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2022/12/30 15:18
令和5年度税制改正の大綱等において、2024年以降のNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化の方針が示された。新しいNISAは、年間投資枠120万円の「つみたて投資枠」と同240万円の「成長投資枠」が設けられ、この2つの枠は併用が可能だ。非課税保有限度額(総枠)は1800万円に拡充され、簿価残高方式で管理することによって枠の再利用も可能になっている。2023年末までは、現行の一般NISA、つみたてNISAが存続し、その枠で投資された資金は新しい制度の外枠で現行制度の非課税措置を適用する(現行制度から新しい制度へのロールオーバーは不可)。投資対象商品は、「つみたて投資枠」は現行のつみたてNISAの対象商品に限定。そして、「成長投資枠」では整理・管理銘柄を除く上場株式と信託期間20年未満及び高レバレッジ型及び毎月分配型を除く投資信託になっている。 従来と比べて利便性が格段と良くなり、非課税枠も拡大し、制度が恒久化したことによって「投資による資産形成の時代」を築くための制度的な枠組みはできたといえるのではないだろうか。特に、「成長投資枠」の対象商品から毎月分配型ファンドが除外されたことに制度の性格が表れているように感じる。毎月分配型ファンドは、投資成果に関わらず一定の分配金を払い出すことをめざす商品で、どちらかといえば「年金の補完」というような資産活用を行う層のための商品だ。根強いニーズに支えられた商品群であるが、毎月分配をめざすために投資元本も取り崩して分配することもあるなど、資産形成には向かない商品に分類される。それを除外することによって、制度の性格が「資産形成」を強く意識したものであることが強調されるようだ。 「投資による資産形成」の望ましい姿は、「少ない資金で大きな資産を築く」ことを現実のものにすることだ。たとえば、毎月5万円以上の貯蓄が可能なほど十分な収入がある人は、それを預貯金で積み立てるだけで年間60万円以上、30年間で1800万円以上の資産とすることができる。しかし、所得の水準が低い人、あるいは、子育てや介護等で貯蓄する余裕がないという人が毎月5万円以上を貯蓄していくことは困難だ。その場合、毎月2万円でも積立貯蓄をしていくと預貯金では30年間で720万円にしかならない。これは、預貯金の金利をゼロ%として計算している。ところが、投資することによって年率5%の運用ができれば、同じ2万円を30年間積み立てると約1600万円になる。年率7%であれば約2350万円だ。 「投資による資産形成」によって小さな金額でも大きな資産をつくることが可能になる。この際に、NISAの投資収益非課税の効果は絶大だ。たとえば、同じように毎月2万円を30年間積立投資した場合、収益率が年7%で計算すると、課税後では約1815万円になり、非課税(NISA利用)の約2350万円より535万円も少なくなってしまう。NISA恒久化の意味は、投資期間が長期になるほど大きい。 投資をすることによる期待リターンは変動するため、単純に過去の収益率を用いて将来の収益を計算することはできないが、参考までに、2002年3月末〜2022年3月末までの20年間で外国株式インデックス(日本を除く先進国株式)の年平均収益率は7.41%だった。同期間の国内株式インデックスは3.80%だ。この期間における国内の預貯金の利回りはゼロ%台だった。預貯金金利がゼロ%であっても、投資をすることによって年3%台、年7%台という収益率を獲得することはできる。もちろん、これら収益率は、20年間を投資し続けた結果であり、途中にはマイナスの収益率だった年もある。収益がマイナスになっても、大きなプラスが出ても積立投資を中断することなく長期間にわたって継続することが、将来の大きな資産形成につながる。少なくとも現時点において、株式ファンドを使った積立投資を実践した結果は大きな投資収益につながった。 この制度的な枠組みを私たちは十分に生かして、将来の豊かな生活につなげたい。資産形成は1年や2年ではできない。30年、40年という長期にわたってコツコツ続けることが必要だ。また、貯蓄のために日々の生活に回す資金を大きく削ることもなくなる。日々の生活を切り詰めることなく、現状を維持しながら、将来の資産をつくることが重要だ。今は貯蓄の準備ができていない人は、2023年を資産形成のための準備期間に位置付けたい。毎月の生活費から貯蓄に回せる資金が1万円なのか、2万円なのか、家計簿等で支出の内容を把握することが第一歩となる。将来への積立投資は、5000円でも可能なので、長く継続できる資金で積立投資の第一歩を踏み出すことから始めたい。(図版は、2024年からのNISA)
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