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2023/01/12 18:30
2022年のファンド年間トータルリターンを比較してみると、いわゆる「レバレッジ型(ブル型=指数の上昇時に指数の変動率を増幅する)」のファンドが大幅なマイナスリターンに沈んでいることが目立つ。原指数がマイナスに落ち込む中で、その下落率を増幅して被ったため、大きな下落率になった。反対に、レバレッジ型でも「ベア型(指数の動きと反対方向に動く)」は「NASDAQ100 3倍ベア」が全ファンド(CD・SMA専用、ETF除く)の中で第3位になるプラス99.99%のリターンを実現した。レバレッジ型は、その値動きの大きさを利用した積立効果を狙うツールとしても活用され、近年では残高が1000億円を超えるほどに大型化したものもある。ファンドの運用記録が3年を超えるファンドも増えたため、その積立効果を検証してみた。 検証に使ったのは、米国の「NASDAQ100」指数に連動する運用成果をめざす「iFreeNEXT NASDAQ100」と、日々の基準価額の値動きを「NASDAQ100」指数の2倍程度となることをめざす「iFreeレバレッジNASDAQ100」(通称「レバナス」の1つ)で、それぞれ2019年1月末から22年12月末までの4年間で比較した。 4年間の積立投資結果だけをみると、「レバナス」を使った積立は、2022年12月末現在で積立元本の48万円を下回る評価額43万円に沈んでしまった。2022年11月末までは、積立元本とほぼ等しい評価額をキープすることができていたが、12月末になって元本価格水準を明確に割り込んでしまった。基準価額の水準だけで見れば、投資開始の2019年1月末が9014円で、22年12月末は1万6081円であるため、基準価額はプラス78%の水準にあるのだが、2021年12月(基準価額は4万2484円)に向けた大きな上昇相場を経験する中で、高い価格帯でも積立投資を続けていたため、過去4年間での累計積立評価額は、投資元本を下回る結果になった。基準価額のピーク(21年12月末)から22年12月末までマイナス62%と大きく下落したことが響いた。 これに対して、レバレッジをかけていない「iFreeNEXT NASDAQ100」の22年12月末時点の積立評価額は59万円と、積立元本(48万円)を上回っている。ファンドの基準価額は21年12月末に対して、22年12月末はマイナス23%の水準にあるが、積立評価額が積立元本を下回っていないことは、安心感につながっているだろう。 そもそも米国のNASDAQ市場はハイテク株の比率が高く、ボラティリティ(価格変動率)が大きな市場として知られている。2022年の株価指数の年間騰落率でみても、「NYダウ」がマイナス8.78%、「S&P500」がマイナス19.44%だったことに対し、「NASDAQ100」はマイナス32.97%と大きな下落率になった。この大きな値動きが、等金額投資による積立投資にあっては、価格下落時に大きな量(口数)を買い溜める効果となって、株価が反転する時に大きなリターンとして返ってくる効果を高めるという期待につながっていた。しかし、さすがに原指数が30%以上の値下がりとなり、それにレバレッジをかけて60%以上も基準価額が下落してしまうと、積立資産評価額も大きな下落に見舞われてしまうことが明確に示された。 ただ、「レバナス」を使った積立投資で、指数が大きく値上がりした2021年12月末までの過程は、非常に有効な積立効果が得られた期間として記憶されていいだろう。21年12月末時点の積立評価額は91万円に達し、積立元本(36万円)の2.5倍に膨らんでいた。資金効率を最大にするには、21年12月末でいったん現金化し、その後、引き続き積立投資を継続していれば、22年12月末で合算した評価額は100万円になっている計算になる。将来の株価を予測することは誰にもできないため、このような計算はあまり意味がないかもしれないが、「レバナス」のような大きな価格変動がある商品を使う場合は、ただ漫然と積立投資を続けるのではなく、大きな市場の流れをしっかり把握しておく努力も必要といえるだろう。また、今回の過去4年間の検証では、積立評価がマイナスに落ち込んでしまった事実を踏まえれば、積立投資期間は、4年の2倍の8年以上の長期で積立投資を行うべきだといえそうだ。 レバレッジ型のファンドは、非常に大きな値動きになる傾向があるため、価格変動リスクを抑える効果があるとされる積立投資においても、5年以下の期間では価格下落のマイナス分をカバーできないことがある。投資対象を選定する時には、過去のパフォーマンスについて様々な角度からシミュレーションを行った上で、その結果としての評価額の目減り額を自身で受け止める覚悟があるのか、事前に検討した上で投資をスタートしたい。数多くのインデックスファンドが設定されて3年以上が経過したことで、中期的なシミュレーションができるようになったことを活用したい。(グラフは、「NASDAQ100」のインデックスファンドと「レバナス」の積立投資シミュレーション)
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