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2023/07/18 18:06
アムンディ・ジャパンは7月14日、今年下半期の市場見通しと同社の議決権行使状況等を説明するメディア向けの説明会を開催した。同社株式運用部長の石原宏美氏は、「リスク資産については慎重な見方をしているものの、日本株式については構造的な変化を評価して外国人投資家の関心も高く、緩和的な金融政策も続いているため、当面は強気のスタンスを継続している」と語った。また、同社において「PBR(株価純資産総額)1倍以下でキャッシュリッチな企業に特化して調査・運用をするチーム」であるジャパン・ターゲット戦略のヘッドである春川直史氏は「東証がPBR1倍以上を目指すように提言して以降は、どの企業もPBR1倍以上を目指して何が必要かを真剣に議論するようになっている」と企業変化の大きさを実感していると語っていた。 石原氏は、アムンディグループの市場展望として、引き続きリスク資産に慎重な態度で臨んでいる背景として「米国のインフレが低下してきているとはいえ、粘着性が高く、目標とするインフレ率に到達するには時間がかかる見通しにあるため。米国は年内に1回の利上げを実施し、利下げに転じるのは2024年に入ってからだろう」として、米国の経済状況を年内に景気後退するという見通しだったものを「年内はマイルドな景気後退」に修正したとした。ただ、現在の米国株価は「S&P500のPERが20倍台であり、景気後退を織り込んだとは言えない水準にある」との見方を示し、先行きに注意が必要だと語った。 そのような中にあって、日本株については「バリュエーションの面でも魅力があり、日銀の金融緩和姿勢が継続していることもあって、日本株を選好している。従来は、中国リスクなどを考えて消去法的に日本株を選ぶという動きもあったと思うが、このところ、日本株の構造的な変化を評価して日本株に注目する海外投資家が増えている」とし、海外投資家は依然として日本株をアンダーウエイトしている先が多いため依然として投資余力があるとみている。日本の構造的な変化については、「デフレ脱却」と「ガバナンス改革の進展」をあげた。 「デフレ脱却」については、賃上げが30年ぶりの高い水準で実施されるなど、構造的にインフレを支える動きになっていることを評価。「今回の賃金支払いの伸びは、労働者数が減少し、人材確保が難しくなる中で、1人当たり賃金が伸びている。このような賃上げの動きは、持続的な賃上げにつながりやすい。これまで、賃金が上がりづらいという環境が長らく続いてきたが、賃上げの環境が定着するようであれば、日本の市場にとって大きな変化になる」と捉えている。また、「ガバナンス改革」については、機関投資家のアクティブ・オーナーシップが浸透し始め、「売り上げの拡大を重視する経営から、利益率や収益性を重視する経営に変わってきている。この経営感覚が根付いていることが広く知られるようになると、日本株への確信度が高まると考えている」とした。 また、スチュワードシップ活動について積極的に企業とのコンタクトを取っているESGリサーチ部長の羽川貴弘氏は、日本企業のガバナンス改革が進展していることを評価しつつも、「海外の企業と比較すると認識のギャップがあると感じることが少なくない」と語った。たとえば、ダイバーシティの観点から取締役会の構成メンバーに女性を入れる企業が増えているが、「日本は女性1人を入れると十分という感覚があるが、海外では3分の1以上を女性にするという考え方が一般的だ」と指摘する。また、役員報酬の開示についても、海外では個別開示が進んでいるが、日本では個別開示は進んでいない点など、問題意識を持っていると語っていた。 そして、ジャパンターゲット戦略ヘッドの春川直史氏は、「PBR1倍割れでキャッシュリッチな企業をユニバースとして銘柄選択を行う」というコンセプトのファンド運用してきた経験から、昨今の日本企業の変化を語った。同社では、その戦略で約23年間運用を行い、現在では約1000億円の資産を運用しているという。春川氏自身は約18年間、同戦略に携わってきたという。その経験から、「10年前は機関投資家の株主提案を10社に1社程度が聞く耳をもっていてくれたが、今では6〜7社が受け入れてくれるようになっている。また、今年2月の東証によるPBR1倍割れ企業に対する問題意識がでてからは、1倍割れ企業ではどの企業もPBR1倍に復帰するための方策やアイデアに非常に強い関心をもつようになった」と変化を実感していると語った。そして、このような企業の経営姿勢の変化が企業の資本効率を高める方向につながり、それらの情報が広がっていることで海外投資家の日本株に対する評価が上がっていると語った。(グラフは、「アムンディ・ジャパン・ターゲット・ファンド」の過去1年間のパフォーマンス推移)
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