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2023/01/24 17:15
三井住友DSアセットマネジメントは1月24日、確定拠出年金(DC)向けのターゲットイヤーファンドの一部について信託報酬率を引き下げると発表した。同社では、DC向けのターゲットイヤーファンドは、4資産型(新興国を除く国内外の債券・株式)と8資産型(新興国を含む国内外の債券・株式と先進国のリート)の2つのシリーズがあるが、信託報酬率を引き下げるのは業界の主流になっている8資産型のターゲットイヤーファンド「三井住友DS・DCターゲットイヤーファンド」。新しい信託報酬率は目標年の決算日までの信託報酬率が0.242%(税抜き0.22%)になる。これによって同年限のターゲットイヤーファンドの信託報酬率で最低水準に並ぶ。DC市場においては、インデックスファンドをはじめ、制度対象ファンドの信託報酬率の引き下げが進んでいる。 ターゲットイヤーファンド(あるいは、ターゲットデートファンド:呼び方は異なるが同じ運用の仕組みを持っている)は、決められた目標年(ターゲットイヤー:退職年齢など)に向かって資産配分比率を自動的に変更していくバランスファンドのことで、内外の株式や債券などに幅広く分散投資し、目標年までの期間が長い間は株式やリート(不動産投信)、外国債券などのリスク資産を多く保有し、目標年が近づくに従ってリスク資産の保有比率を低下させる運用を行う。目標年に到達した段階でリスク資産をゼロとするタイプと、一定程度のリスク資産を保有するタイプがある。老後の資産形成をめざすDC制度においては、退職年齢が接近すると価格変動を抑えた保守的な運用に自動的になっているターゲットイヤーファンドは、DC運用にふさわしい商品と考えられ、米国の企業型DC制度(401k)では「適格デフォルト商品」にも認定され、DC加入者の多くが運用に活用している。 「三井住友DS・DCターゲットイヤーファンド」は、「2050」と「2060」においては、2023年1月現在は、国内株式25.4%、先進国株式(除く日本)23.3%、新興国株式11.6%、国内リート6.6%、先進国リート3.1%、国内債券13.4%、先進国債券(除く日本)9.2%、新興国債券5.4%、短期金融資産2.0%という比率で運用しているが、目標年が近づくにつれて徐々にリスク資産(株式、リート、外国債券)の配分比率を落として安定的な運用に切り替える。目標年に到達しても、30%超のリスク資産を保有し安定的な運用を行う。目標年は「2050年」と「2060年」の2つのコースがあったが、今回の信託報酬率の引き下げと同時に、新たに「2035年」、「2040年」、「2045年」、「2055年」、「2065年」のファンドを揃えた。5年刻みの目標年が揃ったことで、DC加入者が自身の退職年により近いファンドを選んで投資できるようになった。 DC制度では2018年7月24日に「事業主による運営管理機関の評価」が施行され、少なくとも5年ごとに運営管理機関が実施している運営管理業務について評価を行い、委託内容について検討し、必要に応じて委託内容の変更や運営管理機関の変更などを行うことが努力義務になった。この「適切な運営管理業務」という評価の1つに、「適切な商品を提供しているか」ということが問われ、たとえば、インデックスファンドであれば、他のインデックスファンドと比較して信託報酬率が高過ぎはしないかということが問われると考えられるようになった。そのため、DC制度に採用されているインデックスファンドの信託報酬率の引き下げが2019年ごろには活発に行われた。退職するまでの数十年間という長期間にわたって運用を続けるDCにおいて、コストは少しでも低い方が良い、すなわち、「適切な商品」と考えられるためだ。そして、ターゲットイヤーファンドについては、2022年3月に野村アセットマネジメントがDC向けのターゲットイヤーファンドとしては最も規模が大きい「マイターゲット」の信託報酬率を年0.242%(税抜き年0.22%)に引き下げた。 野村グループはDC市場において存在感の大きなグループだが、それに勝るとも劣らない三井住友グループでも主力といえるターゲットイヤーファンドを同じ水準の低コストに引き下げたことになる。既に、ニッセイグループは年0.242%のターゲットイヤーファンドを持っている。三菱UFJグループやみずほグループ、りそなグループ、三井住友信託グループ、大和証券グループ、東京海上グループ、SOMPOグループなど、DC市場の主戦場といえる企業型DCで企業との接点を多く持つグループは、遠からず対応を進めると考えられる。そして、DC市場では米国での経験がある外資系のフィデリティ、ブラックロック、アライアンス・バーンスタイン、また、ネット金融のSBI、楽天もターゲットイヤーファンドを提供している。各社の対応が注目されるところだ。 ターゲットイヤーファンドは、現在のところ最大規模のファンドでも純資産残高が200億円に届かない小さなファンドグループだ。ただ、つみたてNISAの普及によって、ファンドを使った資産形成が一般化することによって、企業型DCの分野でも自身のDC資産をより積極的に運用しようという動きが強まると考えられる。2022年3月末現在で企業型DCにおける元本確保型商品での運用比率は41.4%であり、リスクを取らない運用をしている加入者は少なくないが、元本確保型商品のみで運用している加入者は低下傾向にある。その際に、資産運用についてよく知らなくとも自動的にリスク水準を調整して運用を継続してくれるターゲットイヤーファンドは、今以上に活用されることが期待される。(グラフは、「三井住友DS・DCターゲットイヤーファンド2050」設定来の基準価額の推移)
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