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2023/01/13 18:18
HSBCアセットマネジメントは1月13日、オンラインで新春セミナーを開催し、グローバル・チーフ・ストラテジストのジョー・リトル氏がグローバル経済見通しを解説した。リトル氏が示した2023年の世界経済のキーワードは「パラレルワールド」で、欧米を中心とした西側と中国や日本などの東側では異なる経済・マーケット環境になるだろうとした。そして、日本については先進国の中で唯一、リセッション(景気後退)を免れる国になるとし、2023年は日本や中国、韓国、台湾など北アジア地域に大きな魅力があると語った。 リトル氏は、2022年の市場を振り返り、「株式市場が冴えない成績となり、債券市場が歴史的に最悪水準のリターンとなったことで、株式と債券を組み合わせたリターンは過去150年間で最悪の1年だった」と振り返った。特に、先進国と新興国の国債・社債・株式・オルタナティブなど、様々な資産クラスの相関関係が強くなり、揃って下落したことで、「どこにも非難する場所がない、異例の1年間になった」と語っていた。 そのような厳しい市場環境になったのは、中国の成長鈍化、世界各国のスタグフレーション(景気低迷期のインフレ)、金融の不安定化など、様々な経済的な変化・ショックが、個別に起こるのではなく網の目のようにそれぞれにつながって起こったことによると分析した。そこに、米国や欧州などで非常にペースの速い利上げが重なるという「危機の重なり」が起こったことで、かつて例がないほどの厳しい市場環境になったとした。 そして、2023年の基本シナリオは、米国と欧州がリセッション(メインの見通しは浅い景気後退)に陥るとととも、インフレの高止まりがベースになるとした。一方、中国の経済再開が期待されることで北アジアを中心とした東側地域は経済がしっかりした状態に戻るとした。 同社が予測する2023年の平均インフレ率は、米国が3%、欧州が5%で、年2%程度とする適正なインフレ率からは高い水準にとどまるとの見通しだ。これに対し、日本は1.5%、中国は2.5%、インドは5%程度と、アジア地域のインフレ率は比較的落ち着いた状態を予測し、これらが株式市場等の押し上げ要因になると語った。そして、第2四半期(4月〜6月)ごろには、中国経済が本格的に再開を迎え、新型コロナ政策の緩和で中国人旅行者がアジア各国で「リベンジ消費」に向かうことが期待されるため、中国経済の回復の効果がアジア地域の経済を押し上げる効果が期待できるとした。中国の2023年のGDP成長率は年5%程度を予想している。 一方、2021年から22年にかけて大きく上昇したドルインデックス(米ドルと主要通貨との関係を示す指数)は、米FRBの利上げ政策の転換によって下落基調を強めると予測している。「ドル安のトレンドが最もはっきり表れるのはドル円で、12カ月〜18カ月をかけて1ドル=115円程度までドル安・円高になると見通せる」と語っていた。「日銀はイールドカーブコントロールの上限を再度引き上げ、さらには、債券市場の管理を止めることを検討するタイミングにある」と語っていた。また、このドル安の影響が、新興国の株式や債券にプラスの影響を与え、ここ数年にわたって冴えない成績だった新興国市場が回復する見通しとした。 ただ、グローバルな株式市場については現在は慎重な姿勢をとっているとした。「2023年は企業収益が非常に厳しくなる見通しにある。その厳しさの程度が予測できるようになるまでは、株式投資に積極的にはなれない」と語っていた。そして、中国の経済再開が明確になる第2四半期くらいから北アジアの株式市場にはプラスの動きが強まり、米FRBが利下げへの政策転換に転じるであろう年後半から年末に向けて、先進国株式にも反転のチャンスが出てくるだろうと予想した。先進国については、国債や社債などの債券に妙味があるとした。 最後に、2022年に株式も債券も価格が低迷し「新しい投資先を探す動きが機関投資家を中心に高まり、その動きは2023年にも引き継がれる」と見通した。株式の中で価格変動率が安定しているインフラ株式、あるいは、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の観点でも注目度が高まっている農地や森林といった自然資本にも株式同等のリターンが期待されることがわかってきたため、これら新しい資産に戦略的投資してポートフォリオを安定的に成長させるような取り組みが続くだろうと語った。(イメージ写真提供:123RF)
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