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2023/01/17 17:45
アムンディ・インスティテュートが作成した「クロスアセット・インベストメント・ストラテジー1月号」では、2023年の年初から上昇している世界の株価について「安堵によるラリーが続く可能性は低い」と自制を呼びかける一方、「王様米ドルは輝きを失う」と米ドルの一段の下落を予想。そして、全般は慎重な見方をしている世界株式の中で中国に関して経済再開を背景に株価にも回復の期待が強いという見通しを示した。「中国はコロナ関連の制限のほとんどを撤廃し、住宅市場をさらに支援することを約束、経済成長促進政策を設定した。当社は中国経済が、2023年に起る世界的な減速から距離を置き、低水準で加速すると予想する」と、中国経済の復調を予想している。1月17日に中国国家統計局が2022年末の中国総人口が61年ぶりに前年末比でマイナス成長したと発表し、世界最大の人口を有する国家としての評価にも陰りが出てきたと感じられる中国に、どのような復活のシナリオがあるのだろうか? 中国が厳格な「ゼロ・コロナ政策」を志向した関係もあって、中国経済の停滞が続いた。中国の株式市場は他の市場に先駆けて調整し、中国の本土株(上海、深セン市場に上場する銘柄が中心)である「中国A株」を主要な投資対象とした「UBS 中国A株ファンド(年1回決算型)」は、2021年5月にピークを付けた。世界株式が21年12月まで上昇を続けたことに比較すると半年以上も前に失速したことになる。そして、大手不動産会社の経営不安に加え、アリババやテンセントといった大手ハイテク企業を締め付ける政策を実施し、2022年10月までにファンドの基準価額はピークからの下落率が35%程度にもなった。中国は「ゼロ・コロナ政策」によって経済を止めることに加えて、ハイテク企業を圧迫することによって将来の成長も放棄したかのように映ったためだ。 ところが、このような政策は大きく転換された。たとえば、「ゼロ・コロナ政策」は、22年11月12日に20の規制を含む厳格なルールが示されたが、オミクロン株の流行によって感染が急拡大したこと、さらには、中国各地で民衆が政策への不満を表したことなどを受け、「11月下旬以降、中国はほとんどの旅行についての検査要件を撤回し、陽性者には自宅での隔離を許可し、高齢者のための2回目ブースター接種を開始した」と政策を急転換した。アムンディでは、「今後、中国政府が(ゼロコロナ政策に)後戻りすることはないと予想する」とみている。さらに、「プラットフォーム企業に対する政策が急激に変化している。これは雇用創出における彼らの役割を認識し、グローバルな競争を支援することで行われる」とし、また、「住宅市場の引き締め政策は正式に終了した」と、中国経済の停滞につながっていた政策が大きく変化し、経済再開に向けたカジ取りが始まったとする。 そして、22年12月15〜16日に開催された中央経済工作会議において、今後の経済政策の方向として「緩和的な金融政策を維持する一方で、小規模企業や零細企業、技術革新、および、グリーン・トランジションに資金を向ける」ことが確認されたことに注目。「内需を拡大するための優先事項として、消費が強調されている。これには住宅の改築需要や電気自動車、介護サービスなどが含まれる」と、今後の成長分野を分析する。その上で、「他のアジア諸国からの教訓では、経済活動が意味のある形で回復するためには、再開プロセス全体で2〜3カ月かかることを示唆している。また、旧正月の休暇期間中は経済活動が静かになることを考慮すると、2023年2月の成長は弱くなることが予想される。意味のある回復は、2023年3月、および、2023年Q2となるだろう」と見通している。 中国の経済再開に関する期待感は、なかなか日本では高まりにくい。米中対立は依然として厳しく対峙している状態にある。そのうえ、中国経済の大きな優位性であった「世界最大の人口」についても、少子化の問題を抱え、今後は急速に進む高齢社会という逆風にさらされることが見通されている。今後は、中国社会や経済の変化を的確に捉えた政策の立案力や実行力が問われることになる。中国株式への投資も、従来のように、購入して長期で保有していれば、将来の財産になるというような単純な考え方では難しくなっているのかもしれない。中国現地の変化をしっかり踏まえ、大きな経済圏で成長できる企業をピックアップしてポートフォリオを構築するアクティブファンドに期待したい。 「UBS 中国A株ファンド(年1回決算型)」は中国株式を投資対象としたカテゴリーの中で、運用成績が優れた5ツ星に格付けされるファンドだ。同じく、5ツ星のファンドには、「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」、「チャイナ・イノベーター・ファンド」、「三井住友・中国A株・香港株オープン」が並ぶ(2022年12月末基準)。1月21日から27日までは、中国の春節(旧正月)の大型連休になる。中国市場が本格的に出直るのも、春節明けの2月以降になるだろう。中国経済の本格再開が実現するまで、中国株ファンドの内容を良く調べて投資対象を絞るこむことも、2023年の運用戦略としては、1つの方法といえるのではないだろうか。(グラフは5ツ星の中国A株ファンドと世界株指数のパフォーマンス推移)
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