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2023/01/06 16:39
2023年は、投資家にとってどのような1年になるのだろうか? 2022年が世界的な景気減速による株安に加え、世界的な利上げに伴う債券安という非常に厳しい1年だっただけに、より明るい市場展望を持ちたいところだ。しかし、イーストスプリング・インベストメンツが年初に発行した2023年の市場展望は、「2023年はさらに厳しい年になるかもしれない」と気を引き締めている。ただ、「2023年後半には、インフレのピークと米国FRBのタカ派的姿勢のピークが過ぎ、より穏やかな金融市場環境が予想される。このような環境は、アジアや新興国の株式、アジアのクレジット債などのリスク資産にプラスに働く」と見通している。 イーストスプリングが2023年の市場見通しを厳しくみている理由の1つが、「グローバル購買担当者景気指数(PMI)の継続的な低下」にある。地域横断的な工場生産の落ち込みも続いており、同社では「ITバブル崩壊に端を発した景気後退局面であった2000〜2003年の期間を想起させる」としている。インフレ率は新型コロナウイルス以前の数十年間よりも高くなりそうで、金融緩和の時代は終わりを迎えた。そして、地政学的緊張は世界中で高まっている。世界の市場の不安定な状況は今年も続くと見ておいた方が良い。 特に、米国株式は株式指数に占めるテクノロジー・セクターの構成割合が高いことから、景気後退局面では株式の下落余地が大きい。景気後退が深まれば深まるほど、株式のドローダウン(最高値からの下落率)は大きくなる。イーストスプリングは、「米国の消費者のバランスシートは2008年の世界金融危機時と比べてはるかに回復力があるため、差し迫った米国の景気後退は、おそらく過去の景気後退と比べて緩やかなものになる」というメインシナリオを描いているが、「現時点では米FRBのピボット(政策転換)を期待するのは時期尚早」とし、失業率の上昇や消費者物価の下落のスピードなど、主要な経済指数の動向を注意深く見ていく必要があるとする。 ただ、先進国に比べて新興国は中央銀行の利上げの幅やスピードが先進国ほどの規模やペースではなかった。これは、多くの新興国の経済は、内需が概して弱く、賃金の伸びはそれほど堅調ではないため、インフレ動態が米国と比較して相対的に弱いといったようなことが原因になっている。また、欧州とは異なり、ロシア産の天然ガス等の調達に窮するようなエネルギー・ショックの影響も少なかった。2022年は新興国株式市場も不安定な1年だったが、今後インフレ率が低下し、2023年半ばに米FRBの利上げ政策が転換するようなことになれば、市場センチメントがプラスに転じてアジア株式や新興国株式を押し上げるような展開が期待できるとみている。 そして、相対的に新興国株式への期待が強い中にあって中国の株式については強気の見方をしている。中国はゼロコロナ政策と不動産セクターの混乱によって2022年は大変厳しい1年になったが、「最悪期は脱した」としている。そのため、「バリュエーション水準、企業収益への期待、投資家の中国株へのポジションが極めて低い水準にあることから、中国が2023年に経済再開に向けて動き出す中で、株価には潜在的な上昇余地があり魅力的」としている。イーストスプリングでは、中国政府が新型コロナウイルス政策を微調整し、不動産セクターへの支援策を強化しているため、「中国経済は2023年の第1四半期(1〜3月)には底打ちする」と予想している。 2023年の市場を展望する時、インフレが早期に許容範囲内の水準に戻るのか、それとも高止まりするのか? 米FRBはインフレからの米経済の軟着陸(ソフトランディング)を実現できるのか、それとも深い景気後退に落ち込むのか? いずれにしても今後12〜18カ月間は、市場のボラティリティ(変動性)は非常に高い水準で推移することが予想される。このため、「ポートフォリオのレジリエンス(強じん性)強化は非常に重要なテーマになる」とする。低ボラティリティ戦略、マルチ・アセット戦略、マルチ・ファクター戦略など、クオンツ戦略を組み合わせることで、よりディフェンシブなポートフォリオをつくることも検討したいとしている。さらに、過去10年間で最も魅力的な金利水準にあるアジア投資適格債券、また、高格付け・低リスクなシンガポールドル建て債券、そして、高配当アジア株式なども、ポートフォリオの耐性を高めるために利用する価値があるとする。(イメージ写真提供:123RF)
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