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2023/05/12 18:27
2023年4月末時点で日本株ファンドのパフォーマンス(1年トータルリターン)上位を調べると、「りそな 日本中小型株ファンド(愛称:ニホンノミライ)」、「低位株オープン」、「明治安田 セレクト日本株式ファンド(愛称:初くん)」など、中小型株ファンドが目立っている。中小型株での運用は、運用会社の企業調査力が発揮される市場といえ、デフレ(物価下落)で縮小する経済に苦しんできた日本企業が、インフレ(物価上昇)傾向によって企業戦略次第で成長格差も生まれるというような環境になりつつあるのかもしれない。企業調査力の優劣が問われ、アクティブファンドのパフォーマンスに期待が高まっている。 4月末現在で過去1年間のトータルリターンを主要な株価指数で比較すると、国内株式を代表する「日経平均株価」が7.48%であり、米国株式「S&P500」の4.67%、全世界株式「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」の6.01%を凌駕している。過去3年(年率)で比較すると、{S&P500」の22.81%、「MSCI ACWI」の20.85%に対して「日経平均株価」は12.64%と見劣りする。2020年3月を底とする「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の進展に着目した大規模なハイテク株主導の相場で、米国のテック・ジャイアントの株価が大きく上昇したことに比べると、国内企業の株高は限定的だった。それだけに国内株式は、「出遅れ」、「これからの株価上昇期待」が持てる存在といえるだろう。 その出遅れた日本株の中で、いち早く上昇しているのが中小型株ファンドだ。「りそな 日本中小型株ファンド(愛称:ニホンノミライ)」は、4月末時点の1年トータルリターンが33.79%、3年(年率)では23.90%になっている。1年間のリターンが非常に大きく、かつ、3年(年率)リターンでも米「S&P500」を上回っている。また、「低位株オープン」は、同様に1年が30.90%、3年(年率)が19.70%という成績。そして、「明治安田 セレクト日本株式ファンド(愛称:初くん)」は1年が27.11%、3年(年率)が27.71%となっている。為替変動の影響もリスクになる海外の株式ファンドに投資しなくても、十分に高いリターンを獲得できているファンドが国内株を対象に運用しているファンドで存在する。 このような日本の中小型株の魅力は、個別調査で見出された独自の成長力があるということが大きいだろう。たとえば、「りそな 日本中小型株ファンド(愛称:ニホンノミライ)」は2022年11月〜2023年1月の運用状況についてのレポートで、「着実なリターンを獲得するため注目しているのは、様々なリスク要因から隔絶した『離れ小島的銘柄』」としている。同ファンドは国内の「社会的な課題」の解決に役立つような技術やサービスを持った企業に着目しているが、「少子・高齢化」という課題に挑むデジタル治療プラットフォーム、「地球環境問題」に挑むバイオ燃料製造プラントなどに注目して銘柄を選んでいる。また、「明治安田 セレクト日本株式ファンド(愛称:初くん)」では、4月末基準で発行した月次レポートで「中間マージンを変えていく企業に投資」という考え方を示している。商品が生産者から消費者へと提供される中で商品の所有権が移転していく流れである「商流」には、卸売業者などが介在し多層的な下請け構造があり、その仲介手数料が商品の最終価格に上乗せされるという流通の仕組みが維持されてきた。しかし、インターネットの発展やインフレなどによって、従来の商慣習にとらわれない商品やサービスの流通の仕組みが出来上がりつつある現状に注目したいとしている。 このような、各ファンドが持つ独自の視点で企業を選定し、社会の変化を捉えて成長機会にしている企業群は、日本経済全体が多少成長鈍化していても、「離れ小島的」に独自の成長をすることが可能な銘柄を発掘することにつながっている。それが、過去3年(年率)で20%を超えるような高いパフォーマンスにつながっている。 日本は、新型コロナを「5類感染症」に移行し、インフルエンザと同じような扱いにした。2020年以来、約3年にわたって「感染症対策」を第一に、「接触しない」「密集しない」ことなどを徹底してきた日本経済が、本格的な復調期を迎える。既に、訪日旅行への規制を大幅に緩和したことによって、「コロナ前」に見られたようなインバウンド消費の拡大が始まっている。長らく続いた制限が解除されると、その解放感による消費の拡大が期待できるだろう。中小型株が事業の軸足を置いている国内の消費にプラス方向の変化が期待されることは、中小型株ファンドのパフォーマンスを押し上げる力にもなるだろう。 もちろん、中小型株ファンドであれば、何でも良いということではない。調査・運用力によるパフォーマンスの違いが表れやすいのも、中小型株ファンドの特徴といえるだろう。過去3年という、日本株運用にとって決して楽ではなかった市場にあって、日経平均やTOPIXという株価指数を大きく上回る運用成績を残してきたようなファンドに注目したい。(グラフは、「日経平均」や「TOPIX」を上回る中小型株ファンドのパフォーマンス)
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