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2022/12/09 19:00
2022年の国別の株式パフォーマンス(MSCI国別指数)をみると、11月末までの過去1年間のトータルリターンで、「アルゼンチン」(56.29%)、「ブラジル」(45.32%)、「メキシコ」(44.73%)のパフォーマンスが際立って高い。「アルゼンチン」は、3年(年率)も33.00%と非常に高く、いわゆる「コロナ・ショック」(2020年3月)からの相場でトップランナーになっている。反対に最悪の結果は「ロシア」で計測不能のマイナスになっている。そのロシアを除くと「中国」がマイナス15.44%で低い。11月の月次パフォーマンスでは「チャイナオープン」が24.95%と全ファンド(純資産10億円以上、DC・SMA専用除く、ブルベア型除く)でトップになるなど中国株ファンドが全般に持ち直している。それでも大きく沈み込んでいるほどに2022年の落ち込みは厳しかった。大きく落ち込んだがゆえに、2023年は中国株が持ち直すという見方も出ている。 パフォーマンスのよかった「アルゼンチン」や「ブラジル」などは、経済基盤が弱く、たびたびデフォルト(債務の支払い延期・停止)を起こし、通貨危機も経験している国だ。アルゼンチンは、近くは2020年に世界的なコロナ危機の最中に国債の利払いを停止してデフォルトに陥った。そして、2001年〜2002年には「アルゼンチン危機」といわれる通貨・債務危機を経験し、アルゼンチン・ペソの大暴落を経験した。ブラジルは2014年から2017年にかけて深刻な経済危機に陥り、2014年から2016年には3年連続でGDPがマイナス成長し、2016年には1200万人が失業するという事態に陥った。この間、株価や通貨は暴落している。このように、足元のパフォーマンスこそ目立っているものの、個別の国に投資するには、大きなリスクがあるといえる。 そこで、一般的には、「アルゼンチン」や「ブラジル」、「メキシコ」、「南アフリカ」、「インドネシア」など足元でパフォーマンスが好調な国々に投資する手段として活用されるのは、新興国を1つのパッケージにした「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」、もしくは、新興国も含む全世界の株式に投資する「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するファンドに投資するようにしている。「新興国株式インデックスファンド」、「全世界株式インデックスファンド」などという名称のファンドが数多く設定・運用されている。 「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」の構成国は、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、インドネシア、中国、インドなど24カ国で構成されている(アルゼンチンは対象外)。その過去1年間(円ベース)のトータルリターンはマイナス1.32%だった。年間リターン45%のブラジルや44%のメキシコ、29%の南アフリカなどが入っているにも関わらず、マイナスのパフォーマンスになったのは、同指数の中核になっている中国がマイナス15%に沈んでいるためだ。同インデックスの国別構成比率は中国が30.4%でトップ、次いで、インドの14.85%、台湾の14.41%、韓国の11.95%で、ブラジルは5.36%にとどまる。一方、新興国を含む全世界に投資する「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」になると、新興国最大の中国ですら構成比が3.3%に過ぎず、61.65%を占めるアメリカの影響が大きな指数になってしまう。 その点では、つみたてNISAなども含めて、広く行われるようになっているインデックスファンドの積立投資で使われるのは、「S&P500」(アメリカ株式100%)、「外国株式(先進国株式=MSCIワールド除く日本)」(同73.56%)、「全世界株式」(同61.65%)など、アメリカ株式が中心のインデックスファンドだ。そのアメリカ株式が11月末現在では3.26%とかろうじてプラス圏に顔を出す程度に低迷し、2023年もFRBのかじ取りひとつでリセッション(景気後退)に陥る懸念もある状態で、強気の見通しが聞こえてこない。アメリカの対抗軸になり得る「新興国株式」のカギとなる中国の行方が注目されるゆえんだ。 11月に中国株式が大きく反発したのは、中国政府がかたくなに進めてきた「ゼロコロナ政策」を緩和し、経済再開への地ならしをし始めたというニュースがきっかけだった。中国本土市場(上海、深セン)、香港市場ともに大きな上昇を記録し、そのまま高値圏で越年しそうな気配だ。「MSCI中国」は、過去3年(年率)のリターンもマイナス0.23%で、「コロナ・ショック」直後こそ、他の国をリードする上昇を演じたものの、2021年2月にいち早くピークを付けて、22年10月には「コロナ・ショック」によって下落した水準を下回るほどにまで株価が下落してしまった。ただ、過去1年間が非常に厳しい経済環境を経験してきただけに、利上げを続ける欧米諸国と違って、緩和的な金融政策を続けている国にもなっている。過去1年間に大きく下げただけに、2023年の反発が期待されている。中国は国の方針によって、経済状況が大きく変わる国だけに、今後の中国政府発の情報に注意していきたい。(グラフは、MSCI国別・地域別指数のパフォーマンス)
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