前のページに戻る
2023/03/20 09:30
日興アセットマネジメントは3月17日、東京・六本木のミッドタウン・ホールにおいて、主に投信販売会社の商品企画等の担当者を対象に、2024年からスタートする新NISAに関する商品戦略に関する提案等を行なうセミナー「新NISA戦略アカデミー」を開催した。会場には100社以上の販売会社から160人を超える担当者が集まり、同社からの多方面にわたる提案に熱心に耳を傾けた他、来場できなかった一部の担当者はオンラインでも視聴した。同セミナーの冒頭で講演した同社リテール事業本部長の安永哲次氏(写真)は、「新NISAへの対応は、販売会社によって異なる営業戦略が様々に想定される。今回の提案は、考え得る仮説を設けて当社なりの提案をさせていただくが、その内容をきっかけに、個々の販売会社の皆様と議論を深めていきたい」と語った。 セミナーで取り上げられたテーマは、「窓販ビジネスの観点から見た新NISAの論点」、「対面での『つみたて枠』をどう考える?」、「対面での『成長投資枠』をどう考える?」、「『ネットの世界』で起こりうることと当社方針」、「日興アセットとしてのサポート方針」と、新NISAに対応するために、販売会社が考慮しなければならないことの全般にわたった。その上で、新NISAへの適合をめざす同社の商品ラインナップの候補を紹介した。投資収益の非課税枠の総額が1人あたり1800万円、夫婦では3600万円という大きな金額となり、今後の投資商品ビジネスにとって新NISAが中心となる期待が非常に強い。その主戦場に対して、いち早く自社の商品戦略を紹介する野心的なセミナーになった。 新NISAの施行を前にして販売会社が第一に考えているのは、「つみたてNISA同様に、新NISAにおいても『ノーロード、かつ、低コストのインデックスファンド』しか購入されないような事態にならないか?」という疑問だろう。そうなってしまうと、新NISAの仕組みから対象商品の内容まで窓口で約1時間をかけて説明して成約に至ったとしても、販売会社が得る手数料は1年で販売金額の0.034%程度になってしまう。100万円の契約になったとしても年間で得られる手数料は僅か340円だ。繰り返し研修を行って窓口に配置した販売員の1時間あたりの収入が340円では、窓口を維持していくことは困難だろう。窓口販売において、「どのようなサービスや商品の提供を行うことで一定水準以上の手数料を得ても、お客様に納得してもらえるか?」ということは、どの販売会社も頭を悩ましている問題だと想像できる。 日興アセットは、新NISAの「つみたて投資枠」、「成長投資枠」、そして、NISA以外の「特定口座枠」という3つの領域において、窓口販売を軸としながら、オンライン販売でも他社に負けないような品揃えに資する商品を提案していた。たとえば、「つみたて投資枠」でオンラインチャネルでの取り扱いを意識して「Tracers」シリーズの拡充に加え、「信託報酬率年0.09%台を大幅に下回る圧倒的な低コストのインデックスファンドを戦略的に投入する」という案も披露した。 また、主軸である窓口販売の対象商品としては、「つみたて投資枠」向けにパッシブ型で信託報酬が年0.5%程度のバランスファンド、または、信託報酬率で年1%程度が期待できるアクティブファンドで同社の「年金積立Jグロース」のような「つみたて投資枠」に適合したファンドの拡充を提案した。そして、「成長投資枠」向けとしては、既存ファンドで毎月分配型の人気ファンドに「隔月分配型」の新コースを設定する案の他、信託期限の無期限化などの約款変更によって新NISAの制度に対応した商品を揃えるとした。加えて、窓口販売で残高を伸ばしているラップ型のバランスファンドを新NISA制度に対応させて新設することも提案していた。 日本のNISAが参照した英国ISAは、当初は期間限定の非課税制度だったが、2008年に恒久化され、それから13年間で残高が2214億ポンドから6863億ポンドに3倍になった。日本のNISAも2024年から恒久化されることによって、英ISA並みに利用が急拡大する可能性がある。「つみたてNISA等の取り扱いにおいて他社に出遅れたと考えておられる販売会社でも、これからの取り組みによって十分勝機がある」(国内営業企画部共同部長の汐見拓哉氏)という。さらに、新NISAは非課税限度額が大幅に拡充された上で恒久化されるため、口座開設の金融機関の移動が少ないことが考えられる。2024年以降に開設された新NISA口座が生涯口座として活用される可能性が高いといえるのだ。それだけに、出遅れると致命傷になりかねず、新NISAの口座獲得を優位にすすめるために、「今から、既存NISA(つみたてNISAや一般NISA)の口座開設を呼びかけることに大きな意味がある」(汐見氏)とした。 もっとも、既存のNISA口座にしても、一般NISAの年間枠120万円の消化状況は、2021年度枠で1247万口座、約14兆9700億円の枠があるにもかかわらず、実際に利用されているのは約3兆3270億円と全体の22%に過ぎない。これは、今に始まったわけではなく、制度発足以来同じような使い残しが生じている。せっかく非課税枠が拡大されても使われなければ価値がない。その点では、「制度の浸透」と同時に、「投資への理解」、そして、「投資家の成功体験」を重ねることが重要になる。窓口販売の成功は、このような新NISAの有効活用について投資家である顧客に継続的なアドバイスが可能だという点だろう。窓口販売の拡大は、新NISAの普及にとって重要な意味がある。日興アセットでは、これらの制度普及に貢献するため、新NISAに対応した商品の供給のみならず、新NISAの制度内容や活用提案についてわかりやすく説明するためのツールや研修を用意して販売会社のサポートに努めると語っていた。
ファンドニュース一覧はこちら>>