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2023/02/16 17:18
フィデリティ・インターナショナルは2月15日、アジアのメディア向けに2023年のESG投資を展望するオンライン説明会を開催した。サステナブル投資戦略の責任者であるガブリエル・ウィルソン_オットー氏がESG関連の規制の現状について語り、香港を拠点に調査活動を行っているサステナブル投資のディレクターであるエリー・タン氏が「ダブル・マテリアリティ」や「アクティブ・スチュワードシップ」について、そして、同じくディレクターのポール・ミルトン氏が「自然資本」について語った。フィデリティはサステナブル投資にコミットし、2030年までに企業レベルでネット・ゼロを達成、2050年までに運用資産におけるネット・ゼロを実現するという目標を持っている。そして、2023年を迎えた今、サステナブル投資について「Getting Real」(現実になる)と考えており、2023年が重要な1年になるという捉え方をしている。 オットー氏は、ここ数年にわたってESG関連の新たな規制が次々と発表、施行され、それは、アジアを含む世界各地に及んでいることにふれ、それは、「世界の運用資金がESG投資やサステナブル投資に大きく流れ込んでおり、規制当局がこの分野に強い関心を持っているため」と解説した。そして、アジアにおける規制は欧米に対して遅れていると見られがちだが、「情報開示については、アジア企業はむしろ欧米企業よりも積極的に取り組んでいる。ESG投資の投資環境については、各地域の当局の規制に加えて、それぞれの地域において、企業がどれほど自主的に規制対応等に努めているかということも重要になる」とした。 その上で、「グリーンウォッシュが問題視されたが、ESG関連の規制や情報開示などは、現在のところ各国でバラバラになっている。規制の細かな基準は、それぞれの地域の文化にも関係しており、全ての国を横断するような基準を設けることは、非常に困難といえる。それでも、共通のフレームワーク、データの標準化、データへのアクセス向上については各地域で統一化する努力が続いている。特に、データの標準化については、取り急ぎ実現する課題として意識され、急速な整備が期待できる」(オットー氏)とした。 また、重要なことは、「投資家がこのデータをどう利用・解釈して価値ある企業分析やエンゲージメントにつなげ、現実の世界でアウトカム(成果)を生み出すかということ」と述べていた。実際に、ESGファンドのパフォーマンスについて比較優位なパフォーマンスが得られていないのではないかという声も一部にはあるが、オットー氏は「ESGの要素を正しく分析し、公正な視点で比較して優れた企業でポートフォリオを作れば、十分に有効な投資基準になり得ることがわかっている」と語っていた。そして、「フィデリティは、アクティブ・スチュワードシップ、自然資本、公正な移行(ジャスト・トランジション)を優先したサステナブル投資の商品を拡充させており、これは、長期的な価値創造をクライアントに提供するだけでなく、低炭素でより包括的な経済への移行を加速させると考えている」とした。 タン氏は、ESGのリスクと投資機会をより全体的に捉えるため、「ダブル・マテリアリティ」が重要になっていると指摘した。「ダブル・マテリアリティとは、社会と企業の双方の観点からESGの評価を行う考え方。企業は、社会や環境が企業に及ぼす財務的リスクを管理するだけでなく、その企業のビジネスが人々や地球に与える影響についても責任を負うことを認識する必要がある」と語っている。そして、企業との対話を進める上では「アクティブ・スチュワードシップ」を重視しているとした。アクティブマネジャーは、長期的に投資先企業がレジリエント(強じん)に、そして、持続可能に成長できるよう、危機やマーケットの変化に対応するための取り組みを支援する役割を担っているが、「企業とのエンゲージメントが深くなり、共同して温暖化ガス排出目標の実現に向けた取り組みを行うなど、具体的な成果が出るようになってきた」と語った。 そして、ミロン氏は「気候変動と生物多様性は密接に関連している。ネット・ゼロを実現するには自然資本を保全し、また、生物多様性への負荷を軽減するために気候変動に対応しなければならない。世界のGDPの半分以上が自然とその関連サービスに依存している。自然生態系の保全と修復のコストに関し、企業は自然資本損失の代償を理解し、そのリスクを軽減することに取り組むことは重要だ」と語っていた。(イメージ写真提供:123RF)
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