン、あるいは、ダウンサイドリスク・ヘッジを求めて、「債券」や「オルタナティブ戦略」など質への移行を示す戦術的なアロケーションの変更を通して、ポートフォリオ・リスクの軽減を積極的に行っていることが明らかになった。そして、この変更において、62%が「ESG」にはアルファが備わっていると考え、59%がESG投資への積み増しを計画している。 投資家は、「プライベートエクイティ」(62%)と「債券」(56%)に強気で、「株式」と「プライベートデット」は強気と弱気が交錯している。また、大半(82%)が「商業用不動産」には弱気で、61%がリモートワークの普及が進むことで商業用不動産資産の価値は急減するとの見解に同意している。 「債券」への関心が再び高まり、各国の中央銀行が資産購入プログラムを段階的に終了させる中、「流動性」が課題として浮上している。来年の最大のポートフォリオ・リスクの1つとして「流動性」を挙げる機関投資家は、1年前の13%から36%へと3倍近くに増えている。 また、グローバルに「グリーンボンド」を保有する機関投資家の半数が増額予定であり、ほぼ同数が現在のアロケーションを維持すると回答している。アジアでは、現在グリーンボンドに投資している機関投資家の68%が、アロケーションを増やすと回答している。欧州・中東・アフリカ(EMEA)の機関投資家も54%がアロケーションを増やすとし、アロケーションを減らすと回答したのは僅か4%だった。 金利が上昇しても、10年にわたる利回りの追求は依然として投資チームを悩ませ、61%が利回りの代替としてオルタナティブ投資に注目していると回答している。2023年にアロケーションを増やすアセットとしては、「インフラ」(44%)が最も多く、その次に「プライベート・エクイティ」(43%)、「プライベート・デット」(36%)が続いている。 ◆運用スタイルは「アクティブ運用」に有利 機関投資家の60%が過去12カ月間に「アクティブ運用」がベンチマークを上回ったと回答しており、ボラティリティが高い時期に「パッシブ運用」では限界があることを認識しています。2023年の見通しをもとに、74%が2023年には市場が「アクティブ運用」に有利になると考えています。 株式では、機関投資家は「米国」(41%)への配分を増やす可能性が最も高く、次いで、「アジア太平洋地域」(33%)、「新興国市場」(33%)への配分を増やす可能性が高くなっている。新興国市場では、中国を除くアジアに最良の投資機会があると見ていて、3分の2(66%)が新興国市場は中国に過度に依存していると考えており、74%が中国の地政学的な野心によって投資魅力が低下していると考えている。(イメージ写真提供:123RF)
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