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2023/01/23 17:45
野村アセットマネジメントは1月23日、機関投資家を対象にオンラインで、「Project BRIDGE/日本株で元気に!」と題したセミナーを開催した。開会に先立って同社CEO兼代表取締役社長の小池広靖氏は、「『Project BRIDGE』は2022年3月に立ち上げたプロジェクト。日本株の魅力を発信していくとともに、市場評価と日本企業の実力のギャップを埋めるため、世界中の投資家と日本企業の架け橋(ブリッジ)となり、日本の国際金融市場としての機能向上を目指す運動」とあいさつした。その後、同社執行役員 株式CIOの村尾祐一氏が「野村アセットマネジメントが考える日本株市場の投資機会」、そして、運用部兼資産運用研究所チーフ・エコノミストの胡桃澤瑠美氏が「2023年 日本経済・金融市場見通し」と題して講演を行った。 「日本株市場の投資機会」をテーマに講演した村尾氏は、まず、2022年の世界の株式市場を振り返り、世界的に株価が下落した1年だったが、現地通貨ベースで比較すると、日本株は欧米の株式市場と比べると下落率が小さかったとして、「日本の金融政策が緩和的に運用され、円安効果も加味して企業収益も比較的順調だったことが株価に表れた」と語った。ただ、グローバル投資家の基準であるドル建てでの株価のパフォーマンスは、日本株も欧米の株価と同等の下落率になった。 そして、現在の金融市場の環境について、グローバルな景気循環の観点から、現在のグローバル経済は景気停滞期に入っていると判断され、そのようなタイミングで投資を開始した場合、6カ月後には8%程度のプラスリターンが得られるという良い機会に捉えられるものの、「現在は、世界的なインフレと金融引締めの最中にあり、景気循環からの投資判断はふさわしくない」と分析した。そして、金融政策の動向から考えると、現在は利上げの局面であり、この局面で投資をしても6カ月後の株式投資のリターンはマイナス圏にある。「政策金利が引き下げに動く局面までは株価のプラスリターンは期待しづらく、現状も今しばらくは株式投資に厳しい環境が続くだろう」と語った。 ただ、日本株はグローバル株とは異なる環境にあるとした。例えば、景況感については、欧米が2021年の高い成長期待が反転して23年は景気後退といえる低い成長期待に転落することと比較すると、日本は景況感の高い上昇がなかったが、2023年も低いながら相対的には欧米よりも良い状態を維持し、GDPの見通しも欧米が23年の後半にはマイナス成長が予想される中で、日本はプラス圏を維持する見込みだ。これは、「日本が内需を中心に堅調な個人消費に支えられた成長が可能なこと、また、新型コロナ規制の緩和からインバウンドの消費が期待されること、そして、コロナ禍で抑えられていた設備投資が復調していることなどによる」とした。さらに、日本株の株価評価は「株式益利回り(PERの逆数)」で1970年以来でグローバル株式と比較して最も割安な水準にある。このため、「日本株の魅力度は高まっている」とした。 その上で、「ROE15%以上の日本株は、米国株(S&P500)のROE15%以上の株式とそん色のないリターンを残してきたという実績があるものの、同じようなROE15%以上の銘柄群のPERを日米で比較してみると、日本株式の割安な状態が続いている。日本株では株主還元について配当の増額や自己株式の取得などが過去最高の水準で続いており、銘柄によってROEが上昇している。2023年は日本株の魅力度が相対的に高い状態が続く1年になると考える」と語っていた。 一方、日本の金融政策の見通しを中心に講演した胡桃澤氏は、今後の日本の金融政策で、利上げに転換するような変更はないと考えられるが、「金利の上限を管理しているYCC(イールド・カーブ・コントロール)は、昨年12月に実施したプラスマイナス0.25%の変動幅をプラスマイナス0.5%に拡大する柔軟化をもう一段進めて、YCCを有名無実化するような政策変更の余地はある」という見方を示した。ただ、国内の物価見通しは2023年後半には前年比プラス2%を割れる水準に低下していくことが考えられ、また、米国債券利回り低下が予想される中、「円債利回りは0%台半ばで落ち着くのではないか」と分析した。また、日銀の金融政策がどのような変化を見せようとも、2023年は米FRBの利下げ転換期待の高まりで、円の対米ドル相場は円高方向に動くだろうと見通していた。(イメージ写真提供:123RF)
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