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2023/03/03 19:03
アムンディ・ジャパンは3月2日、アムンディ・アセット・マネジメントの株式運用部門CIOのカスパー・エルムグリーン氏(写真:左)の来日に合わせて、同社が考えるグローバル株式市場の見通しを説明するメディア勉強会を開催した。勉強会にはアムンディ・ジャパンの株式運用部長である石原宏美氏(写真:右)も参加し、国内調査で着目している日本株式市場の変化についてコメントした。エルムグリーン氏は、「基本姿勢として株式投資には慎重な姿勢ではあるが、様々な投資アイデアが幅広く存在していることも事実だ。優先順位を見極めながら魅力を増すバリュー株式を軸にした選別投資を進めている」と現状の投資戦略について語った。 エルムグリーン氏が強調したのは、「インフレは粘着性があり、簡単にはコントロールできない」ということだ。したがって、「中央銀行の仕事(金融引締めなど)は未だ道半ばであり、金融政策が流動的な状態にある。このため、金融市場の環境が動き過ぎるため、投資家は先行きを予測することが難しくなっている」とした。そのため、アムンディもテールリスクに備えた運用体制を敷き、株式などリスク資産をアンダーウエイトにする慎重な姿勢で運用にあたっているという。 その中にあって、「構造変化(レジーム・シフト)」といえるような大きな変化が起きていると指摘した。その1つは、「グローバル化の終焉」だ。世界を1つの市場に見立てて、最適地で生産してグローバルなサプライチェーンを確立するというグローバル化の動きは、「コロナ・パンデミックの前にピークを迎えていたと考えられるが、コロナ禍とロシアのウクライナへの侵攻によって明確に転換した。各国の製造業は製造拠点を自国に戻すことを重視し、脱グローバル化の動きを明確にしている。この動きは止められないと考えられる」とした。その結果、製造コストなどは従来よりも高くなり、これが、インフレを加速させる役割にもなる。 さらに、再生可能エネルギーの移行の問題がある。「従来は、エネルギー問題は地球環境の問題として議論されてきたが、ロシアのウクライナ侵攻によって安全保障上の問題という切迫した問題になった。欧州は、天然ガスを人質に取られるようなことは受け入れられない。これによって、グリーン・トランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)は加速され、このこともコスト増につながっていく」と見通す。 また、「世界的に貧富の格差が広がり、もはや許容できない水準にまで拡大してしまっている。このため、何等かの経済ショックが起こった時に、従来は金融政策の変更でショックに対応しようとしていたが、現在では財政政策を同時に実施することが当たり前になった。コロナ禍にあっても、各国で失業対策や家賃の補助などで多額の財政支出が行われている。世界的にポピュリズムが台頭し、財政出動を伴う政策の実行に抵抗がなくなっている。この財源は税金だ。法人税や富裕層向けの課税強化など、社会コストが増大することになる。これもインフレを助長する要因だ」(エルムグリーン氏)とした。 このように、インフレが継続する背景が強化され、これによって金利も高止まりする状態が続くと考えられる。そこで、エルムグリーン氏は、「このような構造変化が起こっていることによって、これまでの勝者であったグロース株式やテクノロジー株式が、今後も勝者であり続けるとは限らない」と語った。「これまで投資対象として考慮されることがなかった銀行やインダストリアル(資本財)などのバリュー株式に活躍の期待がある」とした。銀行はリーマンショック以降に強化された規制に対する対応が進み、かつ、金利水準が上昇したことによって利益率の改善が見通せる。インダストリアルについては、エネルギー移行や自動化、生産拠点の変更などによってビジネスチャンスに恵まれている。その点では、「グロース株式が優位な米国よりも、バリュー株式の比率が高い欧州株式に投資妙味が高まっている」とする。 このように株式投資では米国一辺倒だったような市場から、欧州や新興国を含めた幅広い市場に投資対象が広がっていく中で、日本株式についてもポジティブな評価をしているとした。エルムグリーン氏は、日本拠点の株式運用部長である石原氏がレポートした「東証のPBR1倍以下の企業に対する改善要請」について、グローバル株式運用チームが非常に強い関心を持ったと紹介した。石原氏は、「グローバルな投資戦略では株式はアンダーウエイトにし、欧州株式と新興国株式をポジティブ、米国と日本はニュートラルという位置づけであるため、決して日本株式に強気ということではない。ただ、東証がPBR1倍割れの企業に対して行ったアクションは、今後の日本株式に対する評価を大きく変えるきっかけになるかもしれない。日本株式全体をポジティブに捉えられなくても、魅力的なバリュー株式に選別投資することは可能だ」と語った。
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