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2023/04/13 16:54
投資信託(ファンド)を選ぶ際に、「徹底的にコストにこだわり、ノーロード(購入時手数料がゼロ)、かつ、信託報酬率が年0.1%台の投資信託しか購入しない」ということにこだわる投資家は少なくない。いわく、「投資信託の将来のパフォーマンスは事前に予測できないが、コストは安いものを選ぶことができる」、「信託報酬は保有期間ずっとかかってくるコストなので、たとえ年0.3%の違いでも10年、20年の運用になると目に見えるパフォーマンスの差になってくる」など、もっともな理由がある。ただ、年0.1%台など極端に低い信託報酬の投資信託は、一部の「インデックスファンド」に限定される。株式ファンドであれば、大型株を投資対象とし、投資する地域を「国内」、「先進国」、「新興国」、「全世界」など地域分けするくらいの違いでしかない。「コスト」への縛りを外すと、投資対象は大きく広がる。インデックスを大きく上回るパフォーマンスを残すファンドも少なくない。 2023年3月末時点で、国内株式を投資対象とした全ファンド(純資産10億円以上、DC・SMA専用ファンド除く)を運用期間10年で運用成績の優れた順にランキングすると、上位20ファンドのうち「大型株」を投資対象にしたファンドは4ファンドしかない。ランキングの大半は「小型グロース(成長株)」に分類されるファンドだ。国内株式の主要インデックスは、「TOPIX(東証株価指数)」、「日経平均株価(日経225)」、「JPX日経400」の3つで、3つとも大型株を対象としたインデックスになっているため、低コストのインデックスファンドだけを投資対象として考えている投資家には、成績上位の「小型グロース」に属するファンドを選ぶことができない。「TOPIX」に連動するインデックスファンドの10年(年率)トータルリターンが概ね8.5%、「日経225」が同10%程度となる中で、最も高いリターンは「DIAM 新興市場日本株ファンド」の23.60%、次いで「マネックス・日本成長株ファンド」の17.71%など、ランキング20位以上のファンドは13%を超える成績を残している。 ファンドのパフォーマンスは、「信託報酬控除後」の成績なので、たとえば、「DIAM 新興市場日本株ファンド」の場合は、年1.67%の信託報酬を負担した上で、「日経225」インデックスファンドの2倍以上の運用成績を残していることになる。足元の0.1%の信託報酬率に注目するあまり、年10%以上のパフォーマンスの違いに目をつぶることになってしまう。もちろん、資産運用において、「常にパフォーマンスでトップの銘柄を選んで投資する」というような姿勢は必要ない。自身の投資目的やリスク許容度に応じて、投資対象を選択すればよい。 たとえば、「日経225」のインデックスファンドである「三井住友・日経225オープン」を10年間にわたって毎月1万円をつみたて投資していた場合、投資元本120万円に対し、2023年3月末時点のつみたて投資評価額は約184万円になっている。20年間のつみたて投資なら、元本240万円が約563万円になっている計算だ。20歳の時に「将来のマンション購入の頭金にしたい」と毎月1万円のつみたて投資をしていたら、40歳になる頃には、それなりのマンションの購入が検討できるだけの資産がつくれたことになる。もっとも、「DIAM 新興市場日本株ファンド」を選んでつみたて投資していた場合は、期間15年間で投資元本180万円が約1413万円の評価額になっているので、30歳代でマンション購入の契約ができたかもしれない。それが毎月1万円の投資で実現できたとすれば、資産運用を始めた意義があるというものだろう。 国内の中小型株を運用対象にしたファンドの中で、「りそな 日本中小型株式ファンド『愛称:ニホンノミライ』」のパフォーマンスが好調だ。2018年9月の設定で、運用が5年目を迎えているファンドだが、23年3月末時点の1年トータルリターンは26.24%で「国内中型ブレンド」に分類されるファンドの中でトップ。3年(年率)トータルリターンも28.80%と同分類で第2位にランクされる成績をあげている。同じ期間で、「日経平均株価(指数)」は1年で0.79%、3年(年率)は14.02%というトータルリターンでしかない。また、全世界株式の代表的な株価指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円ベース)」は1年でマイナス0.90%、3年(年率)23.38%であるため、「全世界株式」よりも過去3年間のパフォーマンスで上回る成績になっている。 2024年から始まる「新NISA」では、「つみたて投資枠」(年間上限120万円)と「成長投資枠」(同240万円)という2つの投資枠を同時に利用することができる。このうち、「つみたて投資枠」については、投資対象が「つみたてNISAの対象ファンド」と限られていることもあってノーロード・低コストのインデックスファンドでコツコツつみたて投資をするということが主流になりそうだが、「成長投資枠」は、より広い範囲から投資対象を選ぶことができる。運用コストへのこだわりを一旦は外して、幅広いファンドの中から、各ファンドの投資方針や過去のパフォーマンスなどを調べて投資対象を検討してみてはどうだろう。(グラフは、「ニホンノミライ」と代表的な株式インデックスの過去3年間の推移)
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