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2023/07/05 18:54
HSBCアセットマネジメントは7月5日、2023年下半期のグローバル投資環境についての自社の見通しを解説する「ミッドイヤー・セミナー」をオンラインで開催した。同社代表取締役社長の金子正幸氏は「今回のテーマは『シンクロしない世界経済』で、先進国と新興国の違いが鮮明になり、国や地域の相関関係が従来の関係とは同じではない難しい環境になっている」とした。そして、年央見通しの報告に立ったグローバル・チーフ・ストラテジストのジョー・リトル氏は、「市場は楽観的過ぎる。経済データを分析する限り、米国や欧州はリセッション(景気後退)に陥る可能性が極めて高く、米国では今第4四半期にリセッションに入り、年内にも米FRBは利下げに転じる可能性がある」という見通しを示した。そして、「米国や欧州など日本を除く先進国株式には慎重な態度で臨むべきだ」と警鐘を鳴らした。 リトル氏は、2023年になって米国グロース株の好調が続き、債券市場や新興国株式なども総じて堅調に推移していることについて、「コモディティ価格の下落やサプライチェーンの回復などによってインフレが比較的落ち着いていること」の影響が大きいと語った。米国株高の多くは「生成AI」への期待に偏っていたとし、「米S&P500の上昇は90%を生成AIへの期待で説明できる」という。そして、米国経済が強い状態を保っている理由として「企業利益が好調」、そして、「(コロナ禍で貯えられた)余剰な貯蓄が家計支出を押し上げている」というと要因を分析しているが、「すでに、企業利益は製造業において弱くなり始め、家計の余剰な貯蓄もはげ落ちてきている」とし、今後は、米国の景気指標が悪化していく方向にあるとの見通しを示した、 そして、「今年の年末から来年のはじめにかけて、米国や欧州では景気後退に陥る可能性が高い。それは、1980年代以来の急速な利上げを実施したことによっておこる当然の結果だ」と分析している。ただ、依然として米欧において株式市場等は堅調な動きを続けており、「経済指標とマーケットとの間のかい離が大きくなっている」と警戒を呼び掛けた。HSBCでは、米国や欧州、英国の株式はアンダーウエイトにし、慎重な態度で臨んでいるという。 一方、先進国と比較して新興国には、「これからの市場リーダーになっていく可能性がある」と強気の見通しを示した。新興国経済は、成長のステージにあること、また、今後の米国リセッションによって米ドルが弱くなる見通しにあり、これが新興国への資金流入を促す結果になること、さらに、先進国株式と比較して新興国株式が割安にあることなどが強気の背景。新興国の中で、中国の成長が期待外れという見方があることに対し、「中国の今年の経済成長率の目標は5%だが、この水準は十分にクリアするだろう。懸念されてきた不動産セクターも底入れの兆しがあり、家計の余剰貯蓄も過剰な状態だ。この中国の状況は、これからリセッション入りが懸念される米国や欧州と比較してどうみえるだろうか?」と中国悲観論にくぎを刺した。そして、インドについては「ゴルディロックス(適温)の状態といえる」として、中長期的に楽しみな市場であると語った。その上で、「FRBによる金融緩和と流動性サイクルの転換により、1990年代初頭には新興国市場に多額の資金が流入した。同様のトレンドが再び起きる可能性がある」と語っていた。 日本については、先進国の中で唯一といってよい株式にオーバーウエイトとした。これは、米欧がリセッションに落ち込む見通しにあることに対し、日本は今年も来年も経済成長を継続する見通しにあること。インフレも落ち着いており、市場としての安心感が高いことを評価した。そして、米ドルが下落する見通しにある中で相対的に円高が期待される日本には外国人投資家の資金流入の期待が持てるとした。(イメージ写真提供:123RF)
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