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2023/02/22 17:30
三菱UFJ国際投信が設定・運用する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産残高が9000億円を超え順調に拡大している。2023年1月の月間純資金流入額は400億円を超えており、このままの状況が続けば、2〜3カ月後には純資産残高が1兆円の大台に届きそうだ。三菱UFJ国際投信のノーロード型・低コストのインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」では、既に、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」が純資産残高1兆8274億円と公募投信(ETF除く)で最大規模のファンドになっているが、それに続くシリーズ2本目の1兆円大台乗せになる。過去1年間(23年1月末現在)のトータルリターンは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の3.85%に対し、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は5.01%と上回っている。「オール・カントリー」人気は、残高1兆円乗せから加速しそうだ。 「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は、全世界株式の指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」に連動する運用成績をめざすファンドだ。米国株式の代表的な指数である「S&P500」や先進国株式の指数「MSCIワールド」と異なり、新興国株式を投資対象に加えていることが最大の特徴だ。ただ、指数の構成は時価総額を基準としているため、相対的に時価総額が大きな先進国、中でも、米国株式の構成比率が高くなっている。 たとえば、2023年1月末時点での「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の組み入れ銘柄数は2830銘柄であり、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の503銘柄の5.6倍になっているが、組み入れ上位10銘柄の顔ぶれは、第4位までが「アップル」、「マイクロソフト」、「アマゾン」、「アルファベット」で変わらない。米国のハイテク大手企業は世界を代表する大企業であり、これら企業が「S&P500」でも「オール・カントリー」でも指数の中心になる。ただ、「S&P500」が米国上場企業100%で構成されていることに対し、「オール・カントリー」に占める米国比率は58%であり、40%余りを米国以外の企業が占める。たとえば、上位10銘柄の中にも第9位に台湾企業の「台湾セミコンダクター(TSMC)」が入っている。この組み入れ銘柄の違いが、「S&P500」と「オール・カントリー」が連動をめざす指数のパフォーマンスの違いになっている。 「MSCI ACWI」と「S&P500」について、1988年1月以来約35年間の推移を振り返ると、概ね重なり合うような動きになり、それぞれ1988年を100とすると現在は1600程度で約16倍になっている。市場環境によって「MSCI ACWI」が優位な時と「S&P500」が優位な時がある。「MSCI ACWI」が目立って優位だった期間は、1988年1月〜1990年2月、1993年12月〜1994年12月、2015年1月〜2017年11月、2018年12月〜2020年4月、そして、2022年4月以降だ。それ以外の期間では、概ね「S&P500」のパフォーマンスが優位になっている。特に、「コロナ・ショック」で大きく下落した2020年3月を起点として2021年12月までの上昇相場では、「S&P500」が目立って大きく上昇したため、2020年以降につみたてNISA等を使って積立投資を開始した人は、多くが「S&P500」の値上がり率の大きさに魅了されて積立対象に選択したものと考えられる。 ただ、2022年になって市場の流れは「オール・カントリー」に傾いている。2022年の急速な利上げによって、米国の成長企業の高過ぎる水準になってしまったバリュエーション(株価評価)があぶり出され、米国株価の上昇の力が弱くなってしまった。さらに、米国ではインフレ抑制に過度に神経質になった行き過ぎた利上げによって、景気の腰が折れたのではないかという懸念すらある。米国が不景気になってしまうと、株価の回復にも時間がかかることになる。それと比較すると、中間層の拡大で国内消費が好調なインドや、過度なコロナ対策によって国内流通を厳重に制限してきた中国の経済再開など、新興国市場には明るい兆しがある。過去1年間のパフォーマンスで「オール・カントリー」が「S&P500」を上回った傾向は、まだ続く可能性がある。今後、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の残高が、どこまで伸びるか注目していきたい。(グラフは、「S&P500」と「オール・カントリー」の過去3年間のパフォーマンス推移)
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