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2023/07/03 17:06
国民年金基金連合会が7月3日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると5月の新規加入者数は3万3709人で加入者総数は296万1337人になった。新規加入者数は、2023年2月から4カ月連続で前年同月比割れになっている。また、月間の新規加入者数が3.3万人台になるのは、2020年11月以来、30カ月ぶりの低水準。2022年5月以来、9カ月連続で前年同月を上回る加入者を獲得し、22年11月には前年同月比36.8%増と大幅な新規加入者の拡大があった。しかし、23年5月は前年同月比77.3%(22.7%減)と大幅に加入者数が減退した。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は6219事業所、対象従業員数は3万9626人となった。 5月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4194人(前月4338人)、第2号加入者は2万7773人(前月3万3012人)、第3号加入者は1417人(前月1391人)となった。第2号加入者の新規加入が3万人の大台を割れるのは、2020年11月以来のこと。第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万6451人(前月1万9389人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は4418人(前月5337人)となった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が6904人(前月8286人)だった。第3号保険者が前月の落ち込みからやや回復しているものの、その他の新規加入者は軒並み前月を下回る加入者数になった。 iDeCoは2017年1月に加入対象者が第3号被保険者や公務員を含む国民全体(基礎年金加入者)に拡大してから6年半が経過した。その間、ピークの新規加入者は2017年4月の月間約6万人で、その後、月間3万〜4万人程度の新規加入が続いてきた。それが、2021年1月以降、月間新規加入者が4万人〜5万人という水準に膨れ上がった。これは、2019年6月に国会等で話題になった「老後2000万円不足問題」、そして、2022年11月に決定した岸田内閣の「資産所得倍増プラン」などが追い風になったと考えられる。 資産所得倍増プランでは、まず、NISA(少額投資非課税制度)の制度拡充が決定され、それに並ぶ柱としてiDeCoを含む私的年金制度の制度改正の議論が進んでいる。私的年金は「企業年金」と「個人年金」に大別されるが、「企業年金」が退職金などの従業員の労働条件の一部として発展してきたことに対し、「個人年金」は貯蓄としての性格が強い制度として存続してきた。高齢社会の進展にともなって老後生活を支える「年金」としての機能が注目されるようになっているが、現在の制度改正論議では、「企業年金」と「個人年金」の生い立ちの違いを踏まえた上で、従来の制度と整合性のある(本来は得られていたはずのベネフィットが改正で失われることがないよう)丁寧な議論が進んでいる。 特に、貯蓄の性格が強い「個人年金」は、「資産所得倍増プラン」に則って、「NISA」の非課税限度額が従来の年間800万円(つみたてNISA)から1800万円に大幅に引き上げられたような画期的な変革を期待したい。現在、iDeCoの新規加入者数の伸びが抑制的なのは、今後の制度改定の動きを見極めたいという様子見の状態なのではないだろうか。議論の結果が得られるのは、おそらく年内いっぱいはかかると考えられ、しばらくは、iDeCoの新規加入者数にも大きな進展のない展開が続きそうだ。(グラフは、iDeCo新規加入者数の推移)
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