前のページに戻る
2023/07/14 17:12
みずほ銀行は2023年4月、アセットマネジメントビジネスを通じた「資産所得倍増」に向けた戦略的な新組織として「資産形成推進室」を新設した。資産運用ビジネスを担うアセットマネジメントカンパニーの中に設け、特に、みずほの強みである年金の総合コンサルティングサービスを担う部門に近接し、個人向けにiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)等の資産形成を支援する組織との間をつなぐ役割を期待されているようだ。新部署「資産形成推進室」の室長に就いた伊牟田浩司氏(写真:右)に、同部署が担う役割と当面の取り組みについて聞いた。 ――「資産形成推進室」は、国策として岸田内閣が推し進める「資産所得倍増プラン」に呼応したような部署のようですが、具体的には何を行う部署なのでしょうか? みずほの強みは、幅広い企業とのお取引にあると思います。みずほ銀行でお取引のある企業型確定拠出年金(DC)の運営管理業務受託先数は607制度、143万人の従業員の方々が加入者(含む運用指図者)です。また、みずほ信託でお取引のある確定給付企業年金(DB)の年金信託受託先数は1413制度、総幹事受託先478制度に加入されている従業員数は92万人になります。加えて、従業員向け株式給付信託(ESOP)や役員向け株式給付信託(BBT)では443社、6万人にサービスを提供しており、これは国内の信託銀行でナンバーワンの実績です。 このように幅広い企業取引を通じて多くの従業員の方々に資産形成サービスを提供している実績がありますが、従業員の方々にとっては会社の年金制度、ESOPを利用されているのであり、そのサービスの実務をみずほが担っているということは、ほとんど意識されていません。ただ、企業年金の資産やESOPで得た株式などの資産は、退職後や老後の資産として継続的に運用・管理されることが重要になっています。会社を退職する60〜65歳は、人生100年の道半ばです。企業年金等は一時金や年金を現金として、各個人に指定銀行口座にお振込みをするケースが多いですし、自社株を信託と通じて配分するESOPにおいても各個人が指定した証券口座に配分するケースが多いです。この際に、お客様ごとに最適な資産形成商品やサービスを継続的にご提供することができるのではないかと思います。このような従業員の方々の在職時から退職後をつなぐ役割の1つになれればと思っています。 また、近年、企業の間でも「人的資本経営」という考え方が浸透し、企業年金を単なる退職給付としてではなく、従業員に対する投資教育、ライフプランやキャリアプランの設計なども含む総合的な福利厚生プランとして捉え直す動きも強くなっています。また、企業年金制度改革の進展によって、企業型DCとiDeCoの併用や、DBとiDeCoの併用など、従来のサービス提供の枠組みを横断するような新たな資産形成ニーズもでてきています。アセットマネジメントカンパニーと個人部門をつなぐ役割を担うことによって、企業の従業員の方々一人ひとりのニーズに、今まで以上に寄り添えるサービスが提供できるようになると思っています。 推進室のメンバーは、DB・企業型DC・ESOP・iDeCo・投資信託の推進などの業務経験を積んでおり、アセットマネジメント業務全般に精通した人材が配置されていますので、アセットマネジメントカンパニーと個人取引の間をつなぐ今回の役割に組織として強みを発揮できると考えています。従来のサービスの枠にとらわれることなく、お客様にとってどのような枠組みを提供することが最も良い結果が得られるのか、お一人お一人の事情に合わせた対応が必要になると思っています。 ――当面は、どのようなことに取り組みますか? まずは、DB・企業型DCを導入されている企業への資産形成セミナー充実に取り組みたいと考えています。これまでも一部企業への資産形成セミナーは実施されていますが、より「資産形成の支援」という側面に着目し、iDeCoやNISAなどを含めた幅広い観点から情報提供やセミナーの開催などを提案していきたいと思っています。 ただ、この推進室ができてから、様々な部署から「こんなことができないか?」、「こんな提案を考えているのだが知恵を貸してくれないか」などという多くの声をかけていただいています。これほど多くの声をいただいていることが、まだまだ資産形成の分野でお客様のニーズに応えきれていない部分があったということだと思います。お客様のニーズに応えるために私たちに何ができるのか、一つ一つに丁寧に対応していきたいと考えています。 ――将来的に、みずほ銀行のアセットマネジメントカンパニーとして、資産形成サービスに、どのように貢献していきたいと考えていますか? 企業年金で培ってきた幅広い企業とのネットワークは、みずほの大きな強みになると思っています。年金分野というと、信託銀行や生命保険が強いというイメージがあるかもしれませんが、みずほ銀行は早くから信託銀行と一体となった取り組みを行い、国内金融グループとして屈指の実績をあげてきました。米国で資産運用が一般に根付いたきっかけとして401k(企業型確定拠出年金)を通じた投資教育の存在が大きかったといわれています。日本においても、企業年金を通じた資産形成推進が、米国同様に大きな力になる可能性があると思います。企業年金分野で実績を残してきたみずほ銀行だからこそできることにチャレンジしていきたいと思います。(写真は、みずほ銀行資産形成推進室の鈴木耕太氏(左)と伊牟田浩司氏(右))
ファンドニュース一覧はこちら>>