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2023/06/05 18:42
国内株式の代表的な株価指数である日経平均株価(日経225)が6月5日、約33年ぶりに3万2000円台に乗せた。米国の債務上限問題が解決し、米国の債務不履行という大惨事が回避された安心感に加え、日銀の植田新総裁が大規模な金融緩和を継続する姿勢を強調していること、さらに、インバウンドの急回復など国内景気の底入れ感も手伝っての株高といえる。特に、4月以降に外国人投資家が買い越し姿勢を強め、5月19日まで8週連続の買い越しで、買い越し額が3.6兆円に達するなど、日本株を高く評価していることが株価を押し上げていると見られている。そして、投信の5月の新規設定状況を振り返ってみると、大手証券会社の間では6月以降の株高を見越した投信設定を行っていることがわかる。常に、このような読みが当たるとは限らないが、市場の変化を読むに長けた大手証券の投信の新規取り扱いには、注意が必要だ。 5月に新規設定されたファンドで設定金額が目立って大きかったのは、5月15日に新規設定の「スパークス・企業価値創造日本株ファンド」の設定額317億71百万円と、同日に設定された「アクセラレーション・ジャパン2023−05(限定追加型・早期償還条項付)」の311億93百万円になる。両ファンドとも日本株を上限100%組み入れるアクティブファンドであり、「スパークス・企業価値創造日本株ファンド」は野村證券の単独募集、「アクセラレーション・ジャパン2023−05(限定追加型・早期償還条項付)」はSMBC日興証券の単独募集ファンドだ。しかも、「アクセラレーション・ジャパン2023−05(限定追加型・早期償還条項付)」は、追加買付の申込み受付けを2023年5月17日に終了する限定追加型であり、5月に買い付けるというタイミングもファンドの特徴の1つになっている。 「スパークス・企業価値創造日本株ファンド」は、投資タイミングをはかって設定したファンドというわけではないだろう。募集した野村證券は、同じスパークス・アセット・マネジメントが運用する「スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」も長く取り扱っており、このファンドは2008年3月の設定から15年余りで基準価額が4倍以上に大きく成長したファンドだ。新たに取り扱い開始したファンドも、スパークスのボトムアップによる銘柄選定力によって「企業経営者が誠実であり、高い競争優位性を有し、成長への意欲が強い企業に厳選投資する」というコンセプトに加え、企業との建設的な対話(エンゲージメント)によって企業価値の向上に積極的に働きかけるという運用の特徴があることから、中長期で企業の成長を追求していくファンドであることがわかる。ただ、同じようなスパークスの日本株ファンドがある中で、追加の日本株ファンドを設定するタイミングとしては「2023年5月」が良いという判断はあっただろう。 一方、「アクセラレーション・ジャパン2023−05(限定追加型・早期償還条項付)」は、ピンポイントで「2023年5月」を狙って設定している。同ファンドは、国内のコンテンツIP(知的財産)関連企業に集中して投資するファンドで、基準価額が設定時から25%上昇(1万2500円に到達)した段階で繰り上げ償還に向けて安定運用に切り替えることをめざしている。できるだけ早く目標の1万2500円に到達することが意図され、設定のタイミングは重要になる。 2023年に入ってから国内の公募追加型ファンドの設定額は総額で、1月の17本287億円、2月の16本552億円、3月が50本674億円、4月が22本307億円に対し、5月は9本で672億円となり、先に取り上げた「スパークス・企業価値創造日本株ファンド」と「アクセラレーション・ジャパン2023−05(限定追加型・早期償還条項付)」の300億円を越える設定額は、今年で出色の大型設定だった。販売会社の力の入れようだけでなく、それに応える投資家も「日本株ファンドへの強気見通し」に共鳴するところが大だったのだろう。 もちろん、3万2000円台に乗せた日経平均株価が、今後も高値を更新していくかどうかはわからない。現在の株高の背景である「米国をはじめとした世界経済の緩やかな景気後退」、「世界的なインフレのピークアウト」などの条件が、予想もしない出来事によってひっくり返るリスクはある。現実問題としてロシアとウクライナの戦争は継続中であり、この戦争を巡る一段の混乱が起こる可能性、また、台湾問題を巡って米中間が瞬時に緊張の度合いを増すというようなことは十分にあり得るが事前に予測し難い事態だ。また、日経平均株価は6月5日の終値で年初来上昇率が23.46%になっている。特に、4月末比で6月5日まで11.65%高と、この1カ月余りで上昇に勢いがついている。このまま調整なく上昇を続けるということは難しいかもしれないが、勢いのある国内株式の今後に注目していきたい。(イメージ写真提供:123RF)
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