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2023/01/26 17:51
日興アセットマネジメントは1月26日、メディアを対象としたオンラインによる勉強会「第50回 日興アセットマネジメント・プレスアカデミー」を開催し、同社チーフ・ストラテジストの神山直樹氏が「グローバル経済・市場の見通しと投資戦略」と題して講演した。同社では、国内外の運用拠点の調査責任者が会合するグローバル投資委員会を四半期毎に開催し、ハウスビューをアップデートしている。最新の見通しについて神山氏が解説し、「メインシナリオとして米国の景気減速は、イメージとしてプラスマイナスゼロ成長のような軽微な後退にとどまり、米FRBは年内にも利下げに政策転換することが予想される。2023年は債券よりも株式に収益期待が高い1年になりそうだ」と語った。 神山氏は、現在の米国の雇用状況は非常に強い状態を維持しており、「2021年末にFRBのパウエル議長が『これ以上の雇用は必要ない』と言った水準から400万人程度も多い状態になっている。雇用者数が100万人程度減少しても米国経済には大きな影響はないといえる。強い状態が続いている小売売上高の水準にも言えることで、利上げによって押し下げ効果があるとしても、米国が景気後退になることはないと考えられる。実際に、2022年の1−6月は2四半期連続でGDPがマイナス成長したものの、強い雇用があるため米国は景気後退とは言わなかった。それと同じような状況が考えられる」と語った。そして、米国はいわゆる「ソフトランディング」で景気や金利の調整を行える見通しにあり、「株式や債券市場にとって米国景気は重要な変動要素にはならないだろう」という立場を示した。 そして、このように米国の経済が横ばい圏で推移すると、米国の輸入額も横ばいに推移することが考えられ、これが日本経済にとってはポジティブな影響をもたらすと語った。現在、米国の輸入額は2021年の年末のピークから、やや低下した水準にあるが、米国の輸入額が現在の水準であっても日本の実質輸出(数量効果)は、リーマンショック前の高い水準を上回る水準をキープしている。この実質輸出の高い水準は1年以上にわたって続いているが、この推移について神山氏は、「日本経済は様々な余剰を抱えたことで成長のない状態が続いてきたが、輸出の数量が非常に高い水準で継続していることによって、人や設備が『不足』する状態に転じてきている。現在、コロナ対策の進展で内需が復調し人材確保に苦労する事態になっている。外需に加えて内需でも『不足』が上乗せされることで、日本経済のデフレ脱却がいよいよ実現される大きな転換期を迎えている」と解説した。 さらに、アメリカの金融政策を読み解くポイントとして米国の賃金上昇率の推移に注目したいとした。「米国ではインフレリスクへの懸念は後退した。ロシアのウクライナ侵攻などによって原油価格等が高騰し、個人消費に大きな影響が出かねないということで急速な利上げを実施してインフレを抑えることをめざしたが、利上げ効果もあってインフレの水準は落ち着いてきている。現在、FRBが利上げ姿勢を変えないのは、インフレ再燃懸念があるためだ。インフレが再燃するとすれば、賃金の上昇による消費拡大が引き金になると考えられる。ただ、賃金上昇率は前年比5%超で上昇していたものが、4.7%程度に低下してきた。今後、再び上昇率が向上することは考えにくく、徐々に前年比3%程度の上昇率に収まると考えられる。既にモノの価格の上昇は抑えられ、ここに加えて賃金上昇率の落ち着きが確認されれば、米国が一段と利上げを実施する必要がなく、むしろ、今年9月以降に0.25%程度の利下げに転換することになると予想している」という。 一方、日本については、直近のインフレ傾向について「貯蓄を取り崩していることによるインフレといえる。現在、賃上げ交渉が進んでいるが、賃上げによるインフレに転換できるかどうかの分かれ目にある。金融市場は30年国債利回りが1.5%を超えて上がっているように、インフレが定着し、かつ、経済成長も進むという良い方向に向かっていることを先取りする動きにある。春闘の結果、どの程度の賃上げが実行されるかが注目される」とした。そして、日銀の金融政策としては、イールドカーブコントロールについて10年国債利回りの上限を0,75%に引き上げる、または、管理する国債の期間を10年国債から5年〜7年程度のより短い期間にシフトするなどの政策変更があるとの見方を示した。ただ、「2〜3年後のインフレ率が2%を超えるとは予想しておらず、日銀は利上げを急いではいないだろう。賃上げが維持可能か、内需の正常化が順調に進むのか、人手不足の状態がどれほど深刻かなどを見極めながら、次のステップを考えるのではないか」と語った。 このような日米の経済状況や金融政策の変化に対する見通しに基づいて、「今年は債券よりも株式の期待リターンが高いことが予想される」とした。たとえば、日経平均株価は、現在の2万7000円台前半の水準が年末には2万9000円程度。米国のNYダウは現在の3万3000ドル程度が3万6000ドルなど、総じて世界の株式市場は年末に向けて上昇基調にあると見通した。また、米国が年内に利下げに転じる一方で、日本の長期金利が上昇する(10年債で現在の0.42%が年末は0.75%)見通しにあるため、為替は年末には1ドル=122円程度の円高の水準に進むと予測している。(イメージ写真提供:123RF)
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