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2023/04/20 18:12
干ばつや洪水など、水を巡るトラブルで住居を失ったり、食べることに困るような事態に世界で数十億人の人々が苦しむようになるという予測がある。SDGs(持続可能な開発目標)の1つに「安全な水とトイレを世界中に」という目標が設定されるほどに、「水問題」は国際的な課題だが、複雑な利害関係が絡みやすい問題でもあり、問題の解決のためには、今後も長期にわたる投資が必要になるといわれている。一方で、水問題の解決を目指して、世界的にインフラ投資が拡大し、脱塩プラント(海水から真水を作る工場)の開発など技術開発も活発化している。アムンディ・ジャパンは4月20日、「天然資源をめぐるメガトレンドと水資源投資戦略」をテーマに「アムンディ運用戦略ウェビナー」を開催し、インベストメント・ソリューション部ファンド・インベストメント・マネジャーの清水英佑氏が「水資源の関連事業は、今後、中長期的な成長が可能と考えられ、有効な投資機会になる」と語った。 清水氏は、記録に残っている事例でも約5000年前から「水」を巡る紛争が起こり、近年に至っても未だ「水不足」が地球規模の課題になっていると、「水問題」の大きさを語った。「水の惑星」と地球が呼ばれることもあるように、水資源に恵まれているように感じられるが、実は、人類が容易に利用可能な淡水資源は全水資源の0.01%に過ぎない。現在の水使用量は人口増ペースを上回る年率1%増というペースで水の需要が高まり続けているため、生活用水や農業用水について供給を拡大する対策を怠れば、世界的な「水不足」は、今後、深刻度を増していくと考えられるとした。ただ、水の供給のためのコストについては適正な金額を負担しようという考えになりにくく、「コストに見合った費用を受益者が負担する『フルコストリカバリー』の考えが社会に定着することが水問題の解消には不可欠」(清水氏)と語っていた。 世界の水ビジネス市場は、経済産業省がまとめた資料によると、2020年時点で約70.1兆円規模から、2025年に84.4兆円、2030年には112.5兆円に拡大する見通しとなっている。年平均5%弱の成長が期待される市場といえる。2019年時点での水ビジネスの事業分野別シェアは、「上水」が34.0%、「下水」が39.6%、「産業用水・その他」が25.2%、「海水淡水化」が1.2%という比率だった。2030年にかけては、4区分の中では「下水」が最も大きく伸びる見通しになっている。清水氏は、「2015年から2030年までに、世界で必要な水資源関連インフラ投資額は累計で13.7兆米ドルと、英国のGDPの4.5倍以上に相当する大きな金額に達すると見られており、水関連ビジネスの成長が期待できる」という。 アムンディ・グループにはアイルランドのダブリンに本社を置く「KBIグローバル・インベスターズ」という天然資源に特化した責任投資(SRI)の運用会社がある。設立は1980年で、設立当初からSRI戦略を提供し、水資源および持続可能エネルギー株式戦略は2000年から運用を開始している。2016年9月にアムンディが過半数の株主になり、グループ入りしている。現在、英国、ヨーロッパ、北米、アジアの主に機関投資家の資金を運用し、運用総額は159億ドル(約2.1兆円)になっている。投資対象が主として天然資源関連というユニークな資産であるため、運用残高の規模は大きくないが、長期間のトラックレコードに裏付けされた責任投資戦略が支持を集め、過去10年間に運用資産が大幅に増加している。 KBIグローバル・インベスターズが運用している代表的な水資源株式戦略のパフォーマンスは、2000年12月末を100とすると2022年12月末に594となり、この期間の全世界株式指数(MSCI AC World Index)は318だった。安定して全世界株式指数を上回るパフォーマンスを重ねていることが評価されている。この運用戦略では、水資源分野の売上が50%超、または、水資源分野が売上の10%超かつ世界的リーディング企業であることを条件に投資ユニバースをつくっている。そこから、ポートフォリオ・マネジャーがファンダメンタルズを分析し、「経営陣」、「エンドマーケット」、「環境および社会」、「ガバナンス」といったESG要素も評価した上で、具体的な投資銘柄を選定している。 現在、公募投信として設定・運用されているファンドでは、「アムンディ 環境・気候変動対策ファンド(愛称:グリーン・ワールド)」の組み入れファンドの1つに「KBIウォーター・ファンド」が組み入れられている。公募投信としては「水資源」に特化した株式ファンドはないが、機関投資家向けにはKBIグローバル・インベスターズが運用する水資源関連株式ファンドの提供も可能になっている。清水氏は、「水資源関連株式ファンドのパフォーマンス上の特徴の1つは、中小型株への投資比率が高いことだ。『MSCI ACWI』など時価総額が大きな大型株でポートフォリオを構築している投資家には、水資源関連株式ファンドによって中小型株への分散投資効果も期待できる。これまでの高い運用実績に加えて、これからの成長期待も大きい水資源関連株式ファンドに注目していただきたい」と語っていた。(グラフは、「水資源」にも投資する『グリーン・ワールド』の過去1年間のパフォーマンス推移)
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