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2023/06/23 17:57
投資信託協会は6月21日、新NISA成長投資枠の対象商品リストを公表した。リストに掲載されたのは、一般の公募投信が941本、そして、上場しているETFやREIT等が91本で、合計1032本だった。国内投信が約6000本ある中で、新NISAの成長投資枠で投資可能な商品が6分の1の約1000本というのは、少ない印象を受けるが、このリストは、あくまで6月21日の公表分として運用会社から提出されたリストを集計したもので、投資信託協会では2024年1月に向けて、毎月月初を基本に今後7回のリスト更新を予定している。この予定に従って、運用会社では粛々と対象となる投信を追加して公開していくことになる。 第1回のリストをみると、一般の(非上場の)投資信託のリストで、133本をリストアップした三菱UFJ国際投信、103本の三井住友トラスト・アセットマネジメントの多さが目立ち、逆に、野村アセットマネジメントが36本、日興アセットマネジメントが15本、そして、三井住友DSアセットマネジメントが6本など、非常に少ない運用会社も目立った。ただ、第1回の公表リストでリスティングされた投信が少なかった運用会社も、今後のスケジュールに沿って順次、対象投信を増やしていく方向だ。たとえば、野村アセットに聞くと「弊社では、投資家の長期資産形成に資する新NISA対象ファンドを順次登録していく予定です」(プロダクト・マネジメント部長の佐伯進氏)という回答が得られた。各社粛々と準備を進めているようだ。 なお、対象商品リストの公表スケジュールは、第2回が7月10日で、以降、8月1日、9月1日、10月2日、11月1日、12月1日、最後が12月19日となっている。運用会社は、この公表スケジュールに沿って、対象商品リストを順次拡大していく見通しだ。 一方、対象商品リストに掲載された商品の属性をみると、圧倒的に株式に投資する投信が多く、中でも、株価指数に連動した投資成果をめざすインデックスファンドが目立っている。株式インデックスファンドは、新NISAの「つみたて投資枠」の対象である「つみたてNISA対象ファンド」の主力でもある。第1回のリストの中で「つみたて投資枠の対象」ともなるファンドは162本。一般の投信リストの17%強を占めた。また、「つみたてNISAの対象商品(ETF除く)」224本の72%強にあたる投信が「成長投資枠」の対象商品として既に登録されたことになる。新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」でそれぞれに非課税限度額が設けられ、2つの投資枠を併用することも可能になっている。したがって、「つみたて投資枠」で活用できる投信を「成長投資枠」でも登録しておくことによって、1本の投信でも1人当たりの非課税投資枠の上限である1800万円分を全て取り込むことができる商品になる。 リストの多くが株式に投資する投信で占められたのは、新NISAの対象商品になる条件の中で、先物・オプション取引等を「ヘッジ目的以外に使わない」という項目が入っているためだと考えられる。株式に投資する投信でも、株価指数の2倍、3倍に相当する動きを示すようなレバレッジ型の投信は排除されているが、債券のアクティブ運用を行うファンドでは、運用成績の安定化を狙った運用の一環として、先物取引などを収益狙いで売り建てたり買い建てたりするケースが少なくないという。収益の安定化をめざす目的で行うため、極端に高いリスクを取るような取引ではないにもかかわらず、「ヘッジ以外の目的に先物・オプションを活用している」という理由で、対象商品にはなれないことになる。債券で運用する投信が対象商品に少ない要因の1つになっているようだ。現在、運用会社では、債券運用において先物・オプションの活用についてヘッジ目的以外では使わないという条件に適うような運用に、運用方法の変更などの手続きに入っている投信もあるという。 また、決算回数別でみると、「年1回決算型」が666本と、全体の70.78%を占めている。対象商品から「毎月決算型」が除外されたとはいえ、第1回のリストでは「隔月決算型」が22本(全体の2.34%)など多頻度の決算型が極端に少なくなっている。「3カ月(四半期)決算型」も57本(6.06%)しかない。「年2回決算型」が196本(20.82%)だったものの、「年1回決算型」への過度な集中が気になる結果になった。 「つみたて投資枠」が資産形成層向きの口座として意識されるところ、「成長投資枠」は資産活用層も含めた幅広い投資ニーズに対応した口座と位置付けられる。極端にいえば、日計り商い(1日のうちに、購入・解約を行って利益を確定する短期の売買手法)を自己判断で行って利益を重ねていこうと考える投資家でも使える口座だ。あるいは、資産活用層が自身の貯えを取り崩しながら公的年金を補完して生活していくために活用することもあるだろう。その際に、「毎月決算型」で毎月の分配金を年金補完に当てるということが一般的に行われてきたが、その「毎月決算型」が対象外になったのであれば、せめて隔月決算型で、その機能を補おうと考えるのではないだろうか。 もっとも、第1回のリストで「隔月決算型」が非常に少なかったのは、既存の「毎月決算型」に「隔月決算」のコースを新設するための改定作業が十分に進んでいなかったということもあるだろう。今後、発表されていくリストで、決算頻度がどのように変化していくのかも注目したい。 このように、第1回の対象商品リストをみていくと、まだかなり商品構成がいびつな状態にあることがわかる。新NISAについて、より多くの国民が利用したいと思えるような制度にしていくには、国民が抱える多種多様な運用ニーズに応えられる多様で質の高い商品が必要になる。今後の追加リストに注目していきたい。(イメージ写真提供:123RF)
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