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2023/05/09 17:54
米連邦準備制度理事会(FRB)は5月2〜3日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、5.0〜5.25%にすることを決定した。米政策金利の上限が5.25%になるのは2006年6月以来約17年ぶりのことだ。それ以前の金利水準は、「ITバブル」といわれた2000年5月に6.5%、レーガノミクスで米経済が過熱した1984年には11.50%という高い水準も記録しているが、2000年以降の金利水準としては、上限に近い水準に達したといえる。この高い水準になった金利に着目して海外債券ファンドが続々と新規に設定されている。新規設定ファンドは運用期間が5年間程度の単位型ファンドが多い。再び巡ってきた「利回り」で投資ができる環境は、新たな投資家の発掘にもつながりそうだ。 これから新規設定が予定されているのは、5月26日の設定で「日本企業社債ファンド2023−05(愛称:和ごころ2023−05)」。このファンドは、日系企業が発行する日本円、米ドル、および、ユーロ建ての社債に投資するファンドで、2028年6月20日が償還日で、原則として信託期間終了日まで満期償還される銘柄や繰り上げ償還が見込まれる銘柄を選んで投資する。また、6月16日には「GS グローバル社債ターゲット2023−06(限定追加型)(愛称:ワンロード2023−06)」、6月23日には「明治安田 NBグローバル好利回り社債2023−06(限追)」が設定される。いずれも、世界の企業の米ドルおよびユーロ建て社債に主として投資するファンドで、信託期間終了時までに満期償還もしくは繰り上げ償還が見込まれる債券に投資して「持ちきり運用」をするファンドで、信託期間はGSのファンドが2028年6月28日で約5年間、明治安田のファンドは2027年12月16日で約4年半と少し短い。 このような運用期間を区切って、「持ち切り運用」で債券に投資するファンドは、今まさにこの時の金利を切り取って、その利回り収入を得ることを狙った商品だ。欧米の金利水準が上がってきたからこそ、積極的にファンドの設定がなされていると考えられる。単位型、または、限定追加型で、「今しか買えない」というタイミングを見計らって設定されている。ちなみに、2023年2月に設定された「和ごころ2023−02」の3月末時点で為替ヘッジコスト負担後の実質的な最終利回りは1.32%程度。2022年11月設定の「和ごころ2022−11」の実質的な最終利回りは1.2%程度になっている。5月設定の「和ごころ2023−05」は何%程度の実質的な利回りになるのか楽しみだ。日本国債の利回りは10年債で年0.4%程度の水準であり、円建てで5年で1%を超える利回りは魅力的といえるだろう。 米国の政策金利は、前回の2006年6月当時は、その後、2007年3月に「サブプライム・ローン問題」が表面化し、2008年9月の「リーマン・ショック」へとつながっていったため、5.25%が政策金利のピークになった。2007年9月から利下げに転換している。2006年6月当時の米10年債利回りは5.2%台。現在は3.5%程度と大幅な逆ザヤ(長短金利の逆転現象)になっているため、債券の運用環境は大きく異なっている。また、「サブプライム・ローン問題」が「リーマン・ショック」につながった2006年〜2008年の動きが繰り返されることのないよう、「シリコンバレーバンクやシグネチャーバンクなどの地銀の経営破たん」が世界的な金融システム不安につながらないような対策は米財務省やFRBが緊張感を持って実施しているところだ。今後の政策金利の水準もFRBが市場にわかりやすいメッセージを発しながら調整していくことになるだろう。「リーマン・ショック」の再来のような酷い景気後退が起こらないことを前提にすれば、高利回りの債券に投資する良い機会になっているのではないだろうか。 新規設定ファンドでは、単位型のファンドの設定が目立っているが、オープン型の公募投信の債券型ファンドのパフォーマンスも上向いてきている。超低金利の定着によって株式ファンドのみに市場の関心が向かっていたが、米国を中心に欧州やオセアニアなど、日本を除く広い地域において金利の水準が上がり、債券の利回りの魅力が増している。資産運用の対象として「債券」も検討したい。 そして、このように債券ファンドが投資対象としての魅力を強めることが、預貯金だけで資産形成してきた層に、「投資への第一歩」を踏み出すきっかけにもなる。債券の「利回り」は、預貯金の「利回り」と同じように考えられるため、比較検討がしやすいからだ。国内の預金金利が1年間で0.002%という中にあって、為替ヘッジをした外債ファンドで5年で1.2%程度の利回りが期待できるというのは十分に魅力的だ。為替ヘッジをしない場合は、年3%程度の利回りが期待できる。そこから、為替のリスクなど、リスクによって期待リターンも変わることが理解できれば、債券から株式への投資対象の拡大も可能だろう。債券の利回り「復活」は、新しい投資家を発掘する好機にもなりそうだ。(イメージ写真提供:123RF)
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