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2023/02/06 17:03
つみたてNISAの対象ファンドとして2月2日に「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」および「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族・為替ヘッジ型」が新たに加わった。これによって、つみたてNISA対象ファンド数は、指定インデックス投資信託が187本、「指定インデックス投信以外の投資信託(アクティブ運用投信等)が26本、そして、上場投資信託(ETF)7本の合計220本になった。つみたてNISAの対象ファンドは、2024年から始まる新しいNISAにおいて、「つみたて投資枠」(年間120万円)で投資できるファンドのリストにもなる。選定されるには、販売手数料がゼロ(ノーロード)で一定水準以下の信託報酬率など条件があり、特に、アクティブファンドなどを含む「指定インデックス投信以外の投資信託」についての条件が厳しく、なかなか採用銘柄の拡充が進んでいない。新しいNISA制度の利用を促進する上で、この「指定インデックス投信以外の投資信託」の拡充が期待される。 指定の株式インデックスに連動するインデックスファンド以外の投資信託としてつみたてNISA対象銘柄になるには、ノーロード、かつ、信託報酬率が国内ファンドでは年1.0%(税抜き)以下(海外ファンドでは年1.5%以下)という手数料水準の基準をクリアし、それに加えて、純資産残高が50億円以上、さらに、信託開始後5年以上、かつ、信託期間中の3分の2以上で資金流入超という厳しい条件をクリアする必要がある。手数料水準は運用会社の意志で引き下げることができるが、信託期間が5年以上、かつ、信託期間中の3分の2以上で資金流入超という条件をクリアすることは非常に難しい。信託期間中の3分の2以上で資金流入超という条件を満たすためには、つみたてNISAの対象ファンドになる以前から、積立投資の対象ファンドとして認知され、継続的な資金流入があることが条件になる。 したがって、指定の株価指数以外の株価指数に連動するインデックスファンドや確定拠出年金(DC)で採用されているファンドが多く採用されている。指定インデックス以外の株価指数としては米国の「NYダウ」があり、それに連動するインデックスファンドは、3本がつみたてNISAの対象商品になっている(「たわらノーロード NYダウ」「iFree NYダウ・インデックス」「eMAXIS NYダウインデックス」)。その他の代表的な株価指数としては、米国の「NASDAQ100」や香港の「ハンセン指数」、インドの「SENSEX」など国別インデックスがある。海外株式市場では指定インデックスには国別指数として「S&P500」しか採用されていないため、今後、条件を満たせば、国別インデックスファンドが増えていく可能性はある。 また、DCファンドとしては「大和住銀DC国内株式ファンド」、「年金積立 Jグロース」、「キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)」などが対象ファンドになっている。DC制度も積立投資が基本なので、資金流入が継続しやすいという特徴がある。DC専用ファンドではなくとも、DC制度に採用される頻度が高い「フィデリティ・欧州株・ファンド」、「フィデリティ・米国優良株・ファンド」、「ハッピーエイジング20/30/40」、「世界経済インデックスファンド」などもDCを通じた資金流入が「信託期間の3分の2以上で資金流入超」という条件を満たすために効果があったと考えられる。 そして、今回新たに採用された「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」などの従来の株価指数にプラスαの付加価値を乗せた新しいインデックスに連動するファンド群も今後拡充されることが期待できる。「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」は、米国「S&P500」指数に採用されている銘柄の中から、25年以上連続で増配している企業のみを投資対象とした「S&P500配当貴族指数」に連動した運用を行うファンドだ。「S&P500」がGAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)やテスラ、インテルなど大手ハイテク企業が代表銘柄になるが、「配当貴族指数」では、コカ・コーラや3M、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マクドナルドなど日常生活に密着した業績に安定感のある優良企業が中心になる。当然、組み入れ銘柄の中核が変わるため、株価指数の動きも異なる。 つみたてNISAの指定インデックスは、日本株式の「TOPIX(東証株価指数)」や、全世界株式の「MSCI ACWI Index」に代表されるような時価総額を基準とした代表的なインデックスになっている。株式インデックスの中には、大型・小型など上場銘柄の規模に着目し、大型株だけ、中小型株だけを投資対象とした株価指数もあれば、成長株だけを対象にした「グロース株指数」や割安株だけを対象にした「バリュー株指数」など、様々な切り口の株価指数がある。国別インデックスに加えて、投資対象銘柄の「属性」に着目したインデックスファンドも今後、つみたてNISA対象ファンドに加わってくる可能性がある。 新しいNISAでは、現在のつみたてNISAが20代、30代と若い世代に支えられているように、若い世代の長期の資産形成手段として「つみたて投資枠」を活用した積立投資が中心となって普及していくと期待されている。「積立投資であれば、全世界株式に投資する『MSCI ACWI Index』があれば十分。あれこれと多くの商品があって目移りしない方が望ましい」という考え方もできるが、やはり、多くの人々の参加を呼び込むには、一定程度は魅力的な商品の品ぞろえが必要なのではないだろうか。今回採用された「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」は、設定から、ちょうど5年が経過したところだが、設定来で月次の資金流入がマイナスになった月は過去60月のうちわずか13月しかない。しかも、昨年4月以降22年12月まで21月連続で資金流入となり、22年の資金流入額は月次で20億円を超える流入が4月もあった。時価総額ベースの株価指数が下落した22年以降に特に人気化したファンドだ。 「S&P500」インデックスファンドが22年はマイナス6.09%と下落したことを横目に、「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」は8.29%のプラスリターンになっている。このような現状のインデックスファンドとは異なる性格を持ったファンド群がつみたてNISA対象ファンドとして、どんどん追加されることを期待したい。(グラフは、「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」の過去1年間のパフォーマンス推移)
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